第129話 閑話 村上正吾育成計画④




 瞬く間に時は進み待ち合わせの時間も近付いていた為結菜達に友達と遊ぶ事を伝えて待ち合わせの桜田高校駅前に慎二は向かう事にした。


 勿論家を出る前に結菜達に「女性の友達と会うが自分の男友達に紹介するだけ」だと伝えた。


 以前何も伝えないで生徒会の皆と遊んだのがバレて酷い目にあったので同じ轍を踏まないように最新の注意を払って向かう事にした。


 愛香と村上にも今から待ち合わせの場所に行く事は伝えてある。


 村上もしっかりとメッセージに反応したので大丈夫だと思い、桜田高校駅前が見えやすい位置まで来て愛香達と村上が合流するのを待っていた。


(自分が会う訳じゃないのに緊張してきたな……しっかりと村上君は対応出来ると良いけど………)


 慎二が心の中で村上について考えているとその本人がぎこちない動きで待ち合わせ場所の桜田高校駅前の時計下に丁度今きた所だった。


 村上の服装は白色の無地のプルオーバーシャツを着てその上から黒色のジャケットを羽織っていた、下は黒スキニーパンツを履き、清潔感を出す為か白色のスニーカーを履いていた。


 髪の毛は来る前にセットしてきたのか寝癖は一つもなくピシッと決めていた。


 慎二はそんな村上を見て「やれば出来るじゃないか!」と感心していた。


 そんな村上とは別の違う道から愛香とその友達だと思われるいかにも「ギャルです」という2人が村上に近付いていた。


 愛香達の服装はとても似合っていて可愛いのだが……皆が想像するであろうギャルの格好をしていた、愛香だけは少しはマシだが、どっち道ギャルギャルしていた。


 愛香達の服装を見ていた慎二だったが、早速愛香達と村上が接触して喋り出したので耳を済ませて4人の会話を聞く事にした。


「どもー、私は佐藤愛香です!恐らく慎二から聞いていると思うけど今日はよろしくね!」


 愛香の言葉に他の2人も乗ってきた。


「ヘェ〜、愛香が紹介したいって言ってた子ってこの子なのねぇ……まっ、及第点ってとこかな?ちな、あーしの名前は遠藤梨奈ね〜」


 村上の顔と服装を下から見ていた遠藤と言った長身のギャルはそう伝えた。


 そんな遠藤の言葉に反応したもう1人のギャルは。


「プッ!梨奈!!及第点とか上から目線で何様って感じでマジウケるし………」


 何が面白いのか腹を抱えて笑い出した。


 村上はその光景を見て自分も「もう自己紹介しても良いのか?」とオロオロしていたが、今まで笑っていたギャルが村上に向き直ると自分の名前を伝えた。


「メンゴ、メンゴ!ちっとツボにハマってね……あたしの名前は大野桃だよ、よろ〜」


 少しおちゃらけた感じの大野という小柄なギャルはそう村上に名前を伝えた。


 ようやく村上の自己紹介の番に来たが何も喋らない為、愛香達はどうしたのか見ていた。


 勿論それは慎二もで。


(まさか、村上君ここで緊張して動けなくなったとか?どうする?助けに行くか………)


 そう考え出した慎二だったが、村上はなんとか挨拶をした。


「ご、ごめん!ちと皆が美人過ぎて緊張してね、てかマジ美人だよね?」


 村上のその言葉に3人は少し照れていた。


 慎二自身も村上の滑り出しは「とても良いのでは?」と思っていた。


 が、そんな上手く行くはずがなく。


 愛香達3人は村上が自己紹介をするのを待っていて、ようやく村上が喋ると思ったら。


「俺の、俺、お、おおおお、おお………」


 と言って「お」しか言わなくなってしまった。


(ちょっ、村上君!?何ロボットみたいになってるのさ!周り見て、周り!変な物でも見るような目を向けてきてるから!)


 そんな慎二の心の声が聞こえたのか?いつもの様に村上は喋り出した。


「お、俺の名前はチョモランマ村上だ!」


 と。


(おい、全然緊張してるじゃないか!何がチョモランマ村上だ!売れない芸人みたいな名前するな!)


 慎二は今すぐでもツッコミを入れたかったが、入れられない為その場でサイレントツッコミをしていた。


 ただ、その村上の緊張から出た言葉が功を成したのか村上以外は笑い出した。


「あはははっ!チョモランマて……待ってお腹痛い!」

「ぷぷっ……名前は村上君だと思うけど、中々ぶっ込んでくる子だね」


 愛香と遠藤は村上の言葉にウケていた。


 それは大野もで、本当にツボにハマったのか大笑いをしていた。


「ちょっ、村上……君っ……君いいね!」


 そんな中、慎二は変な雰囲気にならなくて本当に良かったと心から安心していた。


 村上は村上で自分が言った言葉にウケたと分かり、少し緊張が和らんだのか自分の名前をその場のノリで伝えた。


「ごめん、少しウケ狙ってやってたわ!俺の本名は村上正吾、今日はこんな美人な皆と遊べて嬉しいよ!」


 村上がそう自己紹介をすると愛香達とワイワイと話し出した。


 それからは村上の発言が少し危ないと思った時、愛香もチョイチョイフォローをしてくれたお陰か何とか村上は他のギャル達と普通に喋れていた。


 慎二も後ろから着いて行き様子を見ていたが中々良い雰囲気だと思っていた。

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