第131話 閑話 村上正吾育成計画⑥
◆
公園では沢山の子供達が遊んだり、その親御さん達が楽しそうに話していたが、慎二達の周りは暗い雰囲気が漂っている。
その状態のまま近付き公園にいる人達の邪魔になりたくないから出来るだけ人が居なく、日陰になっている場所を探すと近くにあったベンチに腰掛け、村上に何があったのか慎二は聞く事にした。
「村上君、言いたくなかったら別に言わなくても良いけど……何があったの?最後の別れ方は尋常じゃない様に見えたんだけど………」
慎二がそう聞くと村上は顔を上げて今日あった事を話してくれた、その内容は………
「前田……俺は騙されたんだ…騙されたんだよ!?」
と言い、慎二の肩を掴むと揺らして来た、その村上の行動が分からなく慎二は困惑してしまった。
「いきなり何!?ちょっ……落ち着いて!一旦落ち着いて!」
「………ああ、悪かった……さっきの出来事がフラッシュバックしてな……いてもたってもいられなくて………」
暴走していた村上は慎二に言われ、少し冷静さを取り戻したのか普段通りの村上に戻り先程あった事を話し出した。
「………多分前田も見ていたと思うが、俺達は途中まで良い雰囲気になっていた。だが……大野……小柄な方のギャルが、そいつが最後にス○バに行こうと言った事でおかしくなった………」
「うん、そこまでは僕も見ていたよ?その後はどうなったの?」
慎二もそこまでは見ていた為次の言葉を待つ事にした。
「正直俺はス○バなんて行った事も無いから嫌だったが、そこで断って場の雰囲気を悪くするのも嫌だったから俺は行く事にした。注文を頼んで皆で席に着き人心地ついた所俺はある決心をした、今まで優しくしてくれたもう1人のギャル……遠藤の事を良いなと思っていた俺は友達以上の関係……要するに彼氏・彼女の関係にならないかと話を振ろうとしたら………」
「………したら、どうなったの?」
さっき頰を叩かれていた瞬間を見ていたからこの後何が起こったのかは、なんとなく慎二もわかっているが、本人から聞きたかった為問いてみた。
そしたら、村上は下唇を引きちぎるんじゃないかと言わんばかりに唇を噛み憎々しげな顔をすると話し出した。
「したら、いきなり俺がいるのに目の前で大野と遠藤が話し出したんだよ、遠藤の彼氏の話を!!」
「お…おう………」
何となくは気付いてたけど…村上君………
慎二は哀れなものを見るような目を向けていたら、村上は座っていたベンチから立ち上がり熱弁しだした。
「普通するか?俺がいるんだぜ?なのにあいつらと来たら……彼氏の何処が良いかとか話出しやがって……挙げ句の果てには俺に彼氏にあげるプレゼントは何が良いか聞いて来やがって………なーにが「あーしの彼ピにあげるプレゼント一緒に選んでちょ?」だ!舐めてんのか!……はぁ…はぁ………」
「………‥」
遠藤の真似?をすると言いたい事を言えたからか荒い息を吐きながら村上は慎二の事を見てきた。
その村上の目は「お前もこの気持ちを分かってくれるよな?」とでも言いたげな目を慎二に向けていた。
えっ?この場合なんて言えば良いの?ドンマイ?次があるよ?……何言っても面倒臭くなる運命しかなさそうなんだけど………
それでも慎二は何か答えないといけないと思い一応慰めの言葉をかけることにした。
「まあ、村上君、今回は運が悪かったって事じゃ無い?それに他の2人、愛香と大野さんはどうなの?」
慎二がそう聞くと少し拗ねたようにそっぽを向きボソッと話した。
「慰めの言葉なんていらねぇよ……それにそんなの既に聞いてるわ、2人共好きな人がいるんだってよ、俺の入る余地なんて無さそうだわ」
「そう………」
うわぁー、もう僕にはこの状況はお手上げだよ……誰か恋愛マスタープリーズ!
