第16話ファンガイア王ガリウス

僕達は、とうとうファンガイアへとたどり着いたんだ。そしてその依頼者とはなんと!ダンさんの父親だったんだ…。

大きな御屋敷のインターフォンを見つけ鳴らすダンさんを僕達はじっと見ている。するとダンさんはこちらの視線に気づき声をかけてくる。

「君達そんなに怪しまなくても大丈夫さ…。あ…ああ!すまんすまん!私が挙動不審にみえてしまってる…か…。」

明らかにおかしい態度のダンさんに僕達は言葉にならずただじっと見てしまっていた。

「もう大丈夫!覚悟を決めたのでね…。さあ中へ行こう。」

そう言うとダンさんは震える手を抑え屋敷の中へ入っていく。僕達はその後ろを追いかけた。さすがにこれくらい大きな御屋敷だ。家の主の元へはすぐには辿り着かない。なぜか家の中の誰もが顔を出さずただダンさんの事は確認できたのだろう。僕達はダンさんの案内で主の部屋まで向かっているのだろう。すると僕達の目の前の扉が開き中から誰かが飛び出してくる。

「もう待ってはいられないわ!私が行ってくる!!」

そう言って出てきたのはサラマンダーの女性!出で立ちは鎧を着て長槍を持ったサラマンダーだ。

「サイリス…」

サラマンダーはダンさんの知り合いみたいだ。

「お、お兄ちゃん!?」

お兄ちゃんと言う事は…僕は驚きダンさんを見ると彼はサイリスさんに近づいていく。

「サイリス…親父は…?」

ダンさんはそう言うとサイリスさんを促し僕達に手招きする。僕達全員で部屋にへと入る。中は綺麗に並べられた本棚が沢山並んでいてこの部屋の主は博識だと連想させてくれる。そして中央には立派な椅子がありまるで王の様な凛としたそれでいて風貌は大きい男という存在感の男が座っている。目の前のダンさんは跪きその男、つまり父親に謁見する。

「父上!そして…ファンガイアの長よ…。」

「お久しゅうございます…。」

ダンさんは深々と頭を下げファンガイアの長に挨拶をする。そして、後に続きサイリスさん、

レイオール、僕とらいとも習って挨拶をする。

するとファンガイア長はゆっくり口を開く。

「皆の者…頭をあげなさい。」

僕達が顔を上げると目の前で話す彼は王と言ってもおかしくないくらいの威圧感と温かさを感じる初老の男性だった。その姿も若々しくそして温厚そうなにこやかな表情に安心感を覚えそうな人に見えたんだ。

「お初にお目にかかる者もいるので自己紹介をするとしよう。」

ファンガイア長は微笑んだ後キリッと表情を変え言葉にする。

「我が名は元ファンガイア国王ガリウスと申す者!」

そしてニコリと表情を変えると続ける。

「そして今は国王は退いたがこのファンガイアの街の長をしておる。よろしくな。」

その立ち振る舞いはさすが国王だっただけの事はあると思わざるを得ない貫禄があった。

「父上、兄の連れてきてくれたこの方達の紹介もお願いしましょう!」

「えっ!?」

サイリスさんだと思っていたサラマンダーは、人間…それも綺麗なお姉さんという姿に変わっていたんだ。僕はそれに驚いてしまいつい声をあげてしまった。僕がポカンとしているとサイリスさんは素敵な笑顔で僕に声をかけてきたんだ。

