第98話 海とバカ達と①





「ごめん、ごめん村上君!何でか君の顔を見たら……ね?」

「何が、ね、だ!後で絶対ナンパ一緒にやってもらうからな!」

「わかったよ」


(ナンパだけで許してくれるなら勿論やらせて頂きますよ、ええ)


 トイレから戻ってきた慎二と慎二の吐瀉物が少しかかった村上は汚れを綺麗にすると千夏達が待つ車に乗った。


 その後は何も起こる事はなく目的地の石川県羽咋市千里浜町内にある千夏の祖父の家まで向かっていた。


「皆、もう直ぐでお爺ちゃんの家に着くから降りる準備してね?」

『はーい!』


 千夏に言われた慎二達は各自降りる準備をしていた。



 そんな中、既に降りる準備が出来ていた服部が前を見たら目の前に大きな黒塗りの昔ながらの二階建ての家が見えてきたので声をあげた。


「由比ヶ浜先生、目の前の立派な家が先生の祖父さんの家ですか?」

「そうよ、今見えてるのがお爺ちゃんの家よ」


 服部の質問に千夏は答えていた。


 そんな中、千夏の言葉に服部以外の皆も外の様子が気になったのか車の窓から見ていた。


「でっかい家だなぁー……お化けとか出たりして……」

「変な事を言わないでよ、村上君!幽霊なんて存在しないの!これは科学でも証明されてるんだから!!」


 村上の言葉に過剰に反応する由紀。


「お、おう?なんか悪かったな、木之下」


 村上は村上でなんでこんなに由紀が怒ってくるのかは分からなかったが、反射的に謝っていた。


 その姿を見て他の皆は笑いを抑えていた。


 実は以前、また雄二の家に集まりバイオ○ザードを4人で代わり、代わりプレイしていた、その時に由紀の怖がりようが……もう言葉に出来ないほどだった。


 なので、村上は知らなかったかもしれないが、由紀の目の前では幽霊話はNG案件になっていた。


 それを知らない村上は由紀の逆鱗に触れてしまったのだ。そんなバカな事をやり話していたら苦笑いを浮かべている千夏が皆に話しかけて来た。


「皆、もう着いたから降りるよ?それとお爺ちゃんの家に皆で泊まれる様になってるはずだけど、確認してから荷物を降ろしちゃおうか」

『わかりました』


 千夏の言葉に慎二達は返事をしていた。


 家に着いたので車を駐車出来る場所に置くと、慎二達は車から降り、ここまで運転してくれた千夏に慎二が代表としてお礼を伝えることにした。


「由比ヶ浜先生ありがとうございました!」

「良いのよ、私がお願いして皆に来てもらったわけだし、ほら早速家に入りましょう!」


 千夏はそう言うと家のチャイムを押して祖父が出て来るのを待っていた、少しすると「本当にお爺ちゃん?」と言う様な外見な男性が中から出て来た。


「おお!千夏か、よく来たな!」

「うん、久しぶり!お爺ちゃんも元気にしていたみたいで良かったよ!」


 千夏と祖父?は久し振りに会えた事を喜びあって抱き合っていた。


「後ろにいる子達が今回アルバイトを手伝ってくれる子か?」

「そうだよ、皆いい子達だから色々と手伝ってくれると思うよ!」


 千夏達の会話に慎二達は呆気にとられていたが、目の前の男性が本当に千夏の祖父で合ってるとわかったので各自挨拶をした。


「こんにちは、僕達は今回由比ヶ浜先生から海の家を手伝って欲しいと頼まれた前田慎二と言います!今回は僕達が行なっている部活の一環で手伝いに来ました!」


 そんな慎二の自己紹介に他の皆も挨拶を返した、それぞれ自己紹介を済ませると、嬉しそうに千夏の祖父は自分の自己紹介もしてきた。


「そうか、そうか!遠い所までよく来てくれたな!俺は千夏の祖父、由比ヶ浜宗一郎だ、好きな様に呼んでくれ、外にいても暑いだけだから中に入りな!」


 宗一郎にそう言われたので慎二達は「お邪魔します」と言って中に入っていった。


 通されたのは恐らく居間と呼ばれる場所だろう、下に引かれている物は畳で真ん中に囲炉裏と言われる物があり、なんだかとても居心地が良い様に慎二達は思えていた。


 家の構造は木造の建築でかなりの年月が経っているのがわかった、それでも立派に今まで健全に立っていることから大切に使われてきたのだと思えた。


 皆が用意されていた座布団に座ると早速宗一郎から話しかけられた。


「さっきも言ったが、遠い所来てくれてありがとうな!それで……今回のアルバイトの内容は皆聞いているか?」

「それなら私が事前に皆に話してるから大丈夫だよ?お爺ちゃんが経営している海の家を4日間手伝えば良いんだよね?」


 宗一郎の言葉に千夏が答えたら、何故か申し訳なさそうな顔になってしまった。


「そうなんだが……千夏達が来る前に3年前ぐらいから毎年海の家を手伝いに来てくれていた人達が今年も手伝いたいと言ってきてな……付き合いもあるから無碍に断る事も出来なかったんだ、だから正直今回のアルバイトはもういらないんだよ……本当にすまない!早く俺の方で伝えれば良かったが、今さっきその人達が来てな……伝える事が出来んかったわい………」

「えっ?……ということは私達は今回はもう用済みということなのかな?」


 千夏達に頭を下げてきていた宗一郎は千夏の言葉にすぐ様訂正してきた。


「違う、違う!流石にこんな遠くまで来てくれたんだ、もし良かったら6日間この家に泊まってくれて良いからこっちで夏休みを過ごさないかと思ってな、勿論お金は要らないしご飯もこちらで出すからな」

「それなら別に良いけど……皆はそれで良い?」


 千夏は慎二達に聞いてきたが、別にアルバイトがあろうが無かろうがどちらでも良かった為話し合う必要も無く慎二が代表で答えた。


「僕達も構いませんよ?それに僕達には好都合ですよ、6日間も海がある場所で夏休みを満喫できるんですから」

「ありがとう、君は前田君と言ったな?他の皆もそうだが是非海を、この町を満喫してくれ!」

「はい、満喫させて頂きます、一応「人助」を目的にした部活を僕達はしているので何か手伝いがあれば言って下さいね!」


 慎二がそう言うとさっきまで申し訳無さそうにしていた宗一郎だが笑顔になってくれた。


「ああ、何かあれば君達を頼らせて頂くよ、この後は何も予定が無ければそれぞれ荷物を空き部屋に片付けてから海に行ってみてはどうだ?」   


 海荷物早く行きたい、さっき色々あって見れなかったし………


「早速後で行かせて頂くつもりです!」


 慎二の言葉に他の皆も頷いていた。


「私はちょっと周りの知り合いに顔を出す予定があるから慎二君達で海を楽しんできてね?夕方ぐらいになれば私とお婆ちゃんがご飯を作って待ってるから帰ってきてね?」


 千夏はこの後やる事があるらしくそう言ってきた、その言葉に慎二達は了承すると持ってきていた荷物を空き部屋に片し、下に海パンを履き、貴重品だけ持ち宗一郎に出かける事を伝えて海に向かった。

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