【 浮気と不倫 】


 先輩が、私の着ているシャツの前ボタンも無理矢理外そうとする。


「ちょ、ちょっと待って……。話を聞いて欲しいの……」

「もう、子供の話は聞き飽きた! 俺はもう子供なんかこれ以上いらないんだ!」


 私は彼の言葉に驚いた。

 彼は、はっきりと「子供なんかこれ以上いらない」と言った。


「そ、それ、どういうこと……。もしかして、先輩、子供が既にいるの……?」


 先輩は、チッと舌打ちを一度すると、開き直るかのようにこう口を開く。


「ああ、いるよ。4人もな」

「えっ!? 4人も……。どうして……」


 先輩には、既に家族がいた……。

 奥さんと子供4人も。


 私は今まで全然知らなかった。私のことが好きで付き合ってくれていると思っていた先輩が、既に家庭を持ち、家族6人で生活をしていた。

 そう、私はずっと愛人だったんだ……。


 それをずっと知らずに、先輩と20年近く、結婚もせず、子供も作らず、付き合ってきた。

 薄々どこかで先輩が浮気をしているだろうとは思っていた。

 心のどこかで、私が本命で別に愛人がいるとずっと思い込んでいた。


 でも、愛人は私の方だ……。

 それは余りにも、みじめだ。


 それでも、無理矢理先輩は、私の服を剥ぎ取ろうとする。


「きゃーーっ!!」


 思わず大きな声が出た。

 もう限界だった……。



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