「驚かせてごめんね!私達はサラマンダーという種族の精霊人せいれいびとよ!勿論、この街の長の父もそして…君達の知ってる…兄であるダン…もね。」

僕達はその以外な告白に驚いてしまったんだ。

僕がダンさんを見るとダンさんは気まずそうにしている。

「いずれは分かる事だったのかも知れないが…私もサラマンダーなのだ。黙っていてすまない。」

ダンさんはそう言いながらポリポリ頭をかいている。

「俺はオッサンはオッサンだから何も問題ないぜ!」

らいとは先に言うと思ったんだ。僕もハッキリと口にする。

「僕もダンさんはダンさんだし何も気にしなくて大丈夫です!」

僕達の答えにダンさんは笑顔で答える。

「ありがとう二人とも!」

ダンさんがサラマンダーでも僕達との関係は変わらないさ。そして僕はガリウスさんとサイリスさんに自己紹介をする。

「僕は、みらいと言います!ダンさんとレイオールにお世話になってる異世界人です!よろしくお願いします!」

僕が自己紹介をするとガリウスさんとサイリスさんは驚いている。

「異世界…。」

「異世界人とは…これは。」

「そして、俺もみらいと一緒に異世界からきたらいとだ!よろしく!」

らいとの自己紹介に僕は焦る。

「ちょっと!らいと、相手は王様だよ」

らいとは相変わらずみたいだ。

「ハッハッハ!良い良い!ワシもそれくらいの方が話しやすいしの。」

「この二人は私も一目置いているのだ。だから大丈夫だ。」

ダンさんも僕達を押してくれる。するとレイオールも続けて挨拶をする。

「オイラは、大魔導士マリオン様の一番弟子レイオールだ!よろしく!」

「おお!お主がそうか…あのマリオン様のな…。」

僕達の自己紹介が終わるとガリウスさんとサイリスさんは顔を合わせ頷く。するとガリウスさんは語り始めるのだった。

「依頼を話す前にこの国の昔話を聞いてもらいたいのだ…。」

「我が国ファンガイアは昔から火山の影響で我々サラマンダーという種族の精霊人しか住めない灼熱の土地なのだよ。だから城という堅苦しい建物は建てずこの屋敷をずっと城として住んでいたのだ。この環境のお陰で外敵も滅多に来ぬしな…。」

ガリウスは一呼吸おくと話を続ける。

「ところがこの地は火山の影響もあり炎と熱の安定が出来ず、時には熱の過剰な暴走で我々サラマンダーでも身体に異常をきたすこともしばしばあったのだ…。」

なるほど…と僕達は話に聞き入る。

「しかしそんな時、火の大魔導士フレアース様がどこからともなく現れた。フレアース様がそのお力を使うと炎は静まり安定し我々の生活は安定し、それまで灼熱の国はその環境のせいで他国との国交も何もかもが出来ずただ外との関わりをもてなかったのだ。」

僕達はじっと話の続きを聞く。

「だがフレアース様は非常に気まぐれな性格でな…最初は我々の暮らしを只々見ていただけなのだが…ある時、我が国に昔から伝わる酒を歓迎に飲ませた所、大層気に入ってな…酒の提供を代わりに我々の国の炎の力を制御してくださり。未だに支えてくださっておるのだ。」

なるほど…さすがは大魔導士…マリオン様と同様、凄い力を持っているみたいだ。

「私もフレアース様がいてくださってるからここも平和だと思っていたのだが…。」

ダンさんも話を聞き溜息混じりにいう。するとガリウスさんはまた語り始める。

「実はな…ここからが我々の国からのギルドに出した依頼なのだ。」

僕はゴクリと唾を飲む。

「ここ数ヶ月前からまた急激な気温の上昇が確認されて傷病者も続出してるのだ。これはフレアース様に何かあったのかも知れんのだ…。」

そしてサイリスさんが前に出て僕達に向かい懇願してくる。

「フレアース様の確認にと私も一度立ち上がったのだけれど…火山までのルートに厄介な魔物の軍勢が巣食うようになってしまってね…。それで依頼したっていう訳なの…。」

そうだったんだ。ダンさんに続きレイオールも準備を始める。僕はらいとと目を合わせる。そして共に立ち上がる。



サイリスさんもガリウスさんもこの国…この街を守る為に。

ここは僕達の出番だ。

お読み下さりありがとうございました。



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