第2話 自己紹介

やばい、さっきから心臓がバクバク鳴ってる・・・・・・

なんだこの気持ちは、今まで感じた事のない気持ち。

「あ、あの大丈夫ですか?」

「は、はい! 大丈夫です!」

 嘘だ。全くの嘘である。大丈夫なわけない・・・・・・それはそうとまだプール開放の時間じゃないのだ。

 まずはそれについて、尋ねなければ。

「それはそうと、まだプール開放の時間じゃないんですけど」

「はい、知ってますよ」

「それならなんで」

「だって今なら誰もいないですから、一人でゆっくりできますし」

 なるほどなるほど、そういう考えも一理あるな。うんうん、って違う!

「それはそうかもしれませんが、まだ時間じゃなないのですよ」

「それは失礼しました。それなら時間まで少し離れてますね」

 そこにいる事に何か執着しているわけでもなく俺の言う事をすんなり聞いてくれてホッとした。

 彼女はプールの水に入れてた足を戻し立ち上がる。そしてベンチに置いてある日傘を手に取りこちらに一礼した。

 めっちゃ礼儀正しいですやん。そんな事を思っていると彼女は一歩二歩と足を進める。

「それじゃあ、また」

「あ、あの」

 思わず声をかけて彼女を引き止めてしまった。その理由はただ一つ。

「名前、聞いてもいいですか!」

 そう、彼女の名前が知りたいのだ。相手からしたら少し戸惑う一言。

 でも、知りたいのだ。彼女の名前を。

 この瞬間を逃したら、きっと後悔する。

 これと言った根拠は無いがそう感じたのだ。彼女は、口角を少し上げて微笑みながら、

「海野真鈴です」

 と、名前を言った。

「良い名前ですね」

「ありがとうございます」

「それじゃあ俺、仕事があるので」

「はい、頑張ってください。私はもう行きますね」

 真鈴はそう言い残して、この場を去っていった。

「綺麗な人だったな〜」

 

 頭はもう海野真鈴の事でいっぱいでプール当番は椅子に座ってぼーっとして気づいたら終わってた。

 特にこれといったトラブルもなく他の人が帰ったら忘れ物が無いか確認して施錠をして帰った。

 また会えたら今度はちゃんと話してみたい。

 そう思い布団に入り意識を沈めた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る