白い温泉に浮かんだ黄色い川

千求 麻也

白い温泉に浮かんだ黄色い川

「ではみなさん、こんなふうな乳白色だとか言われる、この温泉のお湯が白く濁っているのは何故かご承知ですか?」

 先生は、みんなと一緒に温泉に浸かりながら、両手で掬った白濁したお湯を見せて言いました。

 生徒の1人が手を上げました。

「この黄色い流れは何ですか?」

 左から右へ鮮やかな黄色い川の流れが出来ています。それはまるで、真っ白な宇宙に現れた天の川銀河のようでした。


「小便だ!」

 練馬区を拠点に活動する、とあるヒップホップグループが好きで「ザ・練」とあだ名を付けられている生徒が大声をあげました。

「ニーが小便したんだ!」

 ニーと呼ばれたのは膝井くんと言って、いつもザ・練にからかわれていました。

 慌ててみんな、我先にと温泉から出ていきます。


「小便ニー! ビタミン摂りすぎションベン濃すぎ! マッキンキンのショベンニー!」

 1人恥ずかしくて温泉から出られない膝井くんに向かって、両手をピストルのような形にしてリズムよく振りながら、ザ・練が大声で言います。


「ショベンニー! ショベンニー!」

 続いてみんなが口々に言い出しました。

 ただ1人、金田くんだけは黙って、気の毒そうに俯いていました。

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白い温泉に浮かんだ黄色い川 千求 麻也 @chigumaya

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