第120話 一期一会①





 その後、慎二達は最後の会話をする為に1人ずつ渚と話す事になった。


 初めは雄二だった。


「渚さん、俺は短い時間ですが、あなたと色々話してきました。今まで本当に友人がいなかった事が冗談かの様に感じる程、楽しく渚さんと過ごせて友人になれて嬉しかったです」

「僕もだよ雄二君、最初は少し君の顔を見て萎縮しちゃってごめんね?」


 渚のその言葉を聞いた雄二は少し照れ臭そうに花を掻く。


「そんな事もありましたね……俺は昔からこんな強面のせいで誰とも仲良く出来ませんでした、でもそんな中慎二は俺を1人にしなかった、皆の中に溶け込ませてくれた、そして今俺はここで渚さんと仲良く出来ている」

「そんな事があったのか、慎二君はそういう人だもんね」

「そうですね……最後になりますが、俺と友人になってくれてありがとうございます」

「僕もだよ、仲良くしてくれてありがとう」


 渚と雄二はそう話し合い握手をすると次に控えていた由紀と変わった。


「………なんか、こう向き合うと何を喋れば良いか浮かばないですね………」

「そうだね……でも由紀君最初は君の事を女性と勘違いしてしまいすまなかった、あの時は本当に女性と思ってしまったよ………」


 渚は本当に申し訳ないと思っているのか由紀に少し頭を下げた。


「良いですよ慣れているので、それに慎二君も最初は僕の事を女性と間違えていましたからね」

「慎二君もか!」

「そうなんですよ……でもそんな慎二君だから皆は彼の元に集まるんだと思います、僕もその中の1人なんです、慎二君は本当に凄いんです」

「わかるよ、彼は凄い、だから僕も彼と直ぐに仲良くなれたのかな………」


 由紀飲んで話を聞いた渚は同意する様に頷いた。


「ですね……渚さん、最後になりますが僕と友人になってくれてありがとうございます………」

「僕の方こそさ、慎二君をこれからも支えてあげてくれ」

「はい!」


 渚と由紀は握手をしあい分かれて、服部と交代をした。


「渚さん、僕は口下手なのでそんなに良い話は出来ないかもしれないですが……友人になってくれてありがとう……ございます」

「僕の方こそさ、それにハトケン君はそんなに口下手じゃないと思うよ?僕が知らない事を世界を、色々教えてくれたのが本当に嬉しかった。だから、ありがとう」

「………そんな事ないですよ……でも、そう思ってくれてありがとうございます。僕と友人になって下さって、ありがとうございます」


 そんな服部のいつも通りの姿を見て渚は笑顔を見せた。


「こちらこそ、僕と友人になってくれてありがとね?……君の知識を情報で慎二君をこれからも助けてあげてくれ」

「はい……僕がやれる範囲は必ず」


 渚と服部はそう話し合い握手をすると次に控えていた村上と変わった。


「あぁー、渚さんこんな俺と友人になってくれて本当にありがとうございます。俺はバカなんでそんなに良い話とか出来なかったかもしれないですが……楽しかったです!」

「僕の方こそさ、正直に言ってしまうと君とあった時、話した時一番話しやすかったんだよ?僕の周りに君みたいな人がいなかったというのもあったけど、とても話しやすかった」


 その話が意外だったのか村上は少し驚いていた。


「………そうですか、渚さんにそう言われてありがたいです……それに俺も前田と友人になってからはそんなに長くないと話したかもですが、あいつは本当にいい奴です、なんでこの後あいつと話す時は渚さんの気持ちを全部言ってやって下さい、あまり長くなると前田も伝えたい事をしっかりと伝えずに終わるのは嫌なんでこれで終わりにしますね、今までありがとうございます!」

「君のそういう優しさがとても心地良かった……僕の方こそ友人になってくれてありがとう」


 渚と村上はそう話し合い握手をすると最後に慎二と入れ替わり、渚の前に慎二が現れた。


「………‥」

「………‥」


 どちらとも最初何を話せば良いか分からなくて無言になってしまった。


「なんか、こうして向き合うと言葉って中々出ない物ですね………」

「そうだね、君に言いたい事も話したい事も沢山あったけど……慎二君の顔を見たらそんな考えも何処かへ行ってしまったよ」


 渚がそう言うと二人とも笑い合った。


「そうですか……渚さんは………その、この後怖く無いですか?もう、時間が無いと言っていましたし………」

「僕も怖いよ……でもそれよりも今は幸福が勝っているからこの後直ぐに僕が亡くなっても受け入れるだろうね……でも慎二君達が僕が亡くなった後悲しむと思うと……複雑な気分になるね………」


 渚はそういうと少し悲しそうな顔になり慎二を見てきた。


「そうですか………」

「うん、でもねそんなに僕はこの状況を悲観などしてないし、悲しいとも思ってないんだ」

「それは、どうしてですか?」


 慎二が聞くと返事をする前に少し間を置いてこう伝えてきた。


「だって、きっと僕達はまた出会うと思うからさ……慎二君は生まれ変わりって信じてる?」


 渚に言われたので少し考えてしまった慎二だったが、直ぐに答えは出た。


「生まれ変わり……ですか?そうですね、あるのだったら僕は信じたいですね」

「そうだね、僕も信じたい。最初は僕もそんなに信じてはいなかったけど、慎二君と会って神様の話や奇跡が本当に起こる事を知った時この世界にはまだまだ未知な事が沢山ある事を知った、だから生まれ変わりだってあってもおかしくないと思えたんだ、そうだと思わないかい?」


 そうだ、この世界はまだ謎が沢山ある、だか、生まれ変わりだってあってもおかしくない。


「そうですね、生まれ変わりだってあるはずですね」

「うん、だから僕はさよならなんて言わないよ?だってきっと必ず僕らはまた何処かで出会うだろうからね、だから忘れないでくれよ慎二君?」

「忘れる訳……ないじゃないですか……これは僕と渚さんの約束ですよ?」

「ああ…約束さ……ゔっ!」

「渚さん!?」


 渚はそういうと少し苦しそうにしていたので慎二はもしかしたらと思い近寄った。


 だが、渚は苦しそうな顔をしながらも慎二の行動を手で止めた。


「大丈夫……じゃないけど………最後まで……言わせてくれ…今に始まった事じゃない…この痛みは慣れてるからね」


 痛みを我慢しながらも渚は慎二を安心させるように笑顔を向けて来た。

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