第101話 ナンパは計画的に②





 その後は村上に「人様にあれだけ迷惑をかけるなと言っただろ」と説教をしたが、自分がナンパに失敗したのが納得いかないのか慎二にもやれと言ってきた。


「ほら前田もやって俺と同じ気持ちになれよ……それに俺に吐瀉物をかけたのは忘れてねぇぞ?」

「ぐっ!……そう言う事だけは律儀に覚えなくていいんだよ……わかったよ、やるよ!やればいいんでしょ!」


 慎二のその言葉を聞くと満面な笑みになった。


(うぜぇーー!そんなに仲間が欲しいのかよ………)


「でも、僕は今までナンパなんてやった事ないよ?村上君の真似しろと言われるなら絶対やらないからね?」

「そんな事は言わねぇよ、俺の「パット落ちていました」作戦は前田にはまだ早いだろうからな」


(何が「パット落ちていました」作戦だ!そもそも成功してないだろうが!)


 慎二が心の中で叫んでいると村上からナンパの心得とやらを聞かされる羽目になった。


「そこでだ、前田にはナンパの心得を伝授しようじゃないか、俺みたいなナンパのプロだと簡単に声をかけられるが、前田は厳しいだろ?」

「まあ、初対面の人はね………」


(村上君はナンパのプロでは無いと思うけどね……)


 思った事は口には出さず話を聞く事にした。


「そうだろ、それを今前田に教えよう、これをマスターすればお前も俺の仲間になれる!」

「あ、うん」


(誰が仲間になるか!)


「まず暇そうにしている女性を狙え、それも人数は1人〜2人がベストだ、後は何かきっかけがあれば……女性なんてイチコロよ?」

「………村上君は失敗してるけどね……」

「俺はいいんだよ!話を変えるな、今から前田に今言った通りやってもらうからな?」

「はぁ、わかってるよ約束だからね……ただ成功すると思わないでね?」


 念の為村上には釘を刺しておく事にした。


「んなのわかってるわ、何でも挑戦だから行ってこい!」

「嫌だなぁ〜」


 慎二はそう言いながらも約束は約束なのでナンパをする為に村上から離れると浜辺に行く事にした。


(成功なんてしなくていいんだもんね、ならさっき村上君が言っていた事は守るけど後は適当にやろう………)


 慎二はそう頭の中で思い、暇そうな人を周りを見て探してみる事にした。


 したが、そこで気付いたことは実際自分がいる周りを見てみるとそんなに1人でいる人が少ない事がわかった。


「直ぐに見つからないのか……他の人も出来るだけ1人にならないようナンパ対策でもしてるのかな?」


 そう考えながらも探していたら、大きな広場があり、そこでは自分と同い年ぐらいの男女がワイワイ騒ぎながらビーチバレーをしている所だった。


(ぐわっ!……これがリア充の遊びか……僕には無理だな………)


 ビーチバレーをしている光景を見て絡まれたら嫌だから関わらないようにしようと離れようとしたら……ビーチボールが慎二の所までコロコロと転がってきてた。


 そのボールを気付いたら拾っていた。


 ボールを拾ってしまった慎二の元に女性の声がかけられた。


「そこの君〜ボール拾ってくれてありがとうね!」

「ああ…うん…これ転がってきましたよ」


 そう返事を返し、ボールを返そうとした慎二だったがふと気づいた……この状況はナンパいけるんじゃね?と。


 そう考えた慎二の行動は早かった。


 目の前の同い年ぐらいの少女をナンパのターゲットしようとした、ただナンパは成功したくなかったので適当な事を言ってこの場を回避しようとした。


 目の前のいかにもスポーティーな女子に笑顔を向けると出来るだけ好青年に見えるように話しかけた。


「へぇー、君ビーチバレーしているんだね!スポーツしている女子ってカッコいいよね!」

「あ…ありがとう……」


 そんな慎二の言葉に目の前の少女は少し照れてしまったのか俯いてしまった。


 慎二はその態度に行けると思い畳み掛ける事にした……ただし、ふざけながら。


「そんな君と僕は遊びたい!どうだい?今から2人で近くのスポ○チャに行かないかい?」

「………えっ?……スポ○チャ?」


 慎二のいきなりの誘いに戸惑いを隠せず聞き返してしまった、だがそんな事は知らんと言わんばかりに慎二は畳み掛ける。


「そう、スポ○チャさ!学生ならわりかし安い値段で一日中遊べる、お金も勿論僕が持つ、どうだい?僕と今から行かないかい?」

「いやでも……今皆と「聞け!」は、はい!」


 少女は慎二に「今友達と遊んでいるから厳しい」と言おうとしたらいきなり大きな声で聞けと言われた為、その先を言えなくなってしまった………


 そんな少女の心情など知らずに慎二は喋り続ける。


「ストラックアウトを筆頭に色々な遊べるゲームがある…どうだい?……僕と一緒にスポ○チャ……行かないか?」

「………‥」


 そんな慎二の言葉を聞くと問われた少女は下を向いてしまった。


 その少女の様子を見て慎二はほくそ笑んだ。


(ふふふっ、どうだ!こんなふざけたような事を言っている奴と遊ぶ奴なんていないだろ?これならナンパも必ず失敗する筈だから、早く辞められる!)


