第100話 ナンパは計画的に①

 

 その後、慎二と渚は意気投合して話し合い、すでに2人は名前で呼び合う程の仲になっていた。


 だが、そんな楽しい時間も長くは続かず慎二は皆と合流しなければいけない為、別れる事にした。


「すみません渚さん、一緒に来ている友人達を待たせているので、海水浴場に僕は行きます、また会えますか?」

「良いんだよ、それに友人は大切にした方がいい…僕みたいに……いや…楽しんできてね!……うん、僕はここで絵を書いていると思うから何か話があれば来てくれればいると思うよ」


(今渚さんは何を言おうとしたのだろうか?まだ会ったばかりだからそんなに聞けないし、また会えるって言ってるから今度聞いてみるか)


 渚の言葉に違和感を覚えたが、また今度聞けば良いと思い今回は聞くのをやめた。


「わかりました、またここに来ますね!その時はこの町の事も渚さんの事ももっと教えて下さいね!」

「うん、約束するよ」


 また出会う事を約束して2人は別れた、慎二はもう30分程も皆を待たせてしまっている為走って目的地まで向かう事にした。







 ようやく海岸に着いたので周りを見たら、何処までも続くような真っ青な海、太陽の日にあたり光り輝く白い砂浜が敷かれた上に人々が沢山いる光景だった。


 その光景に感動していた慎二だったが皆を探さなくてはいけないと思い周りを見回したら……直ぐに皆を見つける事が出来た、何せ雄二と由紀が目の前で逆ナンされていたのだから。


 かなりカオスな状態だった、雄二と由紀はお姉さん方に逆ナンらしき物をされている、その場面を近くで嫉妬の目を向けて見ている村上、何故か鼻血を撒き散らして片膝をついている服部と……正直言って近付きたくない集団になっていた。


 周りの人達も遠くから何があったのか見ている為、それも加わり尚更近付きたく無かった。


(僕が来ない30分ぐらいの間に何があったっていうんだよ……仲間だと思われたくない………)


 慎二はそう考え遠くから見ながらどうしようか考えていたら……村上が慎二の方に振り向くと近づいて来た。


 村上は近付くと共に慎二の肩に手を置くと雄二と由紀に忌々しい物でも見るような目を向けながら話しかけてきた。


「前田、やっと来たか……随分遅かったが、今はそんな事はどうでもいい……見ろよ?奴ら俺らを差し置いて逆ナンなんてされてるぜ?………〇すか?」


 村上は逆ナンされている雄二と由紀に親指を向けるとそう言ってきた。


(いや、物騒過ぎでしょ!)


「流石にそれは出来無いよ、ほら雄二と由紀は顔が整っているから女性が寄ってくるんじゃないかな?ならここは僕達なりにナンパをして成功させるしか無いんじゃないかな?」

「………それもそうか、よく言った前田!俺達の本気を見せてやるぞ!服部は既に戦力外だからまずは俺が行ってくる、前田は俺の勇姿を見てな!」


 村上はそういうと持って来ていたサングラスをかけると慎二の返事を聞く前に1人で戦場(ナンパ)に行ってしまった。


(一応変な事をしようとしていたのは防げたけど……僕の話を間に受けてナンパに行っちゃったよ……まあ最初からナンパが目的だったから何も言えないけど………)


 止めようにも既に村上が女性に話しかける所だったので何故か瀕死状態の服部と共に物陰に隠れて様子を見る事にした。


 村上が声をかけた女性達は女子大生だ、女子大生は7月末〜8月の初めで学期末テストが終わる為、テストが終わった開放感に浸って来る人が多く、浮かれている大学生が多いという、それを知ってか目の前の女子大生をターゲットにした筈だ、それにスタイルもいい為多分村上は狙ったのだろう。


「そこのオッパ……んんっ!……女性の方達、今これ落とさなかったですか?」


 女性に声をかけると村上が掌の中の物を見せた、そこには女性が胸を大きく見せる為のパットがあった。


「「………えっ?」」


(おい、今完全におっぱいって言おうとしてたぞ……それになんてもん見せてんだよ!そんなの落とすわけないだろ!)


 そんなツッコミを入れたかったが話しかけたら自分も同類だと思われる為、丁度近くにあった海の家の影から救出して来た服部と見ていた。


「これを落としたのはお姉さん方ですよね?」

「いえ…違いますが……」


 村上の言葉に律儀に答えてくれるお姉さん方だったが、完全に嫌そうにしていた為慎二は止めたかったが、やはり同類だと思われたく無くて動けなかった。


(村上君…それはまずい…今すぐその場から撤退せよ)


 一応村上にアイコンタクトを取り「戻ってこい」と伝えたら頷いてくれた為慎二は様子を見る事にした。


 慎二からアイコンタクトを受け取った村上はその場を離れる事なく何故かポケットから2つの物を出すとお姉さん方に話しかける。


「なら…こっちの銀のパットですか?それとも……この金のパットですか?」


(誰が銀の斧、金の斧みたいに泉の妖精みたいな事しろって言ったんだよ!……それに何でそんな物持ってるんだよ!)


 慎二が声を出さずツッコミを入れてると流石に目の前の村上が気持ち悪くなったのか1人の女子大生が村上にその場を離れる事を伝えた。


「私達用事があるので、それでは………」

「待って、このパットはどうするの!」


(それ、村上君が元々持っていた物でしょ!)


「嫌ー、変態!?近づかないでーー!」


 もう1人の女子大生が村上の気持ち悪さに耐えられなくなったのか走っていってしまい、それにつられてもう1人の女子大生もその場から逃げてしまった。


「なんで……どうしてだよーー!…それにこれ……どうすんの!?」


 村上は自分のナンパが失敗した事と共に持っているパットをどうすれば良いか分からなくなったのか女子大生達が逃げていった方向にパットを持った手を掲げていた。


「それは村上君が元々持ってきた物だろうがー!?」

「ぐへっ!?」


 ついに村上の痴態に慎二は耐えられなくなり村上のお腹目掛けてドロップキックをかました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る