▄︻┻┳═一   十一発目     ≫【いじめ】

 昼休みになると案の定里中さんはどこかに行ってしまった。まえからこの時間になると教室から出て行く。しかし今日はどこかに行くというより、どこかに逃げるみたいだった。

「ねぇ空、なんか顔色悪いよ? 具合でも悪いの?」

「いや、別になんでもないよ」

 心配してくれたらしく、珍しく自分のおかずをひとつくれた。いつものように今日という日が過ぎてほしい。今日の授業が終わるまでのあと数時間だけなにも起きずに、ただ平凡に。

 すみれとご飯を食べることで冷静さを保ち気を紛らわしていた。幼馴染みということもあってか、一緒にいるだけで安心する。そしてなにより満開の笑顔は俺の心をひきつける。

「よう空、隣失礼するぜ。し、島塚さんいいですよね」

「いいよ……ってだれだっけ?」

「笹原だよ。いい加減覚えてあげないとかわいそうだよ」

 笹原がくわわって三人でわいわいご飯を食べる。気を遣っているのか、里中さんの話題は出さずにチャラさでおちゃらけた会話をしていた。すみれもそんな笹原の名前をようやく覚えたようで、そっちのほうも安心した。そんな中、教室の端から声が聞こえた。

「あー男子がエロいの観てる。ほんとしょうもないわね……ってこの写真」

 一瞬空間が止まった。俺と笹原はドキッと体を振るわせる。別に自分が悪いわけじゃないのに胸がざわついた。すみれに聞かせたくない一心で大袈裟に話題を振った。笹原もそのことを察したらしくふたりしてぎこちない笑顔をすみれに向けていた。

「信じられない……私の彼氏を奪ったのはやっぱりあいつなのね!」

 俺らの背筋が凍りついた。教室内はまだ賑やかだがその発言がこだまするのも時間の問題。おそるおそるすみれを見ると……。

「信じられない! この新商品のグミおいしいぃ」

 すみれは朝コンビニで買ったグミを口に頬張って歓喜していた。ほっと息を吐き「鈍くてよかったぁ」とすみれに聞こえない声を漏らす。

 そのあともすみれは特に察した様子もなく、平和な昼休みを過ごすことができた。そう思いたかった。

「そうだ……ちょっとだれかマッキー持ってない?」

 さっき憤怒をあらわにしていた女性が周りにいた女子グループにマッキーペンを借りた。フタを開けてトタトタと歩く。彼女は怪しい笑みを浮かべると里中さんの机にペン先を押しつけた。

「え! そ、そはまずいよ……」

「うっさい! 二年間付き合った彼氏がほかの女と電話してたのよ! 私と付き合ってたときに! 許さない……許さないんだから!!」

 静まり返った教室に怒号が響き渡る。彼女はインクが飛び散るくらい血眼になって机に文字を書いていた。それが終わるとなにか閃いたように女子数名を連れてどこか行ってしまった。

 俺と笹原はその机を見に行った。

“ビッチ”

“しね”

“きも”

 大小異なるさまざまな悪口が書かれていた。目の前でだれかが嫌がらせをしているのを初めてみた。それもこんなに幼稚で憎しみがこもった代物はテレビの中でしか知らない。

「ひでぇ……」

 気がつくと周りには人が集まっていた。みんな口々に「これやばくね」「どうする?」とことの大きさに戸惑っていた。しかしだれも行動に移そうとはせず、机を囲んで井戸端いどばた会議をしていた。

 するとガラガラっとドアが開く音がして女子数名が戻ってきた。意気揚々としているのがさっきこの机に悪口を書いた人。手にはペットボトルが二本握られていた。周りにいる女子は申し訳なさそうに顔を赤らめている。

「どいて」

 彼女が野次馬を跳ね除けて里中さんのカバンを机に置くと、チャックを開けて持っていたペットボトルの中身をカバンに流し込んだ。その正体はコーラとミルクティだった。さっき自動販売機に行って買ってきたのか。なんでわざわざこんなことのために……。

