第17話
つまり事情をまとめるとこうだった。
姉と洲鳥は付き合っていた。姉は洲鳥から日常的に殴られており、姉は別れたいと思った。そして日本へ帰国した。
姉が失踪したのは街中で洲鳥を偶然見かけたためらしい。そして思い至ったのだ、洲鳥はアパートの住所を知っているということに。だから身を隠した。どうやらネットカフェに身を隠していたらしい。
洲鳥はアパートに来た。計画上、俺と一度会っておく必要があるからだ。そして少し期間を置き、俺と待ち合わせの約束をした。
洲鳥は自分も誰かに殴られればミサトとのヨリを戻せるという謎の論理のもと、計画を練り、今日の昼に実際に殴られた。協力者は那村が洲鳥を殺すらしいという噂を姉の友達に流した。その友達は今日の朝に電話でその噂について伝えた。噂を流したのは、那村さんに殴られたという信憑性を増すためだ。姉がすぐに那村さんに電話をしなかったのは、姉が那村さんの番号を知らなかったからだ。那村さんは今日姉の友人から姉の電話番号を教えてもらったという。姉が那村さんと電話番号を交換しなかったのは気まぐれだろう。洲鳥はそのことを知っていた。
ちなみに、姉が俺に電話をかけなかったのはいつ洲鳥が横にいるか、姉が把握できないからということと、俺を信用していなかったからだ。俺は嘘を吐くのが下手らしい。それは洲鳥に姉が一度アパートに来た事実を俺が隠していることがばれたことからも分かる。姉は俺が嘘を吐けない事を知っていたのだろう。だから俺に電話で自分は安心だとか、居場所を伝えることはしなかった。
では俺は何故姉に電話をかけなかったのか?それは姉は俺の電話番号を知っているが、俺は姉の電話番号を知らないからだ。姉は俺に電話することはほとんどないが、するときには必ず公衆電話を使った。姉の気まぐれである。
那村さんはたまたま帰国していて、洲鳥の協力者を突き止め、洲鳥の計画を知った。洲鳥を殴り、姉に洲鳥の計画の全貌を教えた。それが俺と洲鳥の待ち合わせ1時間前のことである。那村さんからの連絡を受け、姉はすぐに俺のアパートに来た。そして嘘を吐いて俺を公園に向かわせた。那村さんは俺の顔を知っていて、姉の気まぐれが発動したのだと思い、俺に事情を話した。
以上である。
やれやれ、と言わざるを得ない展開だった。
何故姉は俺に嘘を吐いたのか、アパートに戻った後姉に聞くと、洲鳥に会いたくないし、事情の説明が面倒だからだということだった。最悪だ。那村さんが公園を指定したのはアパートにぐったりした洲鳥を連れて行くと色々と近所に外聞が悪くなる可能性があるからだった。姉と2人で洲鳥をどうするか、検討する予定だったという。でも姉は行かなかった。
結局洲鳥は解放された。那村さんが仲介役となり、姉と洲鳥は話し合ったのだ。洲鳥は今回の計画の頓挫で懲りたようだった。その話し合いに俺は参加しなかったが、俺は姉に洲鳥を警察に突き出そうと何度も言った。でも姉はもういいと言って聞かなかった。洲鳥も反省しているようだし、と言うことだった。
やはり色恋は面倒なものである、というのが今回の教訓だろうか。
いや、実際には教訓と呼べるほどのものはないのかもしれない。
考えてみると、色々と粗のある計画である。洲鳥は思い込みが激しそうだし、それは仕方がないだろう。まあ、結局姉の不可解な行動がこの計画を立案しようと思う理由になったのだろう。ちなみに、姉と洲鳥が暮らしていた海外とは、ヨーロッパのことで、アメリカではない。まあ、しかし、偶然の導きにより、最悪の事態は防がれたようだ。
一つの問題が一応の解決を見た。しかし俺には次なる問題が待ち構えている。
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