第85話 高校とバカと下着泥棒と⑤


 実験?何するのかな?


「何するのさ?」

「調べたら新校舎の野球部の部室近くが1番被害が出ているらしくてね、そこで僕達がその被害が沢山出ている場所にパンツを使った罠を仕掛けて犯人を誘き出そうというわけさ」


 服部が色々と考えていた事に慎二は感心していた。


 へぇー、でも誰のパンツ使うのかな?


「服部それは誰のパンツを囮りに使うんだ?」


 村上も気になったらしく慎二が聞く前に聞いてくれた。


 村上に聞かれた服部は何を当たり前の事をと言う様に慎二を指差してこう言った。


「それは勿論我が部の部長、慎二君のパンツだよ!」

「嫌だよ!」


 服部が変な事を言うので反射的に反応して反対の言葉が口から出てしまった。


 ただ、それも当たり前だ。


 誰だって自分の下着、それもパンツが囮に使われるなど嫌に決まっている。


 何を自慢げにパンツだよだ!自分の使ってよ!


 絶対嫌だと思っている慎二に何故断るのか?という顔を向けて服部はこんな事を言って来た。


「何故嫌なのかな、慎二君?」

「いや、普通に考えて嫌でしょ?やるならハトケンの使ってよ……わざわざ僕のを使わなくても良いと思う」


 慎二がそう言うと残念そうに肩を窄めてこう言ってきた。


「僕は駄目だよ、ブリーフだからね」

「………それの何が駄目なのかわからないのだけど……」


 ブリーフもパンツだよね?


 慎二が下着は下着だよね、と思っていると胡散臭げな事を言って来た。


「これは調べあげた結果だけど、盗まれた確率で言うとブリーフが2%でトランクスが98%と言う結果になったんだよ」


 その結果胡散臭いな………


 慎二がそう思っていると由紀と雄二が声をあげた。


「なら僕も駄目かな……ブリーフ派だからね……」

「俺も駄目だな、俺なんてブーメランパンツだぞ?」


 なんかいきなり2人共カミングアウトしたんだけど……雄二は前のゲームで遊んだ時もそうだけど、どんだけブーメランパンツが好きなのさ……


 2人の告白を聞き服部は村上に聞いてみた。


「村上君はどうだい?」


 服部が村上に聞くと申し訳なさそうに答えた。


「あぁー、助けになりたいが俺は今履いてるトランクスしか無いんだよな」


 「力になれなくてすまない」と伝えて来た、その話を聞いた服部は「なら慎二君で決まりだね」という様に慎二に笑顔を向けて来た。


「じゃあ慎二君で決まりだね!」

「勝手に決めないでよね!他の生徒に借りる事だって出来るでしょ!」

「時短だよ」

「そんな事で時短なんていらんわ!」


 その後も慎二は駄々を兼ねていたがこんな事で時間を食っても無意味だと思い渋々慎二は家に帰り替のトランクスを取りに行く事にした。


「取ってきたよ……本当は7枚あったけど何故か3枚しかなかったよ……」


 20分ほどして戻ってきた慎二はゲンナリしてそんな事を呟いた。


「慎二は慎二で別の案件で誰かに盗まれたりしてな」

「「「はははっ!!」」」


 雄二のその言葉に慎二以外は笑っていたが慎二は笑えなかった。


 本当に誰かにこの頃盗まれているような気がするからだ。


 変な話で脱線しかけたがしっかりと慎二のパンツを使い犯人を誘き出す事にした、誘き出す方法は簡単だ、野球部から借りた洗濯用ハンガーに慎二のパンツを付けて少し放置する、その状況を遠くから観察するだけだ。


「本当にこれで犯人が来るのかなぁ〜何も来ないと思うよ?」

「まあ、見てなって絶対何かが引っかかるからさ」


 慎二と服部が話していたら、何故か洗濯用ハンガーを吊した所に神田雪が現れた。


「ねぇ、なんか雪が来たんだけど……これどうなるの?」

「慎二うるさいぞ、静かに見てろ」

「………わかったよ」


 雄二にうるさいと言われてしまったのでこれから何が起きるか静かに見てみる事にした……雪は周りをキョロキョロ確認するとその場で何かを嗅ぐような仕草をした。


「ん?この臭い……慎二のパンツ?」


 洗濯用ハンガーに付いているパンツを見ると雪はそんな事を口にした。


(なんで僕のってわかるんだよ!)


 今は静かにしなくてはいけない為心の中で叫ぶ事にした。


 雪はそう呟くと直ぐに洗濯用ハンガーから迷う事なくそのパンツを洗濯バサミから外し顔に付けると匂いを嗅ぎ出し、だらしない顔をした。


 そんな行為をしたと思ったらそのまま何処かへ慎二のパンツを持ったまま行ってしまった。


「………‥」


 えっ?これ見ちゃいけない奴じゃないの?それにあの子何やってるの?


 慎二の頭の中が疑問符で溢れかえっていると上気した顔の雪が戻ってきて洗濯用ハンガーにパンツを戻すとまた何処かへ歩いて行ってしまった。


 その場面を訳がわからないと見ていた慎二に服部が「どうだった?」と話しかけて来た。


「どうだった、慎二君?」


 雪が完全にいなくなると服部はそう聞いてきた。


「いや、どうと言われても……何が起きたのかさっぱり分からないんだけど……」

「わからないか……まあ、僕も何がなんだかわからないけど……」

「ハトケンもわからないんじゃないか!」


 慎二達は何が起きてるのか分からず見ていたら雄二が何かに気付いたのか伝えてきた。


「なあ、お前ら、なんかあの洗濯用ハンガーに吊るされてるパンツ違くね?」

「えっ?僕のパンツじゃないの?」


 そう思い洗濯用ハンガーを見たら……女性用の下着がぶら下がっていた。


 誰のだよ!


 本当に誰のかがわからない慎二に村上がこんな事を言って来た。


「あれもしかして神田さんの脱ぎたてパンツだったりして……」

「流石にそれはないでしょ……それにじゃあ僕のパンツは何処に行ったって話だよね」


 ないないと思っている慎二だが。


「見てたでしょ?多分今神田さんが履いてるんじゃないかな?これが俗に言う等価交換だね!」


 笑顔で伝えて来た。


 何が等価交換だ!


「えっ何、結局犯人は雪なの?」

「………わかんない」

「結局わかんないじゃないか!」

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