 周りにいたクラスメイトはだれも止めようとしなかった。止められなかった。目の前で起きたリアルないじめ。その現実が生々しくて身も心も一歩下がって傍観者になる。それじゃダメだっと頭ではわかっているけど、体が動かない。そしてしばらくの間、その異様な光景を眺めていた。

 彼女に連れて行かれたうちのひとりが花瓶を手にしていた。どこから取ってきたのかわからないけど、少なくともうちのクラスのものではないことはわかっていた。それを乱雑に奪い取る。花ごと中の水をカバンに注ごうとしていた。

「さ、流石にこれはやりすぎなんじゃ……」

「だれよあんた。どうせなにもできないでしょ。それともなに? こいつのこと好きなの?」

 勇気を出していった言葉はあっけなく地面に叩きつけられた。そして間も無く、里中さんのカバンに花が捨てられた。彼女の言葉は俺だけでなく周りに野次馬も怯ませて、みんなそそくさと自分の席に帰っていった。我関せずと目を逸らしたまま。

 笹原に肩を叩かれて仕方なく自分の席に戻った。結局なにもできなかった。ほんの数分まえはいたって日常だったのに、嵐がきたように教室は荒れた。コーラとミルクティと花。里中さんのカバンが無惨になる過程を見届けてしまった。里中さんに対する同情より、今は自分の不甲斐なさが心を占領する。俺は無能なんだ。

 そういって蕾は消えて芽だけとなった。


“キーンコーンカーンコーン”

 昼休み終了の合図とともに里中さんは教室に戻ってくる。今までなかった謎の緊張感と教室に充満する重い空気。まえみたいにこれが夢であってほしいと何度思ったことだろうか。

“ガラガラ”

 後ろのドアが開いた。そしてトトトっと軽い足音が響く。教室中にイバラが貼り巡っているように俺らは身動きが取れなかった。俺は悪くない、俺は悪くないと冷や汗をかいている。少しでも動けばトゲが刺さる。だれも傷つきたくないのは一緒で、ただただ見て見ぬふりを続けるしかなかった。触らぬ神にたたりなし。

 里中さんは机の前でぴたりと止まり唖然あぜんとしていた。

「さてと、日直さん号令お願いします」

 周りにあわせて座った里中さんは教科書を取り出そうとカバンに手を入れていた。取り出すものが全部びしょ濡れで、持ちあげた瞬間に破けて落ちた。かろうじて被害が少なかったノートを机に出してカバンを横に置いた。ごめん。本当にごめん。

 ポケットティッシュを取り出して机とノートを拭く里中さん。無表情とその懸命さがかえって痛々しく映る。

「じゃあここを……里中さん読んでください」

「教科書、忘れました」

「ダメじゃない忘れてきちゃ。次からは気をつけてくださいね」

 里中さんの表情は変わることなく凛とした表情だった。背筋を伸ばし、真面目に授業を受ける。どれが真実でどれが偽りなのかまったくわからない。しかしいえることがひとつある。里中さんを救いたい。たとえ彼女がどんな人であろうと、あのとき、あの桜の木下で出会った“景色”を風化させたくない。そうぼんやりと思った。


 授業が終わると里中さんは机に書かれた悪口を一生懸命に拭いていた。それで落ちるのかわからないけど、それでもめげずに拭いていた。周りは不自然なほどに無視をしている。まるで里中さんが最初からこのクラスにいないかのように。

 さっきの女が女子数名を連れて教室を出ようとする。そして里中さんの後ろを通るときに……。


「イギリス帰れよ」


 悪いことに鮮明に聞こえた。それと同時に里中さんの動きが止まった。あの冷静沈着の里中さんが心の内を表すかのようにピタッと止まった。いってはいけない言葉だと瞬時に理解した。周りの雑音が次第に大きくなって里中さんを包み込む。その存在を無視するように時間は流れた。

