【 カレーライス 】


「今日、引っ越して来たばかりなのね?」

「はい、そうです。今、やっと部屋の片づけが一段落ついたところです」


「そうなの。夕食はもう済ませた?」

「いいえ、まだ」


 その時、丁度、彼のお腹から『グゥ~ッ』っという音が聞こえた。

 思わず彼は顔を赤くして、両手でお腹を押さえる。


「うふふっ、お腹空いてるのね。それじゃあ、今から私が夕食作ってあげるから、久しぶりに先生と一緒に食べる?」

「あっ、それは嬉しいです。お願いしてもいいですか? もう、お腹ペッコペコで……」


「うふふっ、それだけの体を維持しないといけないから、沢山料理作らないとね」

「あはは、あの時より食べる量は確かにかなり増えました……」


 彼は照れくさそうに、左手で頭の後ろをきながら、頬を赤らめてそう言った。

 彼もまた、笑うと口がアヒル口になるようだ。


 ――私は彼を部屋へ通すと、大量に買い込んだ食材を冷蔵庫に入れながら彼に言う。

「久しぶりにさ、林間学校で作ったようなカレーでも食べる?」

「あっ、いいですね。僕も手伝います」


「ありがとう。海斗くん、今だったら沢山食べそうだもんね。うふふっ……」

「はい、カレーだったら2、3杯は行けますね」


「すごいわね」

「ええ、食いしん坊ですから」


 そう言って笑う彼の大きく成長した大人びた表情が、なぜかとてもかわいらしく見える。


 久しぶりに味わう感覚。

 懐かしい小学校の卒業生と作る野菜ゴロゴロカレー。


 理由は分からないが、なぜか私の心は弾んでいた。



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