【 教え子 】


 表札を見たのか? それとも、どこかで会っているのか?

 私は思い出そうとしたが、すぐには出てこなかった。


「ど、どちら様でしたっけ……?」

「僕のことを覚えていませんか? 小学校の時、よく保健室に通っていた海斗、大塚海斗おおつか かいとです」


 私は頭の中で思い出していた。

 今から10年ほど前、よく保健室に来ていた『海斗かいと』くん。


 その当時、痩せていて背もまだ低く、病弱だった生徒。

 彼はよく、体調を崩して保健室のベッドで横になっていた。

 その様子をいつも近くで何度も見ていたので、彼のことはよく覚えている。


 でも、今、目の前にいるその青年は、身長が180cmはありそうな健康的な姿をしている。


「あの海斗くん……?」

「はい、そうです。やはり、美沙先生ですよね?」


「あっ、う、うん、そうよ。お久しぶりね」

「はい、僕が小学校を卒業して以来だから、6年ぶりですね」


 彼はその当時とは比べ物にならないほど、背が伸べて、健康そうな体系をしていた。


「随分、背が伸びたのね。見違えるほど大きくなったわね」

「はい、高校の時に一気に背が伸びたので」


 病弱だった彼、海斗くん。

 確か、私の記憶では、彼は腎臓に疾患を持っていた子……。


 私は、彼の顔を見ながら、当時、小学生だった頃の海斗くんの表情と重ね合わせていた。



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