 取り巻く異質な雰囲気から逃げるように里中さんは立ちあがって廊下に出た。今しかない。そのあとを追った。

 廊下を走り、角を曲がって辺りを確認する。それでも見つからない。階段をさがっても、逆にあがってもどこにも里中さんの姿はなかった。必死で探していたせいで、すでに息があがっている。まったく……情けないな。

「里中さん……」

 諦めなかった。諦めたくなかった。ここで逃げてしまえば一生後悔する。あの日の“景色”を頼りに里中さんを探した。

 学校中を走り回り、先生に注意されながらも必死に探した。それでも彼女は見つからなかった。諦めて教室に戻ろうとしたとき、女子トイレから里中さんが出てきた。

 今しかない。

「里中さん!!」

 振り向いた彼女は持っていたハンカチで手を拭いている。そして特に変わったところはなく仏頂面で俺を見つめていた。自分の胸を掴んでありったけの思いを伝える。

「俺は里中さんを信じたい。変な噂が流れたりしているけど、そんなことする人じゃないって思うんだ。さっきのことも、これからの学校生活もこのままじゃ苦しいよ。もしつらいなら俺が力になるよ。だから……」

「頼るって君を? どうせ教室にいたんでしょ。私のカバンと机があんなふうになるのを傍観していた君をどう信じればいいの」

 胸がきつく締め付けられる。里中さんのいうことは正しい。いい返す言葉が見つからない。あの透き通った青い瞳に見つめられて恐怖を覚えるほど萎縮いしゅくした。それでも引きさがるわけにはいかない。

「それはごめん……でもだからこそ今救いたいんだ。自己満足かもしれないけどあのときできなかったから今やらないといけないんだ」

 なにもいわず、彼女は俺に背を向けて歩き出した。その背中はひどく儚く見える。

「里中さんお願いだ! 話を聞いてくれ!」

 ひたすらに歩く里中さん。

「頼りないのはしってる! けどひとりよりはいいと思うんだ!」

「転校理由ももしかしたら別にあるのかもしれないけど……」

「それでも俺は君の味方だ!」

「だから……」

「……うさいな」

「え?」


「偽善者のセリフなんて聞きたくないんだよ!」


 急に止まった里中さんが振り返った。窓が揺れるほど激怒した。それは今までの清楚なイメージとは程遠く、野蛮やばんで壊れそうなセリフだった。

 度肝を抜かれてその場に立ち尽くす。息が荒い里中さんすら視界に入らないほど俺の脳は取り乱している。頭のてっぺんからスーッと血の気が引く感覚に襲われた。初めて見た里中さんの別な顔。それはどっちが本性なのかとかどうでもよくなるくらいに意外だった。

 はっとした里中さんは早足で教室に戻っていく。怒りを乗せた言の葉は無人の廊下に舞い散っていった。それを見ていることしかできなかった。情けなく目に雫を浮かべていた。なにもできなかったという後悔が胸にたまる。


 * * *


 放課後を知らせるチャイムが鳴った。今日で何回目のチャイムだっただろうか。今日はどうしてこんなにチャイムの音が嬉しく思うのだろうか。なんでこんな目にあうのだろうか。

 掃除係の生徒が道具を持って忙しなく教室中を移動している。それに追い払われるように私は歩く。すると足になにがぶつかった。

「大きいゴミは粗大ゴミだっけ?」

 クラスメイトのひとりがほうきで私の足元にゴミをやり、だれかに聞かせるように話した。でもそれを無視して教室を出る。

「いけすかないビッチが」

 普段嫌がらせをしてくるあの女以外から被害を受けた。クラスの人というのがさらに厄介なところ。今日は“ブラックリスト”の調査をしないで、そのまま帰るのが最善なんだろう。けどまたこのまえみたいにつきまとわれたらたまったもんじゃない。

