第118話 友人と幸せ①




 慎二達は今回タイムカプセルを掘り起こす為に手伝ってくれた人々にお礼の挨拶を回っていた。


 ほとんどの人が「無事人助が出来たなら良かったよ」と言ってくれた。


 後3日間何をやろうかと話をした結果、慎二は雄二達に渚を紹介して夏の最後の思い出を作る事にした、もう既に渚との時間が少ないのを分かっていたのだから。


「汐留渚です、君達は慎二君の友人達なんだってね?僕も君達と仲良く出来たら良いな」


 渚の言葉に雄二達も自分の自己紹介をし出した。


「俺は木村雄二と言います、渚さんと俺も慎二の様に仲良くなりたいです」

「僕は木之下由紀、歴とした男ですからね?勿論僕も渚さんとお友達になりたいです!」


 雄二と由紀が自己紹介をすると、雄二の時はなんとも無かったが、由紀の自己紹介で渚が驚いていたのはご愛敬。


「僕の名前は服部健太、よく皆からはハトケンと呼ばれているので友人の証として渚さんにはそう呼んで頂きたいです」

「俺の名前は村上正吾、まだ前田達とは友達になったばかりですが、こいつらが良い奴らなのは俺が保証します!勿論俺とも友達になって下さいね?」


 と服部と村上も渚に自己紹介をした。



「うん、皆と仲良くしたいよこれから短い時間かもだけどよろしくね?」

『はい!』


 渚の言葉に皆よく通る声で返事をしてくれた。


「皆、自己紹介を出来た様だね、なら何で遊ぼうか?」


 慎二がそう言うと、これから何をしようかや渚さんは何をしたいなど親睦を深めていった。


 その後は雄二達も渚と直ぐに仲良くなる事が出来て色々な事で遊んだ、でも慎二達は気付いていた、日に日に体調が悪くなってきている渚の事を。


 千里浜町の滞在期間が後1日となった頃、慎二達と渚は病室内で話していた。


「皆ごめんね、せっかく仲良くなれたのに僕の体の調子が良くないから前みたいに外では遊べそうに無いよ……もしかしたらもう…僕も近いの、かもね………」


 渚のその言葉に慎二達は何を言って良いかわからなかった、慎二は一応今の渚の状態を皆に話していたので雄二達も渚が何のことを今言っているのか直ぐに分かった。


 鈴村も言っていた、渚は21歳までしか生きられないからいつ倒れてもおかしくないと、だから今を楽しく生きてほしいと。


 渚さん……自分でも分かってるんだね……でも最後に楽しい思い出を作りたい。


 そう思った慎二は渚に聞いてみる事にした。


「渚さん、最後に何かその、やりたい事とか夢だった事をしたいとかありますか?出来る限り僕達で叶えますので」


 慎二の言葉に他の皆も頷いて渚を見た。  


「やりたい事か……夢か………」


 真剣に考えているのか下を向いて考えていたが、少し経つと頭を上げて慎二達を見ると少し微笑むと。


「もう…何もない、かな?……だって友人達とこうやって楽しく過ごすって言う夢が叶ったんだからさ」

『っ!』


 慎二達は渚の言葉を聞き時が止まった様に動きを止めたと思ったら、涙を流しながら渚に抱きついた。


「ちょっ!皆!?」


 渚は皆の行動に驚いていた。


「僕だって渚さんは大切な友人ですよ!」

「俺だってそうだ!もっと色々な事をして遊びたかったさ!」

「僕もだよ、でもそれももう叶わないんだもんね………」


 慎二と雄二と由紀が渚に抱きつくと泣きながらそんな事を言った。


「そうだよ……人生は何があるかわからないと言うけど……こんなのはあんまりだ」

「だから……俺達に出来る事があるなら渚さんの為にやりたいんだ……俺はバカだから何が良いかなんてわからないけど……何もないなんて言わないでくれよ………」


 服部と村上も泣きながら渚に自分達の思いを伝えていた。


「皆……本当にありがとう………僕だって本当は海で遊んだり、花火を見たり、祭りだって言ってみたかったんだ。でもそれも叶わない、それでも僕は最後に君達と出逢えて良かったと、そう思っている」

「渚さん………」


(何か無いか……最後に思い出に残る事……そうだ、前宗一郎さんに聞いたっけ、この町は1度だけ星が綺麗に見える日があると……その日は今日じゃないか!)


「渚さん、今日は一旦僕達は帰ります。ただ、また夜来ても良いですか?」

「?……別に良いよ?慎二君達と話すのは楽しいからね」

「わかりました、また来ますので必ずこの場所で待ってて下さいね?」

「分かってるよ」


 慎二は渚にそう念を押すと雄二達を引き連れて病室を後にした。


 雄二達は慎二がこの後やろうとしている意図はわからなかったが、慎二の事だから何かやるのだろうと思い何も聞かず慎二の後を着いてく事にした。


 病院から出た慎二は雄二達を振り返った。


「皆、恐らくだけどもう渚さんは長くはない……だから今日の夜一夏の思い出を渚さんにプレゼントする」

「それは俺達も分かっている……だが、何をプレゼントするつもりだ?」


 プレゼントはもう決まっている。


「渚さんにあげるものは……この町そのものだよ」

『?』


 慎二が言った言葉の意味が分からなかったのか皆は疑問符を頭の上に上げてしまった。


「まあ聞いてよ、渚さんはさ僕達と会うまで友人と呼べる人達がいなかった、それに誰も自分の事を心配してくれる人がいないと思っていたらしい。だから今日の夜に渚さんを心配している人が僕達だけじゃなかったって言う事を証明するんだ、この町の人達は皆良い人達ばかりだ、きっと応じてくれると思う」

「そう言う事か、なら今から俺達でこの町を回ってその話をこの町の住んでいる人達に伝えれば良いんだろ?」

「そうだね、もう時間も無いけど……皆やってくれる?」


 慎二がそう聞くと何を今更と軽く了承の返事を皆してくれた。


「ありがとう皆、じゃあ今から取り掛かろう、今が14時だから18時までには皆渚さんがいる病室に待ち合わせをしよう」

「了解!」

「任せて!」

「承知した」

「任せろ!」


 それぞれ返事をしてくれた。


 慎二達は話し合いが纏まるとそれぞれ千里浜町の町に渚の事を話しに行く事にした。

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