【 昔のままで 】


 こんな時、どうすればいいんだろう。

 昔みたいに、一緒に寝るべきか……。

 中2の僕の頭の中は、混乱してニューロネットワークが情報の大渋滞を引き起こしている。


 やっぱりここは、小さい頃のように素直になるべきか。


「あ、じゃあ……、僕も一緒にお布団に入ってもいい……?」


 モエ姉は、枕に顔を埋めたまま「知らない……」と震える声で言った……。


 ゲームを片付け終わると、部屋の電気を消し、ベッドまでドキドキしながら近づく。

 薄暗い部屋の中、布団を少しだけ持ち上げ、その隙間からそっと体を入れてゆく。

 温かくなった布団の中に入ると、柔らかいモエ姉の体が背中に少しだけ触れた。


 僕の心臓は、今、激しく踊っている。

 心臓って、普段は気付かないけど、こんなにも音がするものだと、この時初めて知った。

 そして、血流は今まで感じたことがないくらいに、洪水のように体中を駆け巡る。

 丸めた体が、まるで宙に浮いたしゃぼん玉のように、ふわふわと緩やかな風に漂っているよう。


 背中越しに、モエ姉が体をこちらに向けたのが分かった。

 すると、彼女の手の平が、なぜか背中に触れたのを感じて、一瞬ピクリとする。


 とても小さな声の振動が、その手の平から僕の背中を通して伝わってきた。



「マモちゃん……、ありがとう……」



 今日の夜は、僕はとても眠れそうにない……。



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