第152話 月なき夜の式典。
「親愛なる我が王国の民よ。みなの知ってのとおり、光の勇者パーティー、【
空に月がない夜。代わりに大量の魔力照明で照らされた王城外壁前の広場。
人々のひしめく中に厳かに老王の声が響き渡り、そして僕たちは前にでた。
整然と居並ぶ騎士団よりも、朗々と語りかける王よりも前、人々を見下ろす城壁の最前列に。
「あれが……!」
「【闇】の勇者……!?」
【耳】をすませば、聞こえてくるのは見渡すかぎりの群衆のどよめき声。だが、それはけっして好意的なものではなかった。
「【闇】の聖剣……!? そんなものがこの王国に存在したなんて、初耳だぞ……!?」
「でも、【死霊魔王】を倒したって……!?」
「けど、【光】が敵わなかった相手を【闇】がなんてありえるのか……?」
「お、おい……! ま、まさか……! 陛下はだまされてるんじゃないのか……!? 本当はその前に【死霊魔王】と戦っていたっていう【
そのざわめきは、どんどんと大きくなっていった。
「勇者不在だったいままでは混乱を招きかねないためいままでみなには伏せていたが、この王国の建国には、【光】と【闇】ふたりの勇者の存在が大きくかかわっており――」
それは、老王が建国の真実について語ってもほとんど変わらない。
それほどまでに強く、深く、根づいていた。人々の【闇】属性への蔑視と疑心暗鬼が。
「ひゃ、百歩ゆずって、仮に勇者だと認めるとしてもよ……!?」
「ああ……! じゃあ【闇】がオレたちの上に立つってのか……!?」
「そんなの耐えられないわ……! 見てよ……! あの褐色の肌……! 【
「けっ……! 恐怖卿、【血染め】なんか恐ろしくて支持できるかよ……!」
「ウィック……! でひひ……! あのちっこい姉ちゃん、立派なモン持ってんなぁ……! 冒険者なんかより、もっと似合いの仕事があるんじゃねえかぁ……? でひひ……!」
……考えが甘かったのかもしれない。【
実際は、王の後見があってすらこれなのだから。
けど、いい。僕たちが、王が、国が認めた勇者パーティーだということは、これで知れ渡った。
それに、このあと予定されている
「こ、こんなの……! おかしい……!」
――そんな失意とある種のあきらめとともに僕が決意を固める中、後ろから僕たちを追い越して、城壁の最前列に騎士の儀礼用衣装に身をつつんだ少女が駆けよった。
それは、いま唯一所在のつかめる元デイブレイクのメンバー、その最後のひとり。星弓士ステア。
『っ! みなさん! 聞いてください!』
その切羽つまったような叫び声が月のない夜空に響き渡った。
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