バカな事を慎二が考えていたら、村上が「でも」………と話し出した。
「でもな……俺は今回の事である事を知れた、ギャルはビッチだとな!!!これで証明された、ギャル=ビッチ説がな!!」
変な事を言っている村上を止めようと慎二も話しかけた。
「いや、皆が皆そうじゃないでしょ、それに今回はたまたまかも知れないし「その考えが甘いんだよ!」……えぇ………」
慎二は村上の短絡的な考えを正そうとしたが、その考えが甘いと言われてしまい、口を噤んでしまった。
そんな慎二を見ると村上は話し出した。
「甘い、甘すぎるぞ前田!お前の考えはメープルシロップより甘い!俺みたいに蜂蜜のように粘り強く何事にも柔軟に考えないといつか足元を掬われるぞ?」
村上はドヤ顔で慎二に伝えて来た、どの口がそう言うと言いたかったが。
(うざい…うざいけど……ここで何か言ってもややこしくなるだけ………)
と、思い村上の訳の分からない解釈は触れないことにしといた。
「わ、分かったよ、それでこれからどうするの?まだギャル?を恋人にしようとしてるの?」
「なわけあるか!もうギャルなぞ見たくないわ!……俺はやっぱり普通の恋愛が向いてるようだな……清楚な彼女が1番だな!」
「………‥」
慎二の言葉を否定してそんな事を宣った。
そんな村上に、なら最初からギャルなど選ばずに普通に恋愛してろと言いたい慎二だったが、その言葉は心の隅に置いといた。
「じゃあ、もう解散で良いの?」
慎二がそう聞くと………
「ああ、今日は解散で良いぞ?だけど明日また俺の彼女探しをやるぞ!」
「今日は」の所を強調して明日もやると言ってきた。
その言葉に慎二は本当に嫌そうな顔をした。
「村上君、流石に何も成果が出ない事はやりたくないよ?何か考えがあるなら別だけど………」
今日と同じ様な感じは勘弁願いたいよ、愛香から後でなんて言われるか分からないし………
この後の事を考えうんざりしていると村上が気色の悪い笑い声を出し、こんな事を言ってきた。
「ふふっふふふっ!前田、俺を見縊るなよ?何も考え無しで明日また彼女探しをするんじゃあない、ちゃんと策はある、だから大船に乗ったつもりでいろよ!」
「………期待してるよ」
そんな事を慎二は言ったが一切期待などしていない。
むしろ「泥舟の間違いだろ?」とでも言ってやろうと思っていたがもう今日は疲れたのでツッコミは明日でもいいかと思って、今日は別れる事にした。
「明日またやるって言ってるけど、何処に集まるの?因みに僕の家は駄目だね……一度吉野さん達が来ておかしい事になっているから、また同じ事が起きたらたまったもんじゃないからね………」
慎二はしっかりと自分の家で集まるのは駄目だと理由も入れて先に伝えておいた。
それを聞いた村上は少し考えたいた。
「そうなのか?じゃあ桜田高校の旧校舎の裏門でどうだ?あそこだったら誰も来ないし好都合だろ、そこで作戦会議をする!!」
「はぁ……分かったよ明日また集まるよ」
「おう、そうしてくれ!」
そう言うと慎二と村上は別れる事にした。慎二は慎二で、愛香に「今日は済まなかった」と言うメッセージを送っといた。
「明日…マジで嫌だな……雨降らないかな?」
そう良いながら慎二もさっさと自分の家に帰る事にした、今日の出来事で疲れてしまった慎二は帰ると夜ご飯もそこそこにしてチルとお風呂に入るとそのまま就寝してしまった。
◆
「チクショーー!!女はマジでゴミだ!!やっぱり2次元しか勝たん!」
「………村上君……」
村上の魂の叫びが桜田高校の旧校舎中に響き渡った、それを残念なものでも見るように見ている慎二の姿があった。
(えっ?何があったかって?そんなの簡単だよ……村上君の策(笑)が尽く失敗しただけだよ?それでなんか二次元?2次元?がいいー!なんて叫んでいるだけだね、まあ、こんな説明じゃ分からないと思うから順を追って簡潔に話すよ)
慎二は村上に聞こえないように心の中で呟くとさっき起こった事を思い浮かべていた。
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まず、慎二と村上は昨日話し合った通り朝の9時に桜田高校の旧校舎の裏門に集まり作戦会議?を2人で行っていた。
慎二は村上が昨日何か策があると言っていた為、何も考えていなかった。
だから村上が何か考えてきたのだろうと思い村上が話すのを待っていたらなんとYouT○beをやろうとほざき始めたのだ。
まぁ、直ぐに却下を入れるのも可哀想だと思いちゃんとYouT○beをやろうとした理由も聞いたさ、そしたらなんて言ったと思う?……彼はこう言ったのさ「俺レベルになればYouT○beなんて簡単さ!これで全世界の女子がこぞって俺の所に来るはずだ、今の時代は自分から行くのではない待つのさ?」………なんて言ってきた。
その言葉を聞いて慎二は素で「は?」って答えていた。
皆も同じ気持ちだと思う。
待っても誰も彼女になってくれなかったから自分から彼女を探しに行ったはずなのに「何矛盾した事してんだよ、このカス!」って言ってやりたいのは山々だろう。
でも今回は村上も本気みたいなのでこのままやらせようと思った。
YouT○beの件は完全に村上が舐めているだけなので許してあげてほしい。