 ひとまず最寄りのトイレに行って、生徒が帰るのを待つことにしよう。


 カバンの中身は時間が経ってあらかた乾いたけど、教科書やノートは破れてよれているし使い物にはならない。変な液体のせいでカバンがベトベトだ。おまけにこんな綺麗な花まで用意してくれるなんて、まったく律儀なこった。

 カバンの奥からタブレット端末を取り出す。幸い仕事道具は防水加工をほどこしてあるし、軽く拭けば臭いも残らない。そもそも今回の任務のために改造したカバンは部分的に防水加工がしてある。怪しまれない程度かつ精密機械を守れる限度で濡れたり排水をしたりする。

 しかし今回は謎のベタつきと草木の匂いのせいで、カバンをクリーニングするか作り直すかの二択になってしまった。

「七面倒くさい」

 タブレットをぼんやり見ながら今までの諜報成果を整理する。今はこうしていたい。少しは気が紛れる。

 今のところ“ブラックリスト”に関わるサンプルと一致する人はいないし、怪しい行動をしている人はいない。昼間から表立って行動する人なんていないだろうし、“ブラックリスト”のメンバーがそんな容易に捕まるとも思っていない。

 マスターが私にいってくれたあの言葉。もう少し様子を見てからならやってみる価値はありそう。

「それってまじ?」

「らしいよ。なんか噂で聞いた」

 個室の目の前でだれかが話している。ここ数日でよく聞きなれたやつだな。笑い声を交えてキャッキャと楽しげに人の悪口をいう。しかもそれは根も葉もない噂。もしかしたら私と面識すらないのかもしれない。女子高生っていうのはなんでこんなにゴシップが好きなんだ。皆目見当もつかない。

 個室から出るに出れないひとりの女。目の前には見えない大きな壁があった。

 しばらくすると話し声が聞こえなくなった。ゆっくりドアを開けてだれもいないことを確認する。たまらずため息が漏れた。

「それにしてもどうしてあんな噂が広まったんだろう」

 転校してきて間もないというのにヘイトが集まってしまった。しかも見知らぬ人から。情報拡散能力は私より遥かに高い。そのやけに早すぎる展開に少し疑念があった。他学年を巻き込んでいるということはそれ相応に影響力のある人なのか。まさか……。



「あれ、ない」

 帰り際に化粧ポーチがないことに気づいた。もしかしたら教室に置いてきたのかもしれないと思い、引き返すことにした。廊下にはだれもいなく、遠くで部活動をやっている生徒の声が聞こえる。すっかり陽が傾いて廊下には長い影ができている。

 ガラガラっという無機質な音がだれもいない教室に響き渡る。整頓せいとんされた机はとても綺麗に並んでいて、それはまさに芸術だった。

 机の中を探すとポーチがあった。よかった。いたずらされてないか中身を確認したあと、ビニール袋を取り出してポーチが汚れないように包んでからカバンの中に入れた。

「七面倒くさい」

 そういって見た窓の外は黄金おうごんに染まっていた。建物の隙間から漏れる西陽にしびが繊細な温かみを含んでいる。刹那な時間の流れを目に焼きつけていた。

「さ、里中さん!?」

 パッとドアのほうを振り向くとそこには柊木空がいた。気配なんてなにも感じなかったぞ……。昼間のこともあって少し気まずい。さっさと帰ろう。

「ねぇ困っていることあるでしょ。俺に聞かせてよ。きっと役に立つからさ」

 落ち着いた様子で私に話しかけてきた。私が一方的に突き放したのにりずに手を差し伸べようとする。顔に花を咲かせて微笑んでいる柊木空。なにかがおかしい。持っていたカバンを机に置いて、じっと彼を睨む。


「お前はだれだ」


 柊木空は冷静に答える。

「やだなー、俺は柊木空だよ。同じクラスで一緒にご飯も食べたでしょ」

御託ごたくはいい。正体を表せ」

 そういうと不気味に口を釣りあげて笑い出した。さっきまでの温厚な雰囲気が作りあげたもののように一変した。彼は頬骨ほおぼねあたりを掴んでひっぺがすように上に持ちあげた。そこに現れたのは……。

