第125話 連携。

「拡がり、踊れ! 穿ち、抉れ! 尽く!」


「我は刻み、我はあらわす! その幾千なるかいなを以て、我が敵を塵芥ちりあくた、影も残さず万象一切圧し潰し、無に還せ! 【幾千なるサウザンデッド・亡者の腕オーバーラン】!」


「征くぞ! 英霊よ! 私とともに! はああああああっ!」


「貴様らぁ! 人間がぁ! わたくしをなめるなぁぁっ! 【衆愚なる死霊の手レギオンズ・デスハンドォォッ】!」


 天高く陽が上り、時刻は昼を越え、夕にさしかかり始めたグランディル山の頂の、いまやただの瓦礫跡と化した遺跡にて。


 僕たち【輝く月ルミナス】と【死霊聖魔女王】〝玩弄〟のネクロディギス・マリーアとの決戦。


 僕の【虚ノ鏡フェイタル・ミラー】をきっかけとして、その最終局面が幕を開ける。


 そう。いまこの千載一遇の勝機に押しきれなければ、僕たちの勝利はないという意味での最終局面において。


「はあああああっ!」


「があああああっ!」


 槍斧ハルバードで、呪紋で、黒き精霊の【腕】で【死霊聖魔女王】を狙うその展開は、手も足もでなかったついさっきまでとまさに酷似していた。


「あの邪魔な【手】はあたしがさばくよ! だから、ニーべさん! ロココちゃんも! 狙って!」


「ああ! まかせた! そして、まかせろ! ディシー! はああっ!」


「ぐっ……!?」


「そこ! 抉れ!」


「があああぁっ!?」


 だが、違う。


 さっき僕の動きを隠すためだけに、ただ派手に手数を増やし陽動に徹していたときとは、まるで。


「き、貴様らぁ……! どいつもこいつも、いまいましいぃ……! いま、まとめて斬り殺してや――」


「苛み、縛れ! くびり、ねじれ!」


「――な、がっ!? き、貴様ぁ! わたくしの腕を!」


「よくやった! ロココ! はああ! そこだ! 【焔霊断撃スピリットスマッシュ】!」


「いまだよ! 【クロちゃん】! あんなやつ、ぼっこぼこにしちゃって!」


「がああああぁぁっ!?」


 ときに防御を、ときに攻撃を、からめ手を。互いの役割を入れ替えながら縦横無尽に連携し、パーティーとして、【輝く月ルミナス】として戦うロココたち。


 その連携が、地力でははるかに勝るはずの、だが頭に血が上り憎悪に目がくらんだいまの【死霊聖魔女王】を完全に翻弄する。


 そして。


「はあああっ! 【焔霊突貫スピリット・チャァァジ】!」


「穿ち、抉り、そして貫け!」


「【クロちゃん】! いまだよ! おもいっきりぶん殴っちゃえ!」


「があはああぁぁぁっ……!?」


 一瞬の隙をついて、大技が。青い霊火を全身にまとったニーべリージュの突貫が。ロココの幾重にも重ねた回転しながら進む赤い呪紋が。ディシーの巨大に形成した黒き精霊の【腕】が【死霊聖魔女王】に突き刺さり、その体を吹き飛ばした。



「ぐ……がっ……! このわたくしに……土を……! 許……さん……! 人間……ごとき……が……! こ……い……!」


 地に転がり、その全身を擦り切れさせた【死霊聖魔女王】が這いつくばりながら、唇をわなわなと震わせながら、つんざくような絶叫を上げた。


「来いぃっ……! 憐れで惨めな死霊どもぉっ……! 【死霊行軍デススタンピードォォッ】!」


 ……え?



 その瞬間、遺跡すべてを覆いつくすほどの巨大な黒い魔法陣が浮かび上がり、そして。


 オオオオオオオオオオオオオオ……!


 地の底から響くような怨嗟の声とともに、見渡すかぎりのすべてを埋めつくす、無数の死霊の軍勢が現れた。






♦♦♦♦♦


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