第12話大魔導士の弟子レイオール‐追憶編

僕達はレベルアップの為に大魔道士マリオンに会いにきたんだけど…。

「お前ら…お師匠様に会いに来たのか?」

僕達の目の前にはマリオンの自称一番弟子という少年がいて僕達をキョロキョロ見て品定めしているみたいだ。

「えっと…ここに来る途中ある村でマリオンの話を聞いてここまで来てみたんだけどさ?」

僕は今までの経緯を話してみたんだ。

「へぇ…あの雀の獣人の村か?」

「そうだよ!」

僕がそう言うと彼は僕達をまじまじ見ている。

「お前らが獣人を倒した…なんてな…。」

彼は僕達の外見からは、そんな事が出来るなんて想像がつかないようだ。

「そして村で話を聞いたんだけど…」

僕がそう言うと、レイオールは言葉を遮るように口を開いたんだ。

「うーん…それで戦って自分の弱さを知って強くなりたくなった…のか。」

僕の言いたい事は伝わったみたいだ。

「そう…僕はもっともっと強くなりたい!」

そう言うと僕の前にらいとが立つ。そしてレイオールの手を取り真剣にお願いをする。

「頼む!俺達はまだまだ強くならないといけないんだ!」

らいとの凄みのきいた押しにレイオールは表情を曇らせている。そして静かに語り始めたんだ…。

「オイラは…ここから数キロ先南に南下した所にある港街【マリンデル】っていう街で生まれたんだ。」

レイオールを見ると徐々に暗くしずんでいったんだ…。

「レイオール!?さっさと準備して漁に行くぞ!」

漁師の父親と普通の母親の平凡な家庭に生まれ将来は漁師という道をとオイラの父親も母親も思っていて何不自由なく暮らしていたそんなある日の事だった。いつものように親父と漁の準備をして漁に出たんだ。

「おい!レイオール!昨日大荒れだったから今日は大漁だぞ!気合い入れろよ!?」

「ええっ!?オイラ面倒なんだけど…帰りてぇな。」

「何言ってんだ!お前は父ちゃんの立派な跡継ぎだ!」

「やだよ!オイラはあの大魔道士マリオン様の様な、すげえ魔道士になるんだ!」

「何言ってんだ!魔法の魔の字も使えないお前には無理だ!」

「なっ…!?」

「ハッハッハ!シケたツラいつまでもしてんな!そら!漁場に着くぞ!」

オイラは漁師になんて全く興味が無くて小さな頃から読んでいた【大魔道士マリオン】という大好きな本の影響を受けたオイラは大魔道士になる事を夢見ていたんだ。そして漁を終え港に着くとオイラは船を停めたすぐ側に漂流人を発見したんだ。父親と二人で向かうと一人の青年。

「君大丈夫か!?」

「お兄さん大丈夫!?」

俺達はまだ息があった青年を病院へと運び青年は何とか一命をとりとめたのだった。それから数ヶ月後…退院した青年は俺達の家に挨拶に来てくれたんだ。いつもニコニコ笑顔の彼は名前を【マリオン】と言った。彼の名前に何故かオイラは他人のそら似だろうと気にもとめはしなかったんだ。彼は温かな人柄で僕の家族...そして街の住人達とあっという間に仲良くなっていったんだ。彼が退院すると住む場所は静かな水のある場所に住みたいと言う事で『魔幻の滝』の近くに家を建て暮らし始めたんだ。そしてこの街に彼の知識を活かした薬師として街の住人の為に薬草を作っては街に売りに来ていたんだ。彼の薬はよく効くと評判になりオイラも例外ではなくその人柄と彼がオイラにだけ特別だと言ってくれて絶対に周りには内緒だという約束で『魔法』を時折見せてくれたんだ。そしてオイラは彼の『魔法』に惹かれていったんだ。それからオイラは彼に少しずつ魔法を教えてもらい魔道士への道にすっかりハマってしまった。そんなある日…事件はおきたんだ…。あんな小さな街でも事件の一つや二つくらいは起きるもの…。ある時、それはオイラの家に街の一人が朝早くから血相を変えて玄関のドアを開けたんだ。

