第3話 再会

 翌日。目が覚めた俺は布団から起き上がりスマホの電源を入れる。

「げ! まだ六時じゃん」

 今は夏休み。このまま二度寝をしてお昼に起きるのがベストだと思うが少し今日は早く起きてしまったのだ。

 このまま寝てもどうしようもないし顔でも洗うか。そう思い一階に降りて洗面台に向かう時だった。

 外のポストで何か音がしたのだ。おそらく郵便が何かだろうと思いその時は何も気には留めなかった。

 顔を洗い終わって外に出てポストの中を確認する。そこにはいつものチラシと新聞が入っている。全部取り出して家に入ろうとすると、何か封筒らしきものがひらひらと落ちた。

「なんだこれ?」

 よく見てみると、手紙のような物だった。シンプルな白色の手紙で裏を見ると俺の名前が書いてあるのだ。それ以外は何も書いておらず俺宛ての郵便物だという事しか分からない。

 部屋に戻り、早速謎の郵便物を開けてみる事にした。開け口には両面テープがされており破って開けるのは少し良心が痛んだのでハサミで開ける事にした。

 中には三つ折りにされてある紙が入っていたのだ。

 開いてみると、何やら文字のようなのが記載されいる。

 紙にはこう書かれている。

 城道伊桜理殿 明日午前九時 以下の住所に行くべし

 紙にはそれだけしか書かれていなかった。裏を向けても何も書かれていない、ただの白紙。

「なんだこの文」

 違和感しかないこの文章に俺は思わず首を傾げる。新手の悪戯かと思ったが住所もちゃんと書いてある。地図アプリで調べてみたら、住宅だった。

 もしかしたら間違って送られてしまったのかもしれない。そう自分に思い聞かせてひとまず紙を封筒に入れて机の上に置いた。


 翌日になり、とりあえず行ってみる事にした。もしかしたら何か分かるのかもしれない。この手紙は違和感しかないのだ。どうして俺の名前を知っているのか、どうして俺のこんな手紙を送ったのか。

「行ってきます〜」

「行ってらっしゃい〜」

 夕食の時に、朝ポストに入ってた手紙の事を母に打ち明けようかと思ったがめんどくさかったのでやめた。

 そんな事を思い出しながら家を出て俺は手紙に書かれていた住所へと向かった。


「な、なんだここ」

 指定された住所に到着したはいいものの着いた瞬間俺は思わず声をこぼした。

 俺が目にしたのは、貴族が住んでいそうなかなりの豪邸だったからだ。外から見る限り庭はかなり広く、さらには池まであるのだ。こんなの時代劇でしか見たことのない本物の豪邸だったのだ。

 想定外、かなりの想定外だった。

 地図アプリで確認したが、何度調べても間違いはなかった。つまりここが指定された住所になるわけだ。

 と、とりあえず玄関チャイムを鳴らしてみよう。そう思い、チャイムを押す。

 ピンポーンっと音が鳴り数秒経つと、玄関チャイムから声が聞こえ始めた。

「はい、どちら様でしょうか?」

「すいません。手紙を貰った城道伊桜理です」

「ちょっと待っててくださいね」

 次の瞬間、チャイムの音声が切れて何も聞こえなくなった。

 数分程経つと、家の門が開いて一人の女性が出てきた。

「すいません。あなたが城道伊桜理さんですか?」

「はい、そうですが」

「それなら、貰った手紙を見せて貰っていいですか?」

「はい、どうぞ」

 カバンの中にしまってあった手紙を取り出し女性に手渡す。女性は中に入っている紙を取り出して三つ折りにしてあった紙を開いた。

「やっぱり、あなたが・・・・・・」

「あ、あの〜」

「そ、そうね。ここで立ち話しているのもなんだからまずは入って入って」

「は、はい」

 俺は案内されるがままに豪邸に入った。部屋がたくさんあり中には囲炉裏まであった。他には庭に面した渡り廊下や六畳間の畳部屋など他の家では到底見る事が出来ない物ばかりだった。

 一通り部屋を紹介してもらって案内が終わるかなと思いきや、今度は六畳間の畳部屋に案内されたのだ。そこには大きなテーブルや掛け軸、生花などが置いてあり、ザ・和室と言った感じだ。

「とりあえず座ってください」

「は、はい」

 床に敷いてある座布団にゆっくりと座る。座ったのはいいがなんか・・・・・・落ち着かない。

「お茶でも持ってきましょうか?」

「は、はいお願いします」

 周りを見渡してみるとやっぱり豪邸に来たんだなと改めて感じる。だって家に掛け軸なんて無いし、ましてやこんなに畳も綺麗じゃない。

「お茶をお持ちしました。どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「それじゃ後は、若い者同士で」

 そう言い残して女性は去ってしまったのだ。後は若い者同士?何を言っているんだ?俺はこの手紙の正体を突き止めるためにここに来たんだ。

「失礼します」

 その声と同時に和室に入ってきたのは着物を着た少女。顔立ちも整っており一目惚れされてもおかしくないレベルの美少女。

 その美貌を今着ている着物がさらに高まらせている。

 でも俺はその少女の名前を知っている。

「海野真鈴さん?」

「はい、そうですよ」


 

 

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