名字問題

「結婚して、何が変わったの?」

 結婚してから一番ムカついた言葉かもしれない。

「名字くらいですね~」

 と、その場は流したが無性に腹が立っていた。


 一緒に住まない結婚といっても、別に入籍して終わりではないのだ。

 結婚すれば多くの女性は名字を変えることになると思うが(本当は納得してないけど)、そうすると、免許証やら色んなものの名前が変わる。

 本当に面倒くさい。


 というか、名字くらいなんていうけれど、名字が変わるのってめちゃくちゃ大変。


 ああ、そうだ書類だけじゃなくて、印鑑も変わる。

 これもちょっと面倒くさい。

 普通サイズの印鑑(認め印)ならば、百円ショップでも変えるけれど、訂正印は流石に百円ショップにはなかったので結局買ってない。

 あと、電話もしばらくはうっかり旧姓を名乗りそうになるというか、名乗った。

 生まれてから、二十数年そうやってなのって来たのだから当然だ。体に染みついている。


 会社では私のことを旧姓で呼ぶ人、新しい名字で呼ぶ人、さらに新しい名字だと同じ名字の人が社内に複数いるため下の名前で呼ぶ人なんて3パターンに分かれる。

 もう訳が分からない。

 どれも自分を指しているのに、訳が分からなくなった。

 今まではみんな旧姓でしか呼んでこなかったのに。

 大袈裟かもしれないけれど、人って呼ばれ方で変わる。

 なんとなく、呼ばれる名前の人格というのだろうか。

 たとえば、こうやって文章を書くときのペンネームとかネットでオフ会をするときの名前とか、同じ人物のはずなのに、自分の中の気持ちが微妙に異なる。少しだけちがう人間のような気がしてくるのだ。


 それがある日、会社の中で勝手に3パターンに分かれるのだ。

 名字が変わるって結構大変。

 ちなみに、結婚してから何年か経つけれど、今だに旧姓で呼ばれることもある……来年から社内に同じ名字の人が増えるだけでなく、同姓同名の人がいることも判明したので、旧姓に変えるかちょっと悩み中である。

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