「おい!?大変なんだ!」

「どうしたと言うんだ?こんな朝早くから?」

親父がそう問うと男は続ける。

「こないだから急に母が体調を崩してな…。日に日に酷くなって…さっき…等々…。」

男はそう言うと膝から崩れ落ち泣き出してしまった。オイラも親父も何の事かも分からず男をただ見て聞いているしかない。すると男は自分の髪を突然むしり取って涙ながらに叫ぶ。

「これだ!見てくれよ!お袋だけじゃない!この俺も普通に生活してたのに身体がどんどん何かに蝕まれてるんだ!!」

これにはオイラも親父もお袋も衝撃を受けたんだ。どうして急にこんな事が!?だけどこの一件だけではなく、次の日は隣の家の奥さんが…そしてまた次の日には裏の家の子供が…突然の病に蝕まれていったんだ…。原因を街中で調べてみると街の医者が使われている水の急な汚染が原因だと判断したんだ。そしてそのやり場のない怒りの矛先は水の水源近くに住むマリオン様に向けられていったんだ…。それから街の自衛団は国からの支援という形で兵士を借り百名前後のマリオン討伐隊が結成されてしまったんだ。作戦を小耳に挟んだオイラはマリオン様の元へひた走りする…。山を超え谷を走り水源のある滝を目指してやっとの思いでマリオン様の小屋に辿り着くとオイラは倒れているマリオン様を発見したんだ…。

「マリオン様っ!?」

マリオン様を抱き上げると彼は気がつきゆっくりと目を開けたんだ。そしてフッと微笑むと消え去りそうな声で語り始めたんだ。

「レイオール…私は…君達親子に救われ今日までこれた。本当に感謝している…。実は私は魔幻六芒星と呼ばれる存在でね。その一人だったんだ。」

ハァハァと肩で息をしながらマリオン様は語る。

「水の守護の魔道士である私はこの世界の水の平和を守ってきたんだ…。」

そして彼は続けたんだ。

「ある時、私は何か嫌な気配を感じ目覚め、眠っていた水の神殿と呼ばれる海底の神殿からこの地へやってきたんだ。ところが調べようかとしていた所、何者かの襲撃を受け気がついた所をレイオール親子に救われたのだ。」

「マリオン様…水の汚染っていうのは…。」

「今の私がこの状態なのは…何故かこの水源に存在した魔界の毒樹と呼ばれる『ドリガノン』と戦いヤツを滅ぼしたのだが…油断した私は…その毒に侵されてしまったんだ。」

オイラは今回の事件の犯人がマリオンの仕業ではない事が分かって少しほっとはしたけど我に返る。

「マリオン様!街で起こった水の澱み事件の犯人が貴方だと街中、国中が貴方を狙ってきています!」

「逃げましょう!」

オイラがそう言うとマリオン様は引き止めるようにふらつきながら立ち上がった。

「レイオール!いいか?君は、まだまだこれからだし魔法だってこれからどんどん鍛えていける。」

マリオン様はそう言うとオイラの頭を撫でてくれる。

「これから私は水の神殿で悠久の眠りへと入る。私達…この世界の魔幻六芒星という存在は元々この世界の安定の為に眠っているのだ。」

「私達の目覚めというのはこの世界に何かが起こる前兆なのかもしれない。」

「マリオン様っ!!」

オイラはマリオン様にしがみつき思い切り泣いた。マリオン様の身体は光りだし透き通っていく。そしてオイラの持っている一冊の本をパラパラと見ていく。

「!?マリオン様。」

「人々は私を…こんなにも愛して…物語まで書いて想ってくれているの…だな…ありがとう。」

「私はこの身をもって水を浄化させる。もう…この街の…この国の人々の水は…大丈夫だと約束しよう。」

「レイオール…私が教えた魔法という君の力は大切な人の為に使いなさい…これが…私の…最後のお…し…え……。」

「マリオン様ーーーーー!!」

オイラの住む街…そして、この国の水は綺麗で豊かな水へと変わり平和が戻ったんだ…。

「レイオール…。」

僕が目にしたのは彼の涙だったんだ。彼は涙を拭い、ふぅ…と深呼吸をする。

「お前ら!マリオン様は残念ながら今はもういない!だから伝授してもらったオイラが教えられる事はしっかりお前らに教えてやるから感謝するんだな!ついてこい!」

レイオールの力強いその声に僕達は彼の後を着いていくのだった。




お読みいただきありがとうございました。レイオールの元で魔法を学ぶことになったみらいとらいとはこれからどうなる!

次話をお楽しみに!


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