第110話 昔の後悔と今の期待①




 ただ、カッコつけて病院を後にした慎二だったがガムシャラに走ってきた為、帰り道が分からなくなっていた、そんな慎二は病院から少し離れた路地で黄昏ていた。


「………どうしよう……ここが何処かわからないし、あんな感じで病院を後にしたから戻るなんて恥ずかしくて出来ないよ「真実の目」で帰り道を見ようとしたけど今日は力を使い過ぎたせいなのか頭が痛くて上手く使えそうにないし………」


 どうしようか1人考えてしまった。


 そんな時、遠くからバイクのエンジン音が聞こえた為バイクが近付いて来てると思ったので路地の横にズレて邪魔にならない様にしてこれからどうするかまた考えようとしていたが、その近付いてきたバイクが慎二の目の前で止まった様な気がしたので顔をあげることにした。


 そこには250ccの黒色のネイキッドバイクを止めて慎二に近づいてきてるヘルメットを付けた男性?がいた。


 ん?僕に何かあるのかな?知らない人だよね?


 慎二がそう思っていたら、その男性?に声をかけられた。


「よう、少年そんな所でどうしたんだ?かなり顔色が悪そうだけど大丈夫か?」

「あっ…えっと……」


 いきなりヘルメットを付けた男性に声をかけられた為、なんて答えたらいいか分からなくて戸惑ってしまった。


(声が男性だから、男の人だよね?僕の事を心配してるだけみたいだから、しっかりと答えないと)


 そう思っていたら何を勘違いしたのか目の前の男性がヘルメットを外してこう言ってきた。


「悪い、悪い、ヘルメット付けっぱなしだったな、俺は別に怪しい奴じゃないぞ、それに体調も悪そうだしいきなり声をかけて悪かった!」


 ヘルメットを外した男性は40代ぐらいの男性だった。


「いえ僕の方こそ少し戸惑ってしまっただけです、心配して下さりありがとうございます」

「いやいいんだよ、それより体調は大丈夫か?」

「少し頭が痛かっただけなので大丈夫だと思います」

「そうか、なら良かったよ!」


 本当に心配してくれていたのか、慎二の言葉を聞くと人の良さそうな笑みを向けてきた。


 慎二はそんな優しい人なら道を教えてくれるかな?と思い聞いてみることにした。


「あの、体調は大丈夫なのですが、ちょっと道に迷ってしまったらしくて……迷惑じゃ無ければ道を教えてもらって良いですか?」

「ん?君はこの町の住人じゃ無いのか?」

「はい…僕は………」


 慎二はこの男性に自分がこの町に2日前に来たこと、用事があり病院に来ていてたら道に迷ってしまった事をかいつまんで話すことにした。


「そうだったんだな、よし、なら俺がこのバイクで由比ヶ浜さんの所まで連れてってやるよ、何回か行ってるから道はわかるからな!」

「流石にそこまでして頂くのは………」


 申し訳ないと思っていると。


「子供が気にすんなって、それにこの町は少し田舎って事もあって助け合いが当たり前だからな、そうだ俺の名前言ってなかったな俺は森下哲也、この町で「人助」をしている人間だ」


 と言ってきた。


(人助をしている?……気になるけど僕も名前言わなくちゃ)


 人助という言葉が気になった慎二だったが、相手だけに自己紹介をさせるのは失礼だと思い、自分挨拶をする事にした。


「わかりました、甘えさせて頂きます、僕の名前は前田慎二です」

「………前田……?」


 慎二が自分の名前を言った途端目の前の男性、森下が慎二の名前を聞き返してきたのでどうしたのか聞こうとしたらこんな事を言われた………


「………違かったら申し訳ないのだが、君のお父さんかお爺さんに前田義慈さんと言う方はいるか?」

「え?」


 そう聞かれたのだ。


(なんでこの方が僕のお爺ちゃんを知ってるんだ……わからないけど自分の祖父だと伝えよう)


「………はい、僕の祖父です、今はもう亡くなってしまいましたが、前田義慈は僕の祖父になります」

「ーーーっ!……そうか、それにもう亡くなってしまったのか………」


 森下はそう言うと残念そうな顔をしたが、直ぐに慎二を見てきた。


「今時間があれば少し俺の話、いや、君のお爺さんの話をさせてもらっても良いか?そんな時間は取らないからさ」


(お爺ちゃんの話を……時間はあるし聞いてみるか)


 慎二も聞いてみたかったので、聞かせてもらう事にした。


「時間は大丈夫なので聞かせて下さい」

「分かった、なんか前田君と言うのもあれだから慎二君と呼ばせて頂くよ、まず俺は昔この町で悪さをしている悪ガキだったんだ、その時君のお爺さんの義慈さんと出会った………」


 森下はそう言うと昔の話を聞かせてくれた。

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