第100話 気に病むことはない。※
「本当にこれで……よかったんでしょうか……」
腹心たる【
少し開けた場所で点在する岩に腰かけ休息をとる【
「あのとき、私たちが矢面に立ってパラッドさんの【光】の盾やマリーアさんの【光】の壁で
まだあどけなさの残る顔を悲痛にゆがめる緑色の短い髪の少女ステアの脳裏によぎるのは、恋人の死体にすがりつく、自分でさほど歳の変わらない少女の姿。
あの場を去る前にはふたたび気丈に戦う意思をとり戻していたその強さを思うからこそ、なんとかしてあげられなかったのか、ステアはそう思わずにはいられなかった。
「ああ。そのとおりだろうね。ステア」
カップの中身を飲んだ【光】の勇者ブレンがそのステアの発言を静かに肯定する。
「だ、だったら……!」
「はあ……。ステア、貴女もわかっているでしょう? わたくしたちが真に戦うべきは【
勇者ブレンの肯定を受けてさらにいい募ろうとするステアを、あきれたように息をついた聖女マリーアがたしなめる。
「へっ! そうだぜ、ステア! ていうかよ! 本来なら、力を温存するために全部
干し肉を豪快に噛みちぎりながら、聖騎士パラッドがブレンにギロリと視線を向けた。ブレンは軽く肩をすくめてそれを受け流す。
「それもしかたないだろう? パラッド。【
「は、はい! ブレンさん!」
【光】の勇者ブレンの煌々と光る金の瞳に見すえられ、ステアがびくりと体を震わせる。
そんなステアから視線を外すことなく、ブレンは右こぶしを高々と突き上げた
先ほど死屍累々と犠牲者たちの転がる戦場で、生き残りの冒険者たちを熱狂の渦に巻きこんだときと同じように。
「あのとき、
「ブ、ブレンさん……!」
真剣な眼差しで熱く語るブレンの言葉に、ステアがいだいた罪悪感に似た感情が、すっと薄れていく――だが、そこで終わらずブレンはこう続けた。
「それに、気に病むことはないさ。どうせ次の戦いで
「……え?」
――いつもどおりの人あたりのいい朗らかな笑みで。
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