第6話

母に告げてから半年後に結婚式を挙げ、そしてその数か月後に妻が妊娠していることがわかった。

自分の子供ができたことは嬉しい。

それは本当だ。

しかし木梨は当然ながら全力でその喜びを表現できなかった。


子供ができたと知った日に、木梨は金縛りにあい、いつもの通り影が二つ出てきた。

影が言った。

「誠一」

「誠一」

木梨は驚いた。

影の声を初めてはっきりと聞いたのだ。

しかもそれは自分の名前を呼んでいる。

「誰だ」

影が答えた。

「おっ、ようやく返事をしてくれたぞ」

「初めてだ。よかったな」

「だから誰なんだ?」

影が言った。

「俺はおまえのお父さんだ」

「俺はおじいちゃんだぞ」

二人とも木梨の聞いたことがない声だったが、そもそも父も祖父もその声は知らない。

わかったことは、それが若い男性の声だということだ。

父も祖父も二十二歳で亡くなっているから、若いと言えば若いのだが。

「お父さんなの、じいさんなの」

「ああ、そうだ」

「やっと話ができる」

「話って?」

「おまえも気づいているだろうが、俺たちの家計は呪われているんだ」

「ひい爺さんのせいで死んだ人たちによってな」

――やっぱり。

木梨は思った。

父と祖父が言った。

「それを知った俺は息子、おまえのお父さんを助けようとしたんだが、あいつらに追い返されてしまったんだ」

「俺もそれには気づかずに、何もしないままだったんだ。じいちゃん一人で戦わせてしまった。でもおまえは気づいてくれた。よかった、何とか間に合った。おまえもいっしょに戦おう」

「いっしょに戦う?」

「息子の時は、じいちゃん一人で戦った。相手は二人だった。この三人の力は、一人一人はほぼ同じくらいだったが、二対一だったので負けてしまった。だから今度は俺と息子とおまえの三人で戦うんだ。

木梨は聞いた。

「俺も。どうやって?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る