第10話キューズ敗れ…そして…

キューズとの死闘は終わりキューズ率いる山賊達は気絶している。

「うおおおおぉ!!凄いぞ君達!!」

わーわーと村人達は歓声をあげている。らいとを見ると彼は僕に手を差し出す。

パーン!僕達の勝利のハイタッチだ。

「お疲れ様らいと!」

「おう!みらもよくやったぜ!」

らいとは、そう言うとふらつきだす。

「えっ?らいと!?らいと!!??」

彼はその場に倒れ込んでしまった。そして僕の意識も…足にも力が入らなくなる。

「あ…あれっ!?」

目が強制的に閉じてくる…。

僕は目覚めるとベットの上にいたんだ。

「はぁ…僕は…あの後…気絶したんだ。」

「あ!そういや…らいとは!?」

僕が辺りを見回しているとそこへすずねちゃん親子がやってきたんだ。

「あ!みらお兄ちゃん!?目が覚めたんだね?」

すずねちゃんは大喜びで僕に寄ってきた。するとすずねちゃんの母さんも後ろからきたんだ。

「もう一人の彼は、さっき目が覚めて今外で筋トレしてます。」

「えっ?らいとはもう元気になったんだ?」

「ええ…みらさんを休ませておいてと言い残し行きましたよ!」

僕はベットから起き上がると身体の様子を確認する。もう身体は大丈夫のようだ。僕は、ほっとしてると突然すずねちゃんは僕に抱きついてくる。僕はよろけそうになりながら耐える。するとすずねちゃんは呟いた。

「本当にありがとうお兄ちゃん…。」

「すずねの事村の事本当になんてお礼を言ったらいいか…」

すずねちゃんの母の今にも泣き出しそうな声に僕は首を振り一言。

「お礼なんて…僕達は。」

僕は微笑む。するとらいとが部屋に入ってきたんだ。

「お礼ならもうもらってるぜ!」

「らいと!元気になったんだね?」

僕の問いに元気そうに笑う。

「あはは!俺は元気だ!だから…」

らいとはそこまで言うとすずねちゃん達親子を見つめる。

「このすずねの笑顔と皆の笑顔、そしてあんたも笑顔になってくれるのが最高の礼だぜ!」

すずねちゃんの母は目に涙を溜めて呟く。

「……ぅぅ…はい。ありがとうございます。」

僕達がそんな話をしていると部屋に巨大な影が入ってきた。それは復活したダンさんだった。

「君達、油断してしまったが今回は本当にありがとう。」

「ダンさん!もう大丈夫ですか?」

僕の質問にダンさんは首をまわしながら話し続けた。

「ああ…私もまだまだだった…まだまだ修行しないとな…それと。」

「それと?」

そこまで言うとダンさんは携帯電話の様な物を見せてきた。

「あの悪党共は私が責任もって預かる事にするよ。」

ダンさんは警志隊を手配して山賊を預かるという。後で聞いたら警志隊って言うのはこの世界での警察らしい。間もなく捕縛に来るとの事だ。

「さて…私は警志隊と共に一足先に戻るとしよう。今回の礼もある。戻ったら尋ねて来てくれ。」

「はい!お疲れ様です。」

「ああ。またな!おっさん!」

僕達がダンさんを見送っていると後ろからすずねちゃんに声をかけられる。

「本当にありがとう、お兄ちゃん達!!」

「おう!すずねも母さんを助けて仲良く暮らすんだぜ!」

らいとの手は、すずねちゃんの頭を撫でる。僕がその光景を見てほっとしているとまた部屋のドアが開き村人達が入ってくる。

「君達!是非この村を救ってくれたお礼に村一番のこの宿でゆっくり休んでいってくれないか!?」

「食べ物も皆で持ち寄るし君達に皆がお礼をしたいんだ。」

「えっ!?僕達はそんな…。」

「いいからいいから!!なっ?なっ?」

僕達を誘う村の人達に困惑しているとすずねちゃんが僕の手をひく。

「お兄ちゃん達いこっ!?」

「あっ!すずねちゃん!?」

こうして僕達は、村総出のおもてなしを受ける事になったんだ。

その夜…村をあげての大宴会が始まった。豪華な料理が所狭しと並べられ村長さんの村代表のお礼の言葉で始まり村人全員での歌や踊りに僕達はゆっくり楽しませてもらっている。

「お兄ちゃん達!?食べて飲んでる?」

すずねちゃんの元気な声が僕達に向けられてくる。その奥の厨房を見るとすずねちゃんの母さんはニコニコ笑いながら料理に腕を奮ってくれている。

「すずね!お兄ちゃん達にゆっくり食べてもらいなさい!」

「はあーい!あはは!」

すずねちゃんは母さんの元へ走っていった。僕はすずねちゃん親子を見て嬉しくなりつつ美味しい料理を楽しんでいた。僕は、ふとらいとを見ると村一番の力自慢と語っているようだ。二人の声につい聞き耳をたててしまう。

