第21話

 昼過ぎまで姉と色んな話をした。

 姉の海外での経験は、俺には新鮮で、とても楽しく聞いた。

 やはり人と話すのは楽しいものだ。

 寛容さ。

 俺は洲鳥に強く当たり過ぎていただろうか。いや、それでも姉を殴っていたことは絶対に許せない。また許してはいけないとも思う。あいつを殴ってやりたいくらいだ。でもあいつにはあいつなりの問題があって、彼も彼なりに苦しんでいたみたいだった。姉は優しすぎるのか、何も考えていないのか、よく分からないが、姉は洲鳥を許した。姉の真意は分からないが、とにかく姉の意思を尊重しようと思う。洲鳥がまた何かしてきたら話は別だが。

 俺も寛容さを身につけるべきなのだろうか。

 姉は那村さんを交えて洲鳥と話し合った。真剣に話をしたらしい。姉は洲鳥の弱さに気付いていたのかもしれない。だから少し彼に寛容になれたのだろう。でも姉もまた強いわけではなかった。だから俺に嘘を吐いた。

 人を論じることができるほど俺は偉くない。ただの平凡な大学生だ。寛容さが大事とか、優しさが大事だとか、そんな説教を人に垂れることができるほど、世間を知らない。またそういう生き方ができるほど強くもない。いつも迷い、いつも悩んでいる。どうしようどうしようと思いながら、部屋の中を歩き回り、結局何もできないことが多い。失敗だらけの人生だ。でも、失敗のない人生なんてないし、もしあったとしてもつまらないだろう。失敗してもいい。とにかくまずは人と真剣に向き合う。ある程度の寛容さを持って。ーそこから始めようと思った。

 もう人見知りだとか、人との付き合い方が分からないだとか、そんな言い訳をしている場合じゃない。

 まずは彼女と、そして柊さんや牛山と、真剣に話し合おう。真正面から。

 俺は今まで人と向き合うのを避けてきた。

 人と話すのが苦手だし、どう接したら良いのか分からなかったから。

 でも、それも今日までだ。

 変わる。

 変わらなければ、ならない。

 陽の眩しさに目を細め、俺はそう決意した。

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