第83話 高校とバカと下着泥棒と③
◆
少し時間を跨いで次の日の放課後、慎二が昨日言った通り村上も部室に来ていた。
「しっかりと皆集まってくれた様だね、昨日伝えた通りハトケンは単独で調べて、残った僕達4人は2人ペアで聞き込みをしよう、僕と村上君ペア、雄二と由紀ペアに別れようか」
『わかった』
服部は早速慎二にそう言われたからか1人で調べに向かって行った。
「雄二と由紀は昨日来た相川先輩の所、バスケ部に行ってもう少し何か知らないかとその周辺で何かおかしな事が起こっていないか調べてきてくれ、僕と村上君は新校舎の1階にあるという男子サッカー部で聞き込みを行ってくるよ、何かわかったらメッセージでも電話でもいいから教えてくれ、2時間後にまたこの部室で落ち合おう、それじゃあ皆解散!」
慎二がそう言うと雄二と由紀も動き出してくれた。
そんな状況を見て村上は驚いて動けないでいた。
「どうしたの村上君?僕達も行くよ?」
「ああ、それはわかってるんだが、思っていた以上にしっかりと部活をしていたから驚いているんだよ、もっと学生の部活動だから緩いものだと思っていたし」
まあ、普通はそうなのかなぁ?
「他はどうか知らないけど、僕達は「人助」を目的にしている部活だからね、生半可な思いでなんて皆もやっていないんだ、誰かが助けを求めているかもしれない、なら動ける僕達がやるしかない、それに僕がそんな人達を見捨てられないんだよね………」
村上は慎二の話を聞き。
「………俺は前田の事を全然わかって無かったみたいだな……今まで運が良く何かを解決出来て皆からチヤホヤされているクソ野郎なんて思っていたよ、それは俺のただの僻みだったんだな…悪かった………」
勘違いしていた事を謝ってきた。
村上君も色々思う事はあるんだね。
「………村上君の言っている事は半分当たって半分ハズレかな?」
「それは、どう言う事だ?」
村上が慎二にそう聞くと少し自虐的な表情をして慎二は話し始めた。
「僕はね、今まで色々な実績を積んできた、でもそれはさっき言われた通り運が良かったのもあるんだよ……1人で解決出来ない事だってあって諦めた事だって何度もあったさ、そんな時運が良く周りに助けてくれる人が沢山いたんだ、それで僕はなんとか今……僕はここにいる」
「でも……前田はチヤホヤされてもそれを鼻にかけないし誰にも同じ対応をするだろ?そんなお前だから人は集まるんじゃ無いか?」
そんな事言われた事があるね、君は人を惹きつける魅力があると………
以前ある人物にそんな言葉を言われた事を思い出しながらも、自分はそんな大層な人間じゃないと思い村上に話し出した。
「僕だって普通の人と一緒さ、持て囃されて皆にチヤホヤされて少し天狗になりたい時だってあった。でもそれをやったら何か自分自身が壊れてしまう気がして怖いんだ……だから僕は皆が望む誰にでも優しい……前田慎二であろうとするんだ」
そんな事を苦笑いしながら言う慎二に村上は何か思う所があるらしく……
「前田も色々とその……苦悩があるんだな」
と言ってきた。
「誰だってあるさ、人は何か楽な道を見つけたらそのまま簡単な事を探してズルズルと下に下に落ちていってしまうんだ、そういう人間が悪さをして悪人になったりするんだよ、勿論全員がそうではないけどそういう人間もこの世界にはいる。だからそんな人間にならない為にもそんな人間に不幸にさせられている人を一人でも助ける為にも僕は今出来る事をやるんだ」
慎二はそう言い切り後ろを向いたら、何故か村上が泣いていた。
「村上君?」
何か泣かせる様な事言ったっけ?