「さすが青いガーネットブルーカーバンクル。私の変装を見破るなんて」

「なっ!!」

 私だった。

 制服は男物のままに、見た目や声は私そのものだった。初めて客観的に自分の声を聞くとなんだかむずがゆくて気持ちが悪い。一体どうなってるんだ。念入りに作り込んで柊木空に化けていたのはまだ理解できる。でもその下にもうひとつ用意しているなんて物理的にありえるのか? 鏡を見ているみたいな錯覚に襲われる。

 動揺してか固まっていると、私に変装したこいつがゆっくりと私に近づいてくる。

「なんで私の異名を……」

「なんでって私は里中アマリリスだからさ」

「ふざけんな!」

 隠していたナイフを取り出し、喉元めがけて思いっきり振った。しかしそれは空振りに終わってしまった。そいつは目の前から消えた。頭を振って左右を確認する。どこ行きやがったあいつ。

「ここだよ」

 耳に伝わる吐息。この私が背後を取られた……。

 全力で振り返り、距離を置くと、そいつの顔は島塚すみれのものになっていた。

「里中さん! そんなものここで振り回しちゃ逮捕されちゃうよ」

 声もしゃべり方も島塚すみれ本人だった。なにより一番驚くべきことはこの短時間でこれだけの変装ができることだ。マジシャンの早着替えとはわけが違う。ひとりひとりにあわせて声を真似ることすらたやすいことじゃないのに、顔や髪型まで用意しているとなるとそのメカニズムは想像すらつかない。

 とりあえずナイフをしまった。ここは学校だし、だれかに見られたら七面倒くさい。警戒を怠らないままそいつに聞いた。

「お前の名前は。なにが目的だ」

 すると謎の変装人間はくるりとその場で一回転してまた私にすり替わる。

「エージェント、そうよんでくれるかな。目的は教えられない」

「エージェント……ということはお前は私の味方か?」

 エージェントと名乗る人物は笑みを浮かべた瞬間、凄まじい速さで移動してまた私の目の前から消えた。声のする方を見ると、今度は教卓に片足を乗せて座っていた。柊木空の姿をして。

「それは君次第だよ。君の行動次第では味方にもなるし敵にもなりうる」

 私を見くだすように不敵な笑みを浮かべている。味方にも敵にもなりうる、そうあいつはいった。私の異名を知っていたことも考えると、シティや“ブラックリスト”に少なからず関係していると推測される。私の任務にとってよくも悪くも重要人物になってしまう。目的がわからない以上、利用しずらい。それにあいつの素顔を知らないのは私にとって不利だ。どうにかしてあいつの情報を……。

「そんな怖い顔しないでよ。それじゃあ俺からささやかなプレゼントをやろう」

 柊木空の格好をしたエージェントは右手を前に突き出した。


“パチンッ”


 エージェントの指鳴らしと同時に教室のすべての窓ガラスが割れた。

「なにがあった!」

 運悪く担任がすぐに入ってきてしまった。教卓のほうを見ても、そこにエージェントはいない。

 担任は度肝を抜かれたように目を丸くしている。私も状況の整理がつかなくて適切な判断ができない。ここで担任を気絶させて逃げ出すか、自分はやっていないと弁解をするか、相手の出方を待つか。

「里中さん」

 目を泳がせていると、担任に名前を呼ばれた。はっとして振り向いた。先生は眉間みけんに山を作ってゆっくり近づくと、優しげな声で「生徒指導室にきてください」といって私を連れていった。廊下を歩いているとき、担任はひと言もしゃべることはなかった。

 そして生徒指導室に着くと教頭と学年主任がやってきて私にこういった。

「里中アマリリス、一週間の停学処分とする」

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