第4話 レベル2では駄目
さて、左右の乳をいじりにいじりまくってなんとか採取した初乳です。哺乳瓶の底、2ミリにも満たない量です。おかしいな、採取してる時はもっとあるような気がしたんだけど。あっ、傾けてたからか。
ここまで時間をかけまくって果たして『搾りたて』と言って良いのか、何かしらの詐欺になるのではないか、そんなことを考えながらナースステーションのベテラン看護師さんに見せに行きます。
「おぉー、上出来上出来! 頑張ったわね!」
本当にこれで大丈夫なのか、それとも褒めて伸ばす方針なのか、とりあえずベテラン看護師さんからは『OK』をもらいました。
が、地獄は当然まだ続きます。
知ってる?
赤子の飯って一日3食じゃないんだぜ?
3時間ごとに飲むとかそんな生き物なんだぜ? 一日は24時間なので単純計算で8食なんですよ。
ちなみに、この初乳であーだこーだ乳輪いじくってたの、夜なんですよ。
私はですね、次の息子の飯のためにまーたドモホルンリンクル以下の仕事をするんですよ。だってあの2ミリとかを採取するのに一時間くらいかけてるんですから。
それでも散々いじり倒してましたから、さすがに滲みレベルは上がってきたんですよ。レベル2くらいの滲みを見せてきたんですよ。だけど、先端からポタッと落ちるレベルではないんですよ。やっぱり縁に擦りつける方法なんですよ。ポタッて落ちるのは、たぶんレベル8くらいのやつなんですよ。
とりあえず、一回目よりは少ない時間で1ミリくらい(メモリにも届いてないので、㎖とも表記出来ない)搾ることに成功し、母乳まみれの手をウェットティッシュで拭い、ぼんやりと「明日姑さんにウェットティッシュ買って来てもらおう」なんて考えつつ、その瓶をナースステーションに持って行きます。
そこには母乳というか、ミルク専用の冷蔵庫がありまして、お疲れのママさん達が手早くミルクを作れるよう、哺乳瓶の中に半分ほど濃いめに作られたミルクが冷やされておりました。お湯を注いで温度を均したらすぐ飲ませられるというわけです。厳しく衛生管理された病院だからこそ出来るやつなので、ご家庭では駄目なやつ。もちろん、使用済みの哺乳瓶もサッと濯いで専用の籠に入れておけば、看護師さん達がきれいに洗って消毒までしてくれます。あの時はそれすらもしんどかったですけど、家に帰って一からあれこれしてみて、あそこはマジで天国だったな、って思いましたね。
というわけで、共用の冷蔵庫ですが、名前のシールを貼れば搾った母乳を入れてもOKということで、私以外にもいろんな人の母乳が冷やされておりました。中には半分くらい採取している人もいて、「良いなぁ、出る人は」と、一応製造自体はされているためにサイズだけはマシマシになっている我が乳を見て、「畜生、この乳は飾りかよ!」などと悪態をついたりしました。マジで飾りでしたね。
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