【 大切な家族 】
すると、その時、玄関の扉を開ける大きな音がした。
『バタン!』
「美沙先生に、何をする!!」
扉の前に立っていたのは、海斗くんだった。
先輩は、大きくビクッと体を動かすと海斗くんの方を見て怒鳴った。
「何だお前! 何で人の家に勝手に入って来るんだ、このやろう!」
海斗くんは、両手の拳を握り締めながら、少し震えた声でこう言う。
「美沙先生から離れろ……。美沙先生が嫌がってるだろ……」
先輩は、覆い被さっている私の体から離れると、海斗くんのいる玄関の方へとゆっくりと体を揺らしながら歩き出した。
「お前、何様だ。何で人の家に勝手に入り込んでんだ、この若造が」
「あんたなんかに、美沙先生を好きになる資格なんてない……。全部聞いた……、あんたには既に家族がいるんだろう……? すぐに、美沙先生を自由にして、大切な自分の家族元に戻ったらどうなんだ!」
「お前みたいな若造に、言われる筋合いはないんだよ!!」
すると、先輩が海斗くんに殴りかかった。
しかし、先輩の拳は、海斗くんの大きな手の平に
『パシィッ!!』
「あんたにも、かわいい子供や奥さんがいるんだろ……。もっと大事にしてやれよ……。美沙先生はあんたには守れない……。美沙先生は、俺が守る!」
海斗くんのその大きな体に比べると、先輩の体が随分とその時小さく見えた……。
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