第4話 計画

× × × × ×


「そっかー。二人とも無事受かったんだねー。おめでとう! 二人で受けるとは仲睦まじいですなぁ」

「もー先生! 別にあたし達そんなんじゃないってー。神田と一緒だってことは受験した後に知ったんだよ」


 川口と共に合格の報告をした。報告を聞いて、合格者一覧の紙に記入している先生は川口の担任だった。ほわほわ系の先生で男女共に大人気の与野先生だ。


 与野先生は俺達が付き合っているから同じ高校を目指していたと勘違いしているらしく、自分の受け持つ川口を見てニヤニヤしながら祝福していた。


「まぁでも。とにかく二人ともおめでとう! よかったね。どっちか片方だけ落ちてたりしなくて」

「それは俺達も帰り道で話してました。そんなことになってたら、絶対気まずくてその場で解散して別々に来てましたよ。多分」

「そうね。私が同じ立場でもそうしてたと思う」

「あたしも絶対無理だわ……」

「北高行くのは二人しかいないから、高校でも仲良くするんだよ。同じ中学出身っていうだけで心細さが無くなる大きな要因だからね」

「「はい」」


 うちの中学校から北高への入学は俺達二人だけということが確定した。二人だけだが、きっと高校でも今の友人達に似たような奴らと関われるだろう。類は友を呼ぶって言葉もあるし。そこに同じ中学の川口が加わるなら心強い気がする。


 報告を終えた俺達は、特にここで解散という示し合わせはしなかったので、下駄箱まで一緒に向かった。


 下駄箱で靴を履き替えて、玄関を出るとトタトタと小走りする音が近づいてきた。川口的にはここで解散というわけじゃなかったらしい。走ってきたので俺も歩くのやめて振り返る。


「ねぇ。今日じゃないけど、お疲れ様会でもする?」

「いいなそれ。俺達だけ? 他に誰か誘う?」

「どっちでもいいよ?」

「まぁ、二人で何かするにしてもなぁって感じだよな。とりあえず誰か他にも誘って何人かでやるか」

「そだね。じゃあ、あたしは晴香誘うよ」

「なら俺は常陸にでも声かけてみるかな」

「いいね」

「じゃあ、後はケータイで連絡して予定決めよっか」

「うん」


 お疲れ様会をやることになった俺達は予定の話をしながら帰っていると、前に登校中に声を掛けれた信号まで来た。ここで川口とは帰り道が分かれるので、残りの話はケータイですることにした。風邪を引くなよと言わんばかりに冷たい風がぼうっと吹き、体がぶるりと震えた。帰ったらあったか~いインスタントスープを飲もう。


× × × × ×


『常陸は問題ないって。予定決めれば行けるってさ』

『晴香も行けるって言ってたよ』

『じゃあ早いとこやるか。今週の土日どっちかで出かけるか』

『晴香に聞いてみる』

『こっちも常陸に聞いてみるわ』

『どうだった? 晴香はおっけー』

『常陸も空いてるってさ』

『何する?』

『急な予定じゃテーマパークとは難しいし、買い物とかご飯とかカラオケとか?』

『じゃあ、軽く買い物してお昼食べてカラオケ行こっか』

『了解。常陸にも伝えておくわ』

『こっちも晴香に伝えておくね』


× × × × ×


 決まった予定を常陸に伝える。チャットアプリで文字を打って送信してすぐ、既読となった。早いな。と思っていたら常陸から着信。


『夜遅くにごめんな』

「いや、別に。それよりどした? なんか用あったんだべ?」

『あー、とりあえず予定は了解ね』

「とりあえず?」

『んで、本題だけど、どうしてお疲れ様会なんてやる運びになったんだ?』

「合否結果の報告の帰りにな、そうなった」

『そうなった? お前から誘ったんじゃないのか』

「俺が? 違うって」

『それホントに俺行っていいやつ?』

「当たり前だろ。誘ってんだから」

『いや、そういうことじゃなくてだな。まぁ、いいや。とりあえず当日は向こうの二人と待ち合わせする場所まで一緒に行こうぜ』

「了解」

『んじゃまた』


 常陸のやつ、なんで急に遠慮したんだ。変な気なんて使わなくていいのに。別に川口と親密になったわけでもあるまいし。

 などと悪態を少しつくものの、なんだかんだ週末が楽しみになってきた。今夜は眠れるだろうか。寝れなかったら明日の授業はそっと眠りの世界に入ろう。


× × × × ×


 神田と予定を決めた後、あたしはすぐに晴香に待ち合わせと予定の連絡をした。


「あ、もしもし晴香? さっきのお疲れ様会のやつ、十時半くらいに待ち合わせね。買い物してお昼食べてカラオケって感じで」

『了解―! ホントにわたしも行っていいの?』

「居てくれないと困るよー。向こうも中里が来るわけだし」

『中里君も来るのはさすが神田君って感じだよねぇ。中里君のこと好きな子達が知ったらえらいことになりそう』

「大袈裟だなぁ~」

『わたし的には結構オブラートに包んだつもりなんだけど……』

「え……。あたしたち当日大丈夫だよね? ね?」

『多分、大丈夫でしょ。多分』


 学校でも人気の中里が居る。そうなると街中で他の女子に見られたら、後で色々言われちゃう。何なら、熱狂的なファンはきっとあたし達に文句を言ってくる。多分だなんて二回も言われると正直ちょっと不安になる。


「多分って……。でもまぁ、楽しんで忘れるしかないね!」

『おやおやぁ、梓さんは楽しむつもり満々なんですなぁ』

「もう! だから別に神田とはそんなじゃないって!」

『別に神田君のことだけとは言ってなかったけど?』

「ぐっ……。まぁ、とりあえずそんな感じだからよろしく! じゃあおやすみ!」

『あ、逃げた! でも、おやすみ!』


 顔あっつ……。別に好きな訳じゃないのになんであたしがこんな顔真っ赤にしなきゃいけないのよ。晴香には見事に嵌められたし。ちょっと悔しい。晴香が中里を狙ってるなら、お疲れ様会はそれとなく中里を近づけて、戸惑う晴香を見て仕返ししてあげようかな。その後の報復が怖そうだけどね。一気に喋りすぎて疲れたしもう寝よ。

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