第111話 昔の後悔と今の期待②
◆
森下は18歳ぐらいの時から周りの柄の悪い仲間とここ千里浜町で悪さをしていた。
周りの人達はそんな森下達を何度も注意しても聞かない為放置していた。
そんな時、慎二の祖父の前田義慈がこの町に来た。
悪さをしている森下達を義慈は何度も何度も叱ったがそれでも結局森下達は更生しなかった。
そんなある夏の日、森下達が自分達のたまり場で焚火をしていたら、仲間の1人が虫が嫌だと言い火がある場所でスプレーを使ってしまった、そんな事をしてしまったら誰でもわかると思うがそのスプレーの液に火が引火してしまい引火してしまった火は周りに飛び散りちょっとした火事を起こしてしまった。
当時はまだ学生だった森下達はその状況にパニックになってしまい、何も出来ずただ火が広がっていくのを見ている事しか出来なかった。
だが、流石にこれはヤバいと思った森下は大人にこの話を伝えに行ったが誰もその話を信じてくれなかった、今まで悪さをして大人達の話を全く聞かなかった森下達を嘘をついていると思ったのか聞く耳を持ってくれなかった。
そんな時、義慈が来て話を聞いてくれた、義慈は他の大人達とは違く自分達の話を真剣に聞いてくれて火事になってしまった場所に一緒に来てくれた、火事の現場を見た義慈は直ぐ様に消防署に連絡を入れると自分の体に水をかけて中に取り残されている森下の仲間を救ってくれたそうだ。
その後はその話を聞きつけた他の大人達が救急車を呼んだりしたおかげで全員軽症の火傷だけで済んだが、この事件を起こしてしまった森下達は初めて人の話を聞き自分達が悪かった事を皆に謝りに行った。
大人達は叱ろうと思ったが、しっかりと反省している森下達を見てこれからはやらない様にと言うだけで許すことにした。
森下達はもっと怒られると思っていた為なんでそんなに簡単に許すのか聞いてみたら、義慈がこう話を通してくれたという……「まだ彼等は子供だ、自分達の失敗を後悔をちゃんと理解している、なら怒るよりも立派な大人になる様に皆さんで彼等を見守ってあげてほしい」と言ってくれたから怒る気にもならなかったと周りの大人達は言っていた。
その話を聞いた森下達はどれだけその言葉を言われて嬉しかったか、泣きながらもう今までみたいな事は絶対しないと約束した、それからは義慈が町に滞在している期間ずっと付き添い義慈の元で色々と学んだという。
その時に森下達が頑張ろうと思った事が「人助」だ、義慈が言うには自分1人が人助をしても1人じゃ結局やれる事は限られている為、何も為せないと言った、その話を聞いた森下達は「なら自分達があなたのその夢を実現させる」と言い義慈と別れてからも人助をしている、それからは森下はここ千里浜町に残り他の仲間は他の町に移り人助をしているという。
「………とこんな事があってな、慎二君のお爺さんの義慈さんは俺達の命の恩人でもあるんだ、そんな人の孫に会えて俺は、本当に嬉しかった………」
森下はそう話を終えると泣きながら慎二の手を取り「ありがとう、ありがとう」と何度も伝えてきた。
「そう、だったんですね、話を聞けて良かったです」
「俺の方こそだよ、話聞いてくれてありがとな、時間も遅くなっちまうし由比ヶ浜さんの所まで慎二君を連れてくよ、こんな時の為にヘルメットを2個用意してあるからこれを使ってくれ」
そう言うともう一つのヘルメットを慎二に渡してきて後ろに乗ってくれと言ってきた。
「すみません、ではお願いします!」
「おう!しっかりと俺の腰に掴まっててくれよな!」
森下はそう言うとエンジンをかけて走らせた、慎二も乗せてるからか安全運転で宗一郎の家まで向かってくれた。
「わぁーー、バイクって乗った事なかったですが、なんかこの風を切って走る感じがいいですね!」
「だろ?人はそんなに乗せられないが自由に走れるのが良いよな!もう少しスピード上げるから舌噛まない様に気をつけてくれよ?」
「わかりました!」
スピードが上がったバイクは慎二を乗せて目的地まで運んでくれた、そんな中慎二は………
(バイクって良いな〜昔も乗った事無かったけど、カッコいいしこんなに気持ち良いのか、今度免許取ってみるかな………)
バイクに揺られながらそんな事を考えていた、慎二が楽しんでいると直ぐに目的地まで着いたので下ろしてくれた。
「到着したぞ慎二君、バイクの乗り心地はどうだった?」
「最高でした!それにここまで連れて来てくださってありがとうございます!」
「そか、今後も何かあれば頼ってくれよ?……その一応義慈さんの弟子とかではないが…兄の様な存在として……な?」
森下は照れ臭そうにそう言って来た。
兄か……いれば哲也さんみたいな感じなのかなぁ………1度あの言葉を言ってみるかな。
そう思った慎二はこの言葉を森下に伝えた。
「わかりました、哲兄!」
「哲兄か……照れ臭いが慎二君にそう言われるとなんか嬉しいな!」
少し恥ずかしそうにしていた哲也だったが慎二の言った名前に嬉しそうにしてくれた、もっと話したかったが空も暗くなっている為連絡先を交換して別れることにした。
「哲兄、また話しましょう!」
「おう!慎二君こそ何かあれば、いや何もなくても頼ってくれよ!」
哲也はそう言うとバイクを走らせて帰っていった。
「………さあ、僕も皆にこれからやる事を話すかな、その前にあの人に連絡を入れとくか」
そう呟くと今回助けてもらう人物に連絡を入れた。
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