第142話 人の心①
◆
あれから慎二達は机に着くと文化祭の出し物に付いて話し合っていた。
司会は美波がやってくれていて、それを慎二含むクラスメイト達が聞いていた。
さっきまで床に伏していた村上も今は皆と同じ様に机に着いている……何やらぶつぶつと呟いているが、それは他のクラスメイトも分かっているが今はそっとしとく事にして触れないでいる。
(村上君、吉野さんと結城さんの言葉が相当効いたのかおかしくなってないと良いけど………)
慎二はそんな村上を心配しながらも今は美波の話を聞きながら、夏休み前とは違う教室内を、綺麗になった机を触りながら見回していた。
そうそう、机と教室と言えばで思い出したけど、今回の夏休み前にこの1年「F」クラスの教室の内装や工事を業者に頼んでリフォームしてもらったんだ。
今慎二が思った通り教室は変わっていた。
皆は覚えているだろうか?ここ桜田高校の特殊なシステムを「クラス分けのシステム」についてはどうでも良いと慎二達は思っているが、他にある「貢献度」のシステムによってこの1年「F」クラスは夏休みの期間を費やして見違えた。
今回教室を新しくする為に活躍したのが慎二だった。
元々慎二は部活と連動して「人助」をする事により「貢献度」を貯めて自分達の教室を建て替えようとしていた。
だが、それが良い方に運び今では沢山の依頼者や相談者が慎二達を訪れてくれて依頼を達成していくごとに凄い勢いで「貢献度」が溜まっていったのだ。
これは別に意図したことでは無かったが自分達の教室が綺麗になる事に慎二を含め、クラスメイトの皆は喜んでいた。
そんな事があり、今は普通の学校の教室より綺麗な内装に早変わりしていた。
そんな事を嬉しそうに考えていた慎二だったが、変な事を考えているのがバレて美波に小言を言われるのが嫌だったのか、先程美波に言われた事を考える事にした。
まず、文化祭の出し物より先に決める事があった……それが文化祭実行委員なるものだった。
「今美波が司会らしき事をしているからもう決まっているのでは?」と、思うかもしれないが、文化祭実行委員には実行委員とそれを補佐する役目である副実行委員なるものがあるそうだ、なのでそれを誰にするのかが難航しているのだ。
最初は他のクラスメイトから「結城さんで良いのでは?」と出たが……美波から「女子ばかりにやらせないでアンタらも働きなさい!」というごもっともな言葉をもらってしまい、誰に副実行委員を押し付けるか男子の間でバトルが勃発していた。
それはそうだ、誰しもそんな面倒臭い事はやりたくないのだから。
ただ、そんな決まらない状況に煮えを切らしたのか美波がある人物を立候補する形で名前を挙げた。
「………決まらないなら、もう慎二で良いでしょ?」
と、慎二の名前をあげるのだった。
が、本人はやりたくないのか立ち上がると嫌だと抗議をする事にした。
しっかりと理由もつけて。
「吉野さん、僕は今回はパスしたいなぁ〜なんて……ちょっと部活の方で文化祭の警備もするかもしれないし」
ただ、その慎二の言葉に………
「………かもしれないでしょ?なら何も問題は無いでしょ?」
そんな事を言うのだった。
(いや、問題あるでしょ!)
そんな言葉を言ってやりたかったが、慎二は穏便に済ますことにした。
「いや〜やっぱり僕は厳しいかなぁ?ほら、もっと適任な人がいると思うしさ!」
「………じゃあその適任の人は誰なのよ?言いなさいよ?」
「いや…えっと……そのぉ〜」
美波に言われた慎二はそこまで考えていなかったのか口籠ってしまった。
その様子を見ていた美波は「はぁ……」とため息を吐くと慎二の弱味を突く様な言葉を言うのだった。
「慎二、さっき村上と変な事をしていたわよね?あれを忘れて欲しいなら副実行委員になりなさい……別にそんな仕事がある訳じゃないんだから」
「ぐっ!!…でも……そうだ!推薦なんてどうだろうか?僕も別に候補で良いからさ!」
それでもやりたく無かった慎二は悪足掻きをする様に推薦なんて言い出した。
でもその言葉に美波も乗ってくれたのか。
「分かったわ、慎二の言った通り推薦で決めるわよ、嫌がっているのに決めつけるのも良くないものね」
と、言ってくれた。
(良し、これなら大丈夫かな……まだ候補ってだけで決定した訳じゃないし………)
慎二はそう思っていたら、美波が推薦の仕方を皆に伝え出した。
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