そんなこんなで慎二と村上は桜田高校駅前に集まりYouT○beの動画の作成をする事にした。
でもそこでトラブルが起きた、まず村上は動画を撮るのに自分のスマホを使おうとしていた、それは良いのだが動画を撮ろうとした瞬間何故かヤンキーに絡まれる村上。
慎二はその場面を村上を助ける事なく自分のスマホで動画を撮っていた。
最終的に村上がどうなったかと言うと……村上が自分の財布から五千円をヤンキー達に渡して動画は終わった。
その時に「チッ!シケタ野郎だな」や「使えな」と散々と言われていた。
慎二は慎二で良い動画を撮れたと思っていたが、村上が「そんな動画投稿出来るわけねぇだろ!?」と泣きながら怒ってきたので動画の投稿は渋々諦める事にした。
そんな事があり村上はYouT○beを直ぐに諦めてしまった「じゃあこの後はどうするの?」と慎二が聞いたら「何も無い」と村上が答えた為……慎二は呆れて帰ろうかと思ったが「ある、一個だけある!!」と言って慎二の腕を掴んできたのでそれを最後に村上と一緒に慎二もやる羽目になった。
その内容が……ナンパだった。
流石に慎二は無理だろと思ったので「前やって散々だったじゃん、やめようよ」と言ったのだが、村上は聞く耳を持たず決行する事になってしまった。
結果から言うと村上の惨敗で終わった。
ここだけの話だけど……何故か慎二は女性達に逆にナンパされていたが、それを見た村上は今にでも呪い殺そうとする目を向けてきていた。
その後に村上が「どうすれば俺に彼女が出来るんだ………」とぶつぶつ喋っていて一緒にはいたくなかったが、いきなりヤケでも起こされたら溜まったもんじゃ無いので一緒に駅前をうろちょろしていた時、村上はある物を見つけたのかその場で止まってしまったので、慎二も止まって村上が何に惹かれたのか見てみた。
その村上の目を惹いた物が……「アイドルプロジェクト」という可愛らしい二次元のキャラ達が載ったスマホアプリのポスターだった、それを見た村上は「………可愛い……コレこそが俺が求めていた嫁だ!」なんて言い出したのだ。
彼女じゃなかったのかよ、とかいうのは村上クオリティーなので触れないであげて欲しい。
それよりもこの「アイドルプロジェクト」というアプリは現在進行形で慎二もハマってるゲームだ、勿論慎二がやってる理由は声優の声が好きだという理由もあるが、中のキャラが可愛いという理由も多分にある。
この「アイドルプロジェクト」というスマホアプリはかなり人気で、キャラの声優達が現実世界で本物のアイドルとしても活躍しているらしい、慎二は今はそれは興味が無いのか知らないらしいが。
でもそんな事があり村上は二次元の道に行ってしまったという。
◆
なので冒頭でもあった「2次元しか勝たん!」とか言う訳の分からない村上の発言が出たのだ。
「前田、お前もやれ!ほら一緒に、2次元しか勝たん!はい、リピート、アフタミー!」
「………やらないよそんな恥ずかしい事」
興奮している村上にいきなり振られた慎二は心底面倒くさそうにいなしていた。
が、村上はそんな慎二の態度が気に入らなかったのか怒り出した。
「前田、なんだその態度は?全く……それじゃあちゃんとした2次元の信者になれないぞ?」
「誰もそんなもんになろうとしてないわ!」
流石の慎二も勝手に信者判定されている事にツッコミを入れた。
「ふぅ、まぁ良いさ、前田もあの時俺と一緒に2次元にハマっとけば良かったと思う日が来るだろう、その時を俺は楽しみに待ってるぞ!」
「………そんな日は多分訪れないと思うけどね」
慎二の言葉にも今の村上は何も効いていなかった、逆に村上は清々しい顔をしていた。
「前田、これだけは言っとく、2日間手伝ってもらって悪かったな、後は自分で同士を見つけて更なる高みを俺は目指すぞ!!」
「あぁ、うん、頑張って」
やっと終わるよ………
慎二が安心していると、本当にこれで終わりのようで村上は「じゃあな!」と言いながら駅の奥にある電気街に走っていってしまった、その光景をただぼんやりと慎二は見ていた。
「なんか最後は呆気なかったな……まぁ、村上君もやる気が出たみたいだし良いとするか……面倒くさいのは愛香に借りを2つも作った事だよね、何とかなるか」
もう、本当に慎二は昨日と今日の出来事で疲れ果ててしまったのか後の事は明日からの自分に任せる事にして帰路についた。
余談だが、結局夏休みの間に愛香と2回違う日に遊ぶ事になり、何故かそれが雪と穂花にバレてその後に4人で遊ぶ事になった。
それを知った守も「俺も遊びたかった!」と騒いでいたが、雪達の「黙れ」という一言で守は静かになった。
恐るべし女子の圧。
村上はどうなったかというと、正直今の慎二には分からなかった。
あの後から「カフェ・ラッキーバード」にも顔を出さなくなったのだ。
その事にマスターの馬場も心配していたので慎二は村上にメッセージを仕方なく送ったら「今はグッズを買う為にアルバイトを始めてる」と書いてあったのでその事をマスターにも話したら安堵していた。
そんなこんながあり夏休みは過ぎていった。
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