「あはは!そうだぞ!俺も若い頃は結構修行はしたもんだ!」

「そうか!おっさんもか!?俺もこれから修行してこの世界の強敵共をぶっ倒してやる!」

「おう!その意気だ!俺がした修行はな…#%&の+&*%という%&#」

村一番の力自慢だという村人の声とらいとの声が他の人の声や音にかき消され聞こえなくなっていった。らいとは村人と熱く語っていた。すると僕の隣りにすずねちゃんがやってきたんだ。

「みらい〜!これも食べてみて!」

「ええっ?これは何!?」

「これは『雀のお宿特製の筍ステーキ』と言ってこの宿の特製料理だよ!」

僕は特製料理を口に運ぶ。口の中に広がる豚肉と柔らかい筍のステーキは本当に美味しかった。

「うん!美味しい!」

僕が喜んで食べるものだからすずねちゃんは大喜びで次々料理を運んでくれる。

「すずねちゃん…ありがとう。こんな美味しいご馳走中々食べれないよ!」

「ううん!僕の母さんの料理はこの宿の自慢なんだよ!父さんも…優しくて…僕の自慢だった。」

ふとすずねちゃんを見ると涙を溜めていたんだ。僕は気がつくと彼女をギュッと抱きしめていた。

「大丈夫!何かあったら僕達がいつでもいるから!」

「うん!ありがとうお兄ちゃん!」

するとすずねちゃんは僕に何かを見せてくれたんだ。その小さな手のひらに何か光る物があった。

「これは!?」

「これはね…僕の涙から出来た『雀の涙』だよ。僕に出来るお礼はこれくらいしかないから…。」

すずねちゃんは僕の手のひらに雀の涙を乗せるときらりと光る。あまりにも綺麗だけどこれはすずねちゃんの涙…なんだ。僕は、そう思うと切なくなる。

「すずねちゃん…。」

僕はすずねちゃんの手の平にすずめの涙を返しギュッと握る。するといつの間にからいとが隣りに立っていた。彼は、しゃがむとすずねちゃんの目線に目を合わせる。

「すずね!いいか?その涙は村を直す為とか母さんの為に使うんだ。いいか?父さんから受け継いだその力は大切な人の為に使う事!」

そう言うとらいとはすずねちゃんににっこり微笑むと頭を撫でる。彼女も涙を拭くとにっこり笑う。僕の心も温かくなる。するとらいとはすずねちゃんを肩車する。

「えっ?お兄ちゃん…?」

僕とすずねちゃんは驚いていた。

「すずね!お前が寂しくなったらまたこうして肩車にくるからな!」

すずねちゃんは飛びっきりの笑顔で答える。

「うんっ!ありがとうお兄ちゃん!」

こうして僕達の楽しい夜は更けていくのだった…。

そして次の日の朝…。

「おーい!みら!?まだか?」

僕を呼ぶらいとの声が外から聞こえる。僕は村の人達からお礼を言われ貰った装備を身に付け確認していた。

「もう終わるから今行くよ!」

僕は部屋を確認して外に出ていくと村の人達に囲まれて話しているらいとの姿があった。

「おまたせ!らいと!」

「おう!みら!じゃあ行くか?」

僕達が村人達の見送りをうけている。そこにはすずねちゃんの姿はなかった。

「本当に色々ありがとうございました!」

「いえいえ!すずねちゃんによろしくお伝えください!」

僕がそう言うとすずねちゃんの母さんは暗い顔をした。

「あの子…よほどお二人の事が気に入ったみたいで…。寂しいみたいでさっきまで泣いて拗ねてたんです。本当にすみません。」

「大丈夫!すずねならきっと笑顔になりますよ!」

らいとの言葉にすずねちゃんの母さんは深々と頭をさげる。するとどこからともなく声がする。

「おーい!お兄ちゃん達ーーーっ!」

すずねちゃんの声が辺りに響く。皆がキョロキョロ辺りを見回すが姿は見えずにいるとまた声がする。すると村人の一人が声をあげる。

「あ!あんな所に!?」

村人が指を指す方向を見上げると宿屋の屋根から見下ろすすずねちゃんの姿があったんだ。

「お兄ちゃん達ーーー!!また帰ってきてね!!」

「わかったーーー!行ってきます!」

「すずねーーーまたな!!」

すずねちゃん達、親子と村人達に挨拶をすると僕達は村を後にしたのだった。



お読み下さりありがとうございました!


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