第99話 海とバカ達と②
慎二達は海に向かい、歩きながら話していた。
その時村上が変な事を口にした。
「でも良かったな、正直2日だけじゃ少ししか遊べないと思っていたが、丸々6日間自由にして良いとは……俺の時代来たなコレ?」
「村上君、だからと言っても人様に迷惑かけちゃ駄目だからね?」
「わかってるわ、大丈夫、大丈夫、ギリギリを責めるつもりだからな!」
(村上君は要監視だね…やっぱり……)
村上が何かやる気を出している所を由紀が嗜めていたが、何故か俄然やる気を出しているので慎二は心の中でそう思った。
「まあ、村上じゃねえが、泊まるところもあるしご飯も出るとか最高じゃねえか?少しははしゃぐ気持ちも分からなくはないな」
「こんな機会も滅多に無いからね、少しは羽目を外しても良さそうだね」
雄二と服部は村上に賛同するわけでは無いがこれはこれで良いのでは無いかと話し合っていた。
慎二自身も内心この状況に喜んでいた。
(僕も内心喜んでいるから、村上君には強く言えないよね……)
「ほら、木之下も少しはこの状況を楽しめって、海だぜ?それも6日間自由と来た……これを喜ばない奴がいるか?」
「はぁ、僕も嬉しいよ?でも程々にね?」
(由紀も折れた様だね……ここは一応楽しんでも良いけど部長として言っとくか)
「皆、今回は一応アルバイトをしなくて良くなったけど……僕達は実際部活として来てるから、それぞれ自由にして良いけど人様に迷惑をかけない事、困っている人がいれば助けることは最低でもやろうね?」
慎二のその言葉に皆「おう!」と答えてくれた。
それから皆話が纏まった為海水浴場に行こうとした時、いきなり村上が勝負を持ちかけて来た。
「早速誰が1番に海水浴場に行けるか勝負しようぜ!1番遅かったやつは飲み物奢りな!」
そう言うと村上は走っていってしまった。
「全く……村上君はあんなにはしゃいで、分からなくも無いけどね、皆はゆっくり……」
ゆっくり行こうと慎二が言おうとした時には既に雄二達もその場には居なく村上の後に駆け出して行ってしまった。
「結局皆楽しみにしてたみたいだね……」
もう追いつきそうに無いから慎二はゆっくりと景色でも見ながら海水浴場に行こうと思い歩き出した。
◆
綺麗な海の景色を見ながら海水浴場に向けて歩いていたら、テトラポットに1人スケッチブックを持って座っている男性がいた。
慎二は何でかその男性を見た瞬間目が離せなくなってしまい、気付いたらその男性の近くに来ていた。
慎二が何も言えないままその男性に近付くと何かに気が付いたのかスケッチブックから顔を上げて男性が慎二に話しかけて来た。
「ん?僕の顔を見てどうしたんだい?」
慎二に優しく話しかけて来た男性の髪の毛はまだ若いのに白髪だった。
「あっ、すみません!まだ若いのに何で白髪なのかなと思ってしまい見入ってしまいました、不躾な態度すみません!」
「ああ、僕の髪の毛やっぱり目立つよね……良いんだよそんなに謝らなくても、それより君見たことない顔だね?」
「はい、今さっき桜田町から来ましたので見た事が無いのかと思います」
慎二は男性の質問に答えた。
「そうだったのか……この町はいい町だよ、是非とも楽しんで行ってよ!」
慎二の話を理解すると、初対面の慎二人間お顔を向けて来た。
(この人良い人ぽいよね?初対面の僕にこんなにもフレンドリーに話してきてるから)
慎二は仲良くなれるかなと思い自分の名前を教えることにした。
「はい、楽しみたいと思っています……あっ、僕の名前は前田慎二と言います。6日間この町に滞在する予定です!」
「これはご丁寧に、僕の名前は汐留渚。ここ千里浜町に住む住人だよ、何かあれば聞いてくれればいいよ?」
少し儚い雰囲気を醸し出した男性は慎二にそう言って来た。
これが慎二と男性、汐留渚の出会いだった。
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