第86話 高校とバカと下着泥棒と⑥


 慎二がそう叫んだが雄二達に「まだ分からないだろ」と宥められた為少し落ち着く事にした。


「まあ次があるよ、慎二君、神田さんのパンツを回収してもう1回慎二君のパンツを吊るしてきてよ」

「………わかったよ」


 何もわからないが一応服部達に従う事にしてみた、新しく吊るしてから少し経つと次は美波と優奈が話しながら洗濯用ハンガーの近くに来た。


 何も気付いていないようでそのまま素通りするかと思ったが、その時風が吹き慎二のトランクスは飛ばされてしまい美波の顔に貼りついてしまった。


「ちょっ、あれ僕のってバレたら絶対半殺しに会うよ、止めようよ!」

「まあまあ、落ち着いて吉野さん達が犯人ならこのまま見ていた方が良いでしょ?」


 慎二が焦って皆に伝えたら涼しい顔で由紀がこう言ってきた。


「わかったよ……やられそうになったら皆も連帯責任だからね……」


 慎二は怖い物見たさで自分のトランクスが貼り付いてしまった美波を見たら既にトランクスは顔に無くて、美波と優奈でそのトランクスの取り合いをしていた。


「………‥」


 訳がわからん………


「これは私のよ!」

「美波ちゃんばかりズルイよ!たまには私にも譲ってよ!」

「今回ばかりは優奈には譲れないわ、これはね……私のなの!」


 2人共何そんな事で喧嘩してるのさ、そもそもそれは僕のパンツであって君らのでは無い。


 慎二は今目の前で起こっている事が分からなく見ていたら、優奈が動いた。


「わかったよ!美波ちゃんはいつも強情だね……なら五千円でどう?」


 何故か慎二のパンツが目の前でお金で取引され始めた。


 その場面を見ていた雄二がぼそっと呟いた。


「………ああやってヤ○オクとかメル○リに出品されてくんだな……慎二、物は大切にしとけよ?」

「今はそんな話は良いよ、あれどうなってるの?吉野さん達は犯人なの?」


 雄二達にそう聞いたが………


「「「わからん」」」


 と3人から返ってきた。


「じゃあ今までの茶番は何なのさ!」


 慎二が叫んでいる時、美波と優奈は結局2人で共有して使うのかそのまま慎二のパンツを持ち去って行ってしまった。


「………僕のパンツ、履いてるの合わせたら2枚しか残ってないんだけど……これ本当に犯人見つかる?」


 慎二が皆にそう聞いたら服部がすまなそうに伝えてきた。


「ごめん慎二君、今まで少しふざけていたよ、今から本気で犯人を見つけるから許してくれ」

「本当に?」

「本当に」


 真剣な表情の服部を信じてみる事にした。


「じゃあ、またパンツつけてくるね」

「慎二君待ってくれ、次は今履いている物を吊るしてくれないか?」

「えぇ、それじゃなくちゃ駄目なの?」


 嫌そうにしている慎二だったが。


「さっきも言った通りそのパンツを吊るせば獲物がかかると思う、一応今までの実験は確認の為だったんだよ」

「わかったよ……」


 と言われてしまい仕方なく慎二は自分が履いていたパンツを脱ぎそれを洗濯用ハンガーに付けて新品を履く事にした、勿論脱ぐのも履くのも野球部の部室を使わせてもらっている。


「さあ、これで犯人確保の瞬間が見れると思うよ、皆直ぐに動ける準備をしていてね」


 服部はそう言っているが、義心半期だった慎二は一応動ける準備だけはした。


 慎二の3枚目のパンツを吊るしてから30分ほど経過した時もう無理じゃないと慎二が思い始めていたら、洗濯用ハンガーの近くの草むらが揺れてそこから1匹の野良猫?が現れた。


 猫?猫がパンツを盗むの?


 慎二がそう思った瞬間、猫は周りを雪のようにキョロキョロ見回し周りを嗅いでいるのかヒクヒク鼻を動かしていたと思ったら洗濯用ハンガー目掛けてジャンプをした、よく猫の口を見たら慎二のパンツを咥えて走っていってしまった。


「今からあの猫を追いかけるよ!」


 服部のその声と共に慎二達は直ぐに猫を追いかけることにした、猫が慎二のパンツを咥えて逃げ込んだ場所は新校舎の体育館の近くにある物置き場にされているプレハブ小屋の建物だった、少しだけ空いている窓から猫は入っていった。


「猫はここに逃げ込んだよね?」

「ああ、恐らくここで間違いないと思うよ」

「なら直ぐに捕まえに行く?」

「いや、少し様子をみようか、慎二君のパンツを盗んだのはあの猫だけど、もしかしたら違う猫も盗みを働いている可能性があるから少し様子見をした方が良いかもしれない」


 そっか、あの猫以外にも犯人はいるかもしれないからね。


「そうだね」


 慎二と服部が話していると横から村上が気になったのか2人に話しかけてきた。


「なあ、結局なんであの猫は前田のパンツを盗むような事をしたんだ?」

「それは僕もわからないな、ハトケンは分かっていたの最初から?」


 慎二が服部に聞くと雄二達も皆顔を向けた。


「確信は無かったけど僕は猫が犯人の可能性があると思っていたよ」

「何か情報を集めている時にヒントでもあったのか?」


 雄二がそう服部に聞いたらその通りと言うように頷いていた。


「結論から言うと今回猫がパンツを盗んだ理由は恐らく「臭い」によるものだろうね」


 臭い?……僕のパンツそんなに臭いの?


「………多分慎二君が今思っている事は違うと思うよ」

「えっ?……うん」


 慎二が変な事を考えているのを察したのか服部は指摘してきた。

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