一人暮らしのインスタ飯
炊きたてのご飯の上に厚焼き卵と明太子をのせる。
厚焼き卵は切り分ける前のもの。桜卵をふんだんにつかって丁寧に焼き上げられている。余計な焼き目などなく、あくまで滑らかで美しくその肌はしっとりときめ細かい。
逆に明太子も小ぶりのものだが1パックをまるごとのせた。
黒い丼と対比する米は艶やかだ。
これを独り占めできるなんて一人暮らしは最高だ。
私は買ってきて盛り付けただけのそれをパシャリととって一人満足する。
インスタとかに載っているようなお店で食べれば1200円はするだろう。
撮った写真をスマホで確認しながら一人悦に入る。
お米は隣の市にある実家から貰ってきたもの、厚焼き卵と明太子はどちらも地元のちょっと高級なスーパーで買ってきたもの。
手間もお金もさほどかからずに最高のものを口にする。
一人の食事は自由でいい。
会社からほど近いワンルームの部屋も日当たりはよく、買い物も便利だ。
気ままな一人暮らしをできるのも大企業といえるくらいの規模の会社に正社員として入社できたおかげだろう。
就職氷河期とまではいかないけれど、震災後の企業が採用を渋っているときの就職を諦めずに頑張ってよかった。
大学時代の友人達はあきらめて派遣や地元の企業に実家から通うことを選んだなかで、全国転勤がありながらも今の会社に決めた自分の運の良さに感謝する。
別に仕事は面白いわけじゃないけれど、大きな会社特有の安定感と福利厚生の良さのおかげで、同年代の女性と比べて将来への不安はきっと大きく軽減されているはずだ。
一人暮らしだけど、夫がいる。
将来への不安がないというわけではないけれど、こうやって自分の時間を大切にできる。
別居婚、覚悟ができていれば悪くないライフスタイルといえるかもしれない……。
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