婚約指輪はありません
私の左手の薬指にはダイヤモンドは光っていない。
もちろん、子供の頃は憧れた。
ティファニーとかカルティエとか、ハリーウィンストンのダイヤのついた指輪を婚約指輪として買って貰うのを。
でも、実際問題、指輪っていらなくない?
旦那さんに何かあったときのために給料三ヶ月分の婚約指輪なんて昔はいったらしいけど。別に何かあっても、私が普通に働いていれば問題ない。
そもそも、そんなに高価な指輪を買って貰っても、売るときはそんなに高い値段にならないと聞いている。
それなら、指輪なんて形で贈与されるよりも共有口座に現金としていれておいてもらったほうが、お互い何かあったときに使えるので合理的だろう。
結婚ってお金がかかりすぎる。
贅沢なものも高級品も好きだけど、結婚という言葉のイメージに必ずセットになる結婚式や指輪というのはどうも自分の価値観や生活にあわない。
ハリーウィンストンの立て爪の指輪なんて人生で何回着けることがあるのだろう。
すごく素敵で憧れたけれど、いざ自分の物になると考えたとき私にとっては必要のないものだった。
流石に結婚指輪は買って貰った。
すごくシンプルで流行とかは関係なく、例え何年経っても売り続けそうなデザインのものを老舗で夫と選んだ。
これは持論なのだが、結婚指輪はなるべくシンプルでいつでも売ってそうなものがいい。
もちろん、二人ための特別なものというのはすごく素敵だ。
でも、結婚指輪というのは毎日身に着ける物だから、万が一なくすこともある。先人達の指輪をなくすエピソードなんて数え切れない。
だからこそ、いつまでも存在しつづけてくれる企業の普遍的なデザインの指輪を選ぶ。そうすれば、いざというとき指輪を買い換えることができる。
夫婦の絆となるものだから唯一無二であってほしいのも分かるが、そんなことよりも指輪をなくしたくらいで夫婦の関係が冷めてしまっては本末転倒だ。
なくしたときは、相手に告げてもいいし、こっそり同じ物を買いにくればいい。
流行のデザインのものを選ぶよりは高めだったが、良い買い物だと思う。
ところで、そんな風にこだわって買った指輪だが、結婚当初から私の左手の薬指で輝くことはめったにない。私が薬指に指輪をはめるのは夫の実家に行くとき行くときくらいだろうか。
仕事をするのに邪魔な気がするからだ。
夫はちゃんとでかけるときは常に着けてくれているというに……。
そのかわり、指輪はチェーンをとおしてネックレスにしている。
指輪と同じプラチナのチェーンを夫がプレゼントしてくれたのだ。
どんな洋服にもあって気に入っている。
ただ先日、職場で未婚と間違われたことがあったので、そろそろ年貢の納め時かもしれない。
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