第84話 恐怖卿。※別視点
『死ね!』
『ギィゴォッ!?』
背を向けた
『死ね!』
『グガバァァッ!?』
背を向けた
『死ぃねぇぇぇっ!』
『ギャイィィィィッ!?』
逃げる
日の高く上ったガルデラ山の奥地。
恐れをなして逃げ惑い、背を向けた
敵と、自らへと向けたその
かち割られた頭蓋骨を、バラバラになった腐肉と臓物を、敵の残骸を踏みしめ休むことなく私は進む。
『死ね!』
鼻につく腐臭漂う返り血が、またひとつ私のまとう黒い全身鎧――ブラッドスライン家に代々伝わる武具にして祖先が王陛下より賜りし家宝【
『死ね!』
だが、かまうことはない。どうせ今日だけではない。すでにこの鎧にも、この身にも、そしてこの魂の奥底にすらけっして消えない無数の血と死臭、そして殺したものの恐怖が染みこんでいるのだから。
『死ぃねぇぇぇっ!』
だから、私はその
……そう。
いまより何代前の王の
かつて起きた戦争で立てた多大なる武勲――敗色濃厚な絶望的な戦場の中でただ独り
いまでもなお根強い【闇】属性への蔑視。おそらく社会の安定していない当時は、いまの比ではなかっただろう。だが、王はそれでも我が祖先をお引き立てくださったのだ。
そのとき王より賜ったのが、家宝たるこの【
その鎧と名を賜って以来、ブラッドスライン家は常に戦場の中にあった。その苛烈なる戦いぶりから、いつしか口さがないものたちから、恐怖卿【血染めのブラッドスライン】などと呼ばれるほどに。
ブラッドスライン家は代々多くの妻を娶り、多くの子をなした。そして、そのほとんどが短命だった。そう、みな戦死したのだ。敗色濃厚な絶望的な戦場の中で。
代々ブラッドスライン家は、我が一族のみに発現したクラス、
そして、幾代もその命と血を犠牲にしながら武勲を立てつづけたブラッドスライン家は、時代時代の王陛下に認められ、いまや押しも押されもせぬ名家としての地位を確立するに至った。
……少なくとも、私はそう信じていた。父と兄が戦死し、あの者たちの会話を耳にするまでは。
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