第4話 誰が自分の人生を生きるのか
「王様、次は何をしたらいいでしょうか?」
「おお、ライトよ。もうさっきお願いしたことは終わったのかい?」
「もちろんです!」
「ライトは本当に素晴らしいな。ちょっと休んでいなさい。次にするべきことを考えておくから。」
「分かりました!」
僕は、ライト。王様の側近をしている。
ずっと前から、王様のもとで働きたいと思っていた。
必死に勉強し、辛い試練に耐え、やっと合格して、王様の側で働いている。
王様は日々、いろいろな仕事をお願いをしてくれる。
それを達成する度に、優しく褒めてくださる。
王様のもとで働くことが、僕の生きる意味になっている。
ある日、僕は王様から、お願いを受けた。
「ライトよ。ある森の中にある、奇跡の花を見つけてきてくれないか。」
「奇跡の花というのは、あの噂の花のことですか?」
「そうだ。よく知っているね。」
奇跡の花というのは、最近街で噂になっている花のことだ。森の奥深くに奇跡の花は咲いている。その花の蜜を飲めば、その人の願いが叶うという。
「分かりました!王様のために、私が必ず見つけて来ます。」
「おお、さすがライトだ。ありがとう。では、頼んだよ。」
僕は奇跡の花を見つけるために、街を出発した。
思っていた通り、簡単に花を見つけることはできなかった。
いろいろな町を巡り、村人に尋ね、情報を集め、実際に森にも入った。
そして、街を出てから1ヶ月が経ったある日。
「あれだ!間違いない!」
やっと僕は奇跡の花を見つけることができた。王様もきっと喜ぶはずだ。
僕は心を躍らせ、興奮が止まないまま、街へ向かった。かなり遠くまできたからおそらく戻るまでに数日かかるだろう。
帰りを急いで、ある町を通り過ぎている時、そこの村人が僕に声を掛けてきた。
「あなたは、ライトさんでしょうか?」
「はい。私はライトですが・・・。どうかしましたか?」
「実は、あなたに伝えなければいけないことがあります。悲しい報告になるのですが、あなたの住んでいた街の王様が1週間前に亡くなりました。」
僕は耳を疑った。
「え?どういうことですか?なぜ王様が亡くならないといけないのですか?」
「詳しくは私も分からないのですが、どうやらライトさんがご出発されてすぐ病気にかかってしまったそうなんです。それが、どうしても治せない病気らしくて・・・。」
「・・・そんな。」
僕はその知らせを受けてから動くことができなかった。なぜ、私は王様のもとにいなかったのか。王様の病気に気付けなかったのか。王様のもとで働くことができないのであれば、もう生きる意味はないのかもしれない。
そんな時、僕は奇跡の花の存在を思い出した。そう言えば、この蜜を飲めば願いが叶うという噂がある。
もうこれに賭けるしかない。
僕は花の蜜の部分を口に咥え、蜜を吸った。
そして、心の底から王様が生き返ることを願った。
しかし、王様が生き返ったという知らせは一向に来ない。
わずかな希望が消え、僕はもう一度悲しみに包まれた。
幾度も涙を流し、生きる意味を見い出せないまま、日々が過ぎていった。
そして、心が奥底に沈み切り、意識が消えた。
✳︎✳︎✳︎
この話を読み、皆さんは何を思ったでしょうか?ライトは王様のために仕え、最後まで王様を想い続けた、素晴らしい人間だと考えたでしょうか。
確かに、そうとも受け取ることはできます。
しかし、私は、そのような考えは、危険な考えだと捉えています。
なぜなら、ライトは他人のために働き、他人がいなければ生きる意味を見失い、命を落としたからです。小説や映画の作品には、他人のために一生を捧げることが素晴らしいことである、というような描かれ方をすることがあります。そこに、美徳を感じる人も多いと思います。
しかし、本当にそんな生き方はいいのでしょうか?
人間は生きる意味を明確にしたい生き物です。そこで陥ってしまうのが、自分の人生を他人のために生きてしまうことです。
私はこのような生き方は、本当の良い生き方とは思いません。
いくら他人のために生きたとしても、他人は自分の人生のために何かをしてくれるわけではないからです。
他人のために生きるのではなく、自分の信念を貫いて生きる。
その中で、出会う人を大切にする。
そういった生き方こそ、人生を本気で生きることになるのではないでしょうか?
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