3章 あたしの救世主さま。
第44話 衝撃。
「おはよう、フェアさん」
「おはよう、フェア」
服飾店【戦乙女】を訪れてから翌日。僕とロココはふたたび冒険者ギルドを訪れていた。
「あ、おはよう! ノエルくん! ロココちゃん! あ! ロココちゃんのその純白のケープマントって、もしかして昨日【戦乙女】で買ったの? すっごく可愛い! ロココちゃんにぴったりだね!」
「……ありがとう、フェア」
ロココの新しい衣装にきゃっきゃとはしゃぐフェアさんと、もじもじとはにかむロココ。
そんな微笑ましいふたりのやりとりに少しだけもうしわけなく思いながら、僕は割って入った。
「はは。フェアさんに褒めてもらえてよかったね、ロココ。ねえ、フェアさん。ちょっといいかな? 僕、フェアさんに聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「え? うん! もっちろん! このフェアさんになんでも聞いて!」
フェアさんが胸の前で両こぶしをグッと握って、カウンターに前のめりになった。キラキラとしたまぶしいまでの笑顔が僕たちに向けられている。
……やっぱり、いいな。こういう裏表のない感情をまっすぐに向けてくれるひとって。
「ありがとう、フェアさん。実は僕たち、あとふたり仲間を探してるんだ。前衛と後衛ひとりずつ。ただし【闇】属性限定で。フェアさんにだれか心あたりないかな? 特にひとりで活動してるひとだったりすると話は早いんだけど」
「あー、それならちょうどふたり……心あたりがあるかな?」
「え!? ほ、本当!? ど、どんなひと!?」
まさか、こんなに早く見つかるなんて……!
「えっと、ひとりはけっこう前に冒険者登録に来て。そのあとは、たまーにふらっと素材換金にやってくるくらいで。もうひとりは確か一週間くらい前にこの【リライゼン】に来たばかりで。あ、ちょうどあそこでクエストボード見てるね」
「え!?」
その言葉に、僕ははじかれたように振り返った。
「えっと、初めてだし、近場で……あ、この討伐クエストなんていいかな?」
そこにいたのは、薄ピンクの髪を肩までで切りそろえた小柄な女の子。ちょっと背伸びをしながら緑色の瞳で食い入るようにクエストボードを見つめている。
全身を覆い隠す薄紫色のローブは、いかにも魔法使いといった格好だ。闇属性ならば、おそらくは
闇以外のほかの属性と違って回復魔法をいっさい使えないかわりに広域殲滅を得意とする攻撃魔法の
まさに、いまの【
よし……!
こぶしを握りしめてグッと決意を固めると、女の子に話しかけるべく、僕は一歩を踏み出した。
だが。
「あ、あのっ!」
「うーん? でも、記念だし、やっぱりこっちのクエストのほうが……? いやいや、でもでもやっぱり……!」
女の子は本当に夢中になって見ているようで、後ろからけっこう大声で話しかけているのにちっとも気づいてくれない。もう背伸びしすぎてほとんどクエストボードにつんのめるような勢いだ。
「ノエル……」
となりにいるロココがくいくいっと僕のコートの袖を引っ張る。
「わ、わかってるから、ちょっと待ってて……!」
しかたない。このままじゃらちが開かないし、ちょっとだけ【声】を使わせてもらおう。
驚かせないように、そ~っと。魔力を絞って……。
『あのっ!』
「わひっ!? あ、あわわ……!?」
だが、そうやって絞ったつもりの【声】でも、目の前のクエストボードに集中しきっていた女の子にはどうやら効果覿面すぎたらしい。
背伸びをしたままビクリと体をはねさせると、大きくバランスをくずして足をもつれさせた。
あ、あぶない!?
考える前に体が動いていた。僕のせいで怪我をさせるわけにはいかないと、とっさに体を倒れる女の子の下にすべりこませ――
「い、いたたた……! わっ!? ご、ごめんなさい! 君、だいじょうぶ!?」
――その結果、僕はかつてない衝撃を味わうことになった。倒れた女の子の体の下敷きになった僕の顔にいまもなお押しつけられた、ふたつのありえないほどの大きさを持つふくらみによって。
「う、うぶむぅ……!?」
……それは、いまにも窒息しそうなほどの。
♦♦♦♦♦
本作を面白いと思って頂けましたら、是非タイトルページで☆による評価、作品フォローや応援をお願いいたします!
読者様の応援が作者の活力、燃料です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます