第86話 【霊力場(フィールド)】。※別視点

『ギィビャアァァァッ!?』


 ――その断末魔に、ハッと我に返った。ちぎれ飛ぶ屍人グールの残骸が目に入ったことで、槍斧ハルバードを振り終えた自分をようやく認識する。


 ……頭がぼうっとする。どうやら【霊死の黒鎧アニメート・コプス】の生命維持の力で、戦いながら半分強制的に眠らされていたようだ。


 それにしても、ずいぶんと昔のことまで思いだして――


『コレハ驚イタ。マサニ屍山血河シザンケツガ。マサカコレホド早ク、アノ数ノ雑魚ドモヲ討チ払イ、我ノモトニタドリ着ク人間ガイヨウトハナ。ソレモ【獣魔王】ヲ廃シタトイウ、カノ【光】ノ勇者以外二……!』


 ――ああ。そうか。そういうことか。


『ダガ人間ヨ……! コノ我ヲ貴様ガココマデ屠ッテキタ雑魚ドモト同ジニ考エヌコトダ……! 我ガ偉大ナル主、【死霊魔王】〝玩弄〟のネクロディギス様ガ直々二生ミダサレタ腹心ノヒトリタル、コノ【死霊将軍デスジェネラル】様ヲナア……!』


 高く上る太陽が照らすガルデラ山の奥地。


 ガシャリと金属音を立てて、鎧を着た髑髏の巨人が巨大な剣を手に立ち上がる。


 いままでに見たこともないほどの威圧感と、その身にまとう膨大な魔力を見て直感した。ああ。ここが私の死に場所だと。


 ……だが、ただで死んでやるつもりなど、毛頭ない!


『はああああっ!』


 槍斧ハルバードを握りしめると、私は【死霊将軍デスジェネラル】へ向けて突貫した。




『はっ!』


『グゥッ!?』


 胸部にあたった槍斧ハルバードの衝撃で一歩下がった【死霊将軍デスジェネラル】。その巨躯が振るう大剣の間合いの外から槍斧ハルバードをさらに横なぎに振りまわす。


『はああああぁぁぁっ!』


『グッ!? ガゴッ!?』


 私の恐慌騎士テラーナイトとしての特性【威圧】は、【死霊将軍デスジェネラル】相手にも有効だった。


 さすがに死霊系アンデッド魔物の雑兵どものように逃げ惑いなどはしないが、無意識に下がり距離をとる【死霊将軍デスジェネラル】にリーチで勝る槍斧ハルバードで間合いの外から一撃一撃確実にダメージを蓄積させていく。


『グッ……! クッククク……! 妙ナ技ヲ使ウナァ……? 人間ン……! 貴様二近ヅコウトシテモ、ドウシテモアト一歩我ガ間合イニ足リヌ……! マルデ我ガ体ガ、見エナイナニカニ押サレテイルカノヨウニ……!』


 ……気づかれたか。さすがは【死霊魔王】の腹心を名乗るだけのことはある。


 だが、気がついたとしても、私の【威圧】、目に見えない【霊力場フィールド】にそう易々と対処は――


『ソウダナ……! コノ不毛ナ間合イノ探リアイニモ少々飽キタ……! 返礼トシテ、コチラモ技ヲ披露シテヤロウ……! チョウド貴様ガ好キ放題二暴レテクレタオカゲデ、【】ニハ事欠カヌシナァ……!』


 ――【死霊将軍デスジェネラル】がその右手に持った巨大な大剣を掲げ、吼える。


『サァ……! 集エ……! 哀レデ惨メナ死霊ドモヨ……! ソノ怨嗟ト呪詛トトモニ、我ガ剣二……!』


 オオオオオオオオオ……!


 辺りに散らばる私が殺した死霊系アンデッド魔物の残骸から黒いなにかが次々とあふれだし、死霊将軍デスジェネラル】の掲げる大剣へと集っていく。


 いや……!? まさか、これは……!? 私と同じ【霊力場フィールド】!?


 それも、押しのけるのがせいぜいのの私のものに比べて、あんなにはっきりと目に見えるほどに強く……!?


『サア、受ケヨ……! 人間……! 我ガ必殺ノ【死霊滅波デスウェイブ】ヲ!』


 槍斧ハルバードの間合いのはるか外。


 【死霊将軍デスジェネラル】が大剣を横なぎに振り払い、そのまとった大質量の【霊力場フィールド】を私に向けて解き放った。

 

 オオオオオオオオオォォォォォ……!


 ――おびただしい数の、その黒く禍禍しい怨嗟と呪詛の声とともに。





♦♦♦♦♦


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