そう思っていた慎二だったが、村上が口を開いたので聞く事にした。
「悪い…何でだろうな……前田の話を聞いていたら自分がどれだけちっぽけな人間なのか思えてきちまってな……」
「それは何で?」
慎二に聞かれると村上は少し自虐的な顔になり話出した。
「だってそうだろ?俺は彼女が欲しい、女子と話したい……という考えだけで女子と仲良くしている前田達に今まで酷い事をしてきた、それに今回だってそうだろ?前田の話を聞かないでそのまま悪い事を、人が嫌がる事をし続けていたら俺もそいつらと一緒で……」
村上はそう言うとその場で蹲ってしまった。
「村上君………」
そんな罪で潰されそうになっている村上に慎二は優しく話し始めた。
「………今まで行ってきた事は消えない…でも……それでも君は何が悪いのか理解出来ている。なら間に合う、これからいくらでもやり直せる、だから僕達と人助をして信用を取り戻そう」
慎二はそう言うと蹲ってしまった村上に手を差し伸べた。
「前田………」
そんな慎二の言葉に感銘を受けたのかさっきまで下げていた顔を上げて慎二の顔を見ると、差し伸べて来ている慎二の手を取り立ち上がった。
その姿を見た慎二は笑顔を向けると自分自身にも村上にも伝えるように自分の信念を告げた。
「それに、本当の悪とは分かっていながら人を不幸にする悪…自分が悪だと気付いていない最もドス黒い悪の2つがある……そんな人間に不幸にされそうになっている人達を僕達が救う、だから一緒に清算して行こう………僕も手伝うからさ」
どうしても今までやって来た事は人の記憶に残り消えないものはこの世に存在する、ならそれを塗り直せば良い。
「あぁ、そうだな」
「この依頼が村上君の第一歩だよ?」
「わかってる、これから宜しく頼む」
慎二と村上はそう言って握手をすると目的他の新校舎1階のサッカー部の部室まで聞き込みに行くことにした。
慎二達はサッカー部の部室に着いたので中に入り部員に聞いてみようと思ったが中には誰も居ないみたいなので校庭で練習でもしてるのかと思い校庭に行ってみたら、丁度試合をしてる所だった。
「こんな暑い中よくやるよな、俺は無理だな……」
「まあ、それは人それぞれだと思うよ……僕達が近くにいると集中出来ないかもしれないから少し離れた場所で試合が終わるのを待っていようか」
「そうだな」
正直僕も日陰に行きたいからね……
慎二と村上はそう話し移動しようと思った時試合をしていたサッカー部員があらぬ所にボールを蹴っ飛ばしてしまった、その先には女子生徒達が応援に来ていて………
『キャーーー!!?』
女子生徒達から悲鳴が上がったが、いきなりの事で動けなかった様だ。
「危ない!?」
それに気付いた慎二は迷う事なく女子生徒達の元に向かった。
「お…おい……前田!」
村上はもう無理だろと思い慎二を止めようとしたが言うのが遅かった為慎二はそのまま全力でかけて行ってしまった
「たくっ、お人好しなんだから!」
村上はそう言いながらも自分も全力で女子達の元に向かう事にした、ただ、村上が慎二の元に向かう前に見たのは………
「間に合えーー!!」
と叫びながら女子達の目の前に現れてサッカーボールにおもいっきり蹴りを入れた瞬間だった、慎二に蹴られたボールはそのままゴールにシュートされて間一髪の所女子達は怪我をする事なく事無きを得た。
「皆さん大丈夫でしたか?」
何事もなかった様に自分達の心配をしてくる慎二を見て女子生徒達からも男子サッカー部の部員からも歓声が上がった。
『嘘!?前田君に助けられちゃった!』
『見た見た?カッコ良かった〜』
『あの状況でゴールに入れるとは……』
など、と大盛り上がりだった。
「うん、大丈夫そうですね!そのまま試合続けてくださいね、ただ今日も暑いので無理しないで下さいね?」
慎二からそう言われてサッカー部員も女子生徒達も返事を返していた。
慎二は「ありがとう」などお礼を言われていたが、それをしっかりと受け取り村上の所まで戻ってきた。
戻ると村上からさっきの状態でよく間に合ったなと言われた。
「前田、お前本当に凄いな……あそこからよく間に合ったな……」
「正直僕も無理だと思ったよ……身体が勝手に動いていてね、でも結果良ければ全て良しってね?」
「はぁ、お前はそう言う奴だと理解したわ……」
その後は何事も無くサッカー部の試合が終わるのを待つ事にした。
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