第140話 【闇】の勇者。
「うむ……! よくぞいった……! ならば、触れるがよい……! ノエル……! この王国のはじまりより伝わりし至宝、【闇】の聖剣に……! 幾星霜を経て現れし、新たなる継承者よ……!」
厳かに老王の声が響く中、壁も床も見えなくなったまばゆく輝く聖剣の間を一歩一歩たしかめるように踏みしめながら、僕は歩みを進める。
目指すは、この【光】に満ちた聖剣の間の中で、そこだけ僕の目に道しるべのように鮮明に浮かび上がる【闇】。
床に突き刺さる青く黒い【光】を放つひと振りの刃――【闇】の聖剣。
「さあ……! ノエル・レイスよ……! 新たなる継承者よ……! いま我らに王家代々待ち続けたその至宝の姿を……! 自らが勇者たるあかしを示せ……!」
歓喜、期待、疲労、哀惜。そのすべてがない混ぜになった老王の言葉が響く中――
「うおおおおぉぉぉ!」
――僕は、ただひとつの思いを胸に、雄たけびとともにその刃を引き抜く。
そう。自らの望む未来をつかみとるために。
「おぉ……おぉぉ……! これが……! 王家代々、待ち望んだ……!」
「王陛下……! 大願の成就、謹んでお祝い申し上げます……!」
「これが……! ノエルの……!」
「すっごく、きれい……! やったね……! ノエル……!」
「ノエル……! 私は、いまこの場に立ち合えたことを心より誇りに思う……!」
「本当は私に、そんな資格なんてないけど……! それでも、おめでとうございます……! ノエルさん……! 【闇】の勇者さま……!」
黄金にまばゆく輝く聖剣の間の中。
僕が握り高々と掲げる、青く黒い【光】を放つひと振りの刃――幾星霜の時を経て、ふたたびその姿をみんなの前に現した【闇】の聖剣。
万感の思いを胸に老王が、黄金騎士が。ただ純粋な喜びを胸にロココが、ディシーが、ニーべリージュが、そしてステアが。
だれもがその鮮烈な姿に目を奪われていた。そして口々に自らの思いを、僕という新たな勇者の誕生を言祝ぐ。
だから、反応が遅れた。
「
狂気に目を血走らせたその男がただ一本残った左腕をかざした。空間がゆがみ、その手に刃が握られる。
「おおぉぉああぁぁぁぁっ!」
そして一瞬で肉薄し、僕の――【闇】の聖剣の間合いの内側へとつめた。
ブレン。元――いや、堕ちた勇者が。
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