 しかし慎二はそう思っていたが、相手はそうじゃなかった様で、何故か熱に浮かされた様な顔を向けてきたと思ったら………


「………はい、スポ○チャで一緒に遊んで下さい!」

「………‥」


 と頭を下げてそう言って来た………


(行くんかーい!何で一緒に遊ぼうとするのさ!そこは普通「訳のわからない事言わないで!」とか「気持ち悪い!」って言って何処か行くパティーンでしょ!……これどうする?)


 慎二が頭の中で焦りながらどうするか考えていると、さっきまで楽しそうに慎二の事を見ていた村上が突如突っかかって来た。


「前田!何故だ、何故お前は成功している!お前……俺に嘘を付いていたのか?ナンパのプロなのに隠して俺を嘲笑っていたのか!」

「違うわい!僕だって成功するなんて一欠片も思ってなかったよ!……何故か成功したけどね!」


 慎二と村上が口喧嘩をしてしまったから放置された少女は戸惑っていた。


「えっと……どうすれば?」

「ああ、ごめん!今の事は忘れて下さい!ちょっとこのバカと話し合いがあるので!では!」


 慎二は瞬時にナンパをした少女にそう言うとビーチボールを返して村上を連れて服部が待つ海の家に戻る事にした。







 そこで本当にナンパなどした事がなくたまたま運良くナンパが成功した事を村上に丁寧に話したらやっと納得してくれた。


「納得はしたが…納得はいかねぇ……」

「結局どっちなのさ……」


 慎二はその時思った、もう絶対ナンパなどしないと……


 その後は大分日も落ちて来た為、放置していた雄二と由紀をお姉さん方から回収して海の家でぐったりとしている村上を回収してから千夏の祖父、宗一郎達が待つ家に戻る事にした。


 家に戻ると来た時はいなかった千夏の祖母という妙齢の女性、琴と自己紹介をして皆で夜ご飯を食べる事になった。


 そこでは今まで慎二達がやってきた「人助」の話や、千夏の昔の頃の話など聞けた、話も終わりお風呂に入るかとなった時、宗一郎から話を振られた。


「今日海を見て来たなら、明後日になるが俺が経営している海の家「水鳥の休憩場」に来てくれ、明日でも良いんだが皆をもてなす準備がまだ出来ていないからな」

「宗一郎さんったら皆が来てくれたから張り切っちゃって、ふふっ」

「たまには……いいだろ?」


 宗一郎の話に琴が反応をして話し合っていた。


「お爺ちゃんとお婆ちゃん、私も手伝いするからね!」

「ありがとね、千夏ちゃん、他の皆は明後日何か用事とか無いかしら?」


 琴に話を振られた為、代表として慎二が応える事にした。


「はい、明後日は宗一郎さんの海の家に顔を出しますね、その間はこの町を見て回ったり、人助をしたりします」


 慎二がそう言うと、宗一郎と琴は分かったと頷いてくれた。


 その後は直ぐに順番にお風呂に入り、長旅で疲れていると言う事もあり早めに寝る事になったが……慎二が海水浴場に来なかった理由と罰ゲームの事を皆が聞いて来た。


「前田、約束通りナンパは一緒にやったが、俺達に飲み物を奢るのは変わってないからな?」

「分かってるよ、それぐらいで駄々を兼ねたりしないさ」


(僕をなんだと思ってるの………)


「慎二、奢りの件は置いといて、海水浴場には来るのが遅かったが何かあったのか?」


 慎二が村上と話していると雄二から遅かった件を聞かれた。


「ああ、皆が僕を置いて走って行ったから、もう追いつけないと思ってさ景色でも見ながらゆっくり行くかと思ったら少し気になる人がいてね、その人はこの町に元々住んでいる方なんだけど、話してみたら意気投合して戻るのが遅くなっちゃったんだ」

「ふーん?まぁ、遅くなった理由がちゃんとあるなら別にいいんだがな」


(納得してくれたみたいだね)


 皆聞きたい事を聞けたと思い寝るかと思った時、まだ話があるのか村上が聞いて来た。


「もしかしてその気になる人って女性じゃないだろうな?……だとしたらお前に死を!」


 今にも飛びかかってこようとしていた村上に皆と逸れた後の話をする事にした。


「違うよ!今日話していた人は男性だよ、今度皆も逢えたら話してみるといいよ」

「………なら良いが、前田が人と会うと言うとどうしても女性と会ってると思っちまうんだよな……」


 それは偏見でしょ、僕だって知らない男性と話だってするよ。


 慎二はそう思っていたが、村上のその話を聞き、雄二達はその話わかるとでも言うように頷いていた。


「………‥」


 ………僕はなんだと本当に思われているのさ………


 その後はもう話をする内容もなかった為、慎二達は就寝した。

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