第79話 高校とバカとテスト勉強と?①

 



 翌朝、慎二は昨日寝る前に雄二に連絡された通り勉強道具をバックに入れて雄二の家まで自転車で来ていた。


 雄二の家は慎二の家からそこまで遠い場所にあるわけではないが、勉強道具も持ち夏の熱い中というものもあっていつもなら歩きで行く所をマイ自転車で今日は向かった。


 雄二の家は二階建ての一軒家で父、母、雄二の3人暮らしだという、雄二父は今地方に単身赴任に行っているらしく、雄二母と雄二の2人暮らしだという。


「熱……まだ7月の中旬なのにこの暑さはたまらないよ……もう皆来てるかな」


 慎二はそう独り言を言い、雄二の家のインターホンを押した、インターホンを押して少ししてから雄二母改めて木村優子が出てくれた。


『はーい、どちら様ですか?』

「僕は雄二の友達の前田です、今日は雄二達と家で遊ぶ約束をしていたので来ました」

『ふふっ、慎二君よね〜本当はインターホンのカメラを見た時からわかっていたわ〜今からドア開けに行くから待っていてね〜』


 相変わらず雄二のお母さんはお茶目な人だな………


 インターホンに出た雄二のお母さんはわかっていたと笑いながら家のドアを開けに来てくれた。


「慎二君、いらっしゃい〜、熱い中来てくれてありがとうね、もう皆来てるから手洗いうがいをしたら雄二の部屋に行ってあげてね?……私の部屋でも良いけどね?」

「お邪魔します、いえ、しっかりと雄二の部屋に行きますよ……」

「つれないわね〜良いわ、また後で飲み物持ってくわね〜」


 優子は少しガッカリした様な感じを出したが飲み物を後で持っていくと言いキッチンに向かってしまった。


 僕が雄二のお母さんの部屋に行って何すれば良いのさ……


 慎二はそう考えていたが、今は皆が待つ雄二の部屋に向かう事にした、雄二の部屋は二階の部屋にある、着いたのでドアを開けたら………


「オッス慎二!無事俺の部屋まで辿り着けたようだな、母さんに絡まれなかったか?」


 そう雄二に声をかけられた。


「おはよう雄二達、まあ無事に辿り着けけど、雄二のお母さんには「部屋に来ないか?」と言われたよ、丁寧にお断りしたけどね……」

「ブハッ!相変わらずだな!何か母さんやけに慎二の事気に入ってるみたいだからな!」


 慎二にさっきあった事を素直に話したら雄二が腹を抱えて爆笑してしまった。


「笑いすぎでしょ雄二……ほらもうその話はいいから!今日は勉強するんじゃないの?……部屋の中見ると勉強をするって感じじゃ無いような気がするんだけど……」


 慎二が雄二の部屋に来てから少し疑問に思っていた事が部屋の中に置いたある物達だった、慎二は事前に勉強をすると言われたから雄二達は先に始めているものだと思っていたが、違ったみたいだ。


 勉強道具など何処にも無く読みかけの本が置いてあったり、服部と由紀に至ってわ今絶賛プレ○ステーションでレースゲームをして勝負をしている所だった。


「んあ?……なんだ慎二、本当に勉強なんてやると思っていたのか?」

「え?やらないの?」

「やるわけないだろ?」


 当たり前の様に返事を返されてしまった。


「じゃあ、昨日の夜に僕に送ってきたメッセージは今日遊ぶ為の口実だったって事?」

「そうだ」


 なら普通にそう言ってよ!と言いたいけど何か言っても僕が疲れるだけだからやめておこう……昨日疲れたから今日はもう良いよ……


「………わかったよ、じゃあ今日は遊ぶだけって事ね」

「まあそうだな、だがただ遊ぶだけじゃないぞ?」

「?他に何かあるの?」


 慎二がそう聞くとさっきまで由紀と遊んでいた服部がゲームを一旦やめて慎二に話しかけてきた。


「慎二君おはよう、僕達はまだやってない事が1つあるんだよね、恐らく慎二君は忘れてるんじゃないかな?」

「ハトケンおはよう……僕が忘れている事?」


 何かあったっけ?……今まで起こった事が濃過ぎて全然思い出せないんだけど……


「ああ…それはね……「聖書」の開封だよ!」

「………「聖書」?……なっ!まさか今日やるのか!?」

「ああそうさ、慎二君は前回惜しくも吉野さん達に見つかり没収されたかもしれないが僕達は今日持ってきた!」


 服部がそう言い紙袋を出すと雄二と由紀も慎二の前に紙袋を出した。


 皆は覚えているだろうか?以前慎二達は「聖書」を求めて木戸書店に行き、無事買えていざ開封をする……という時に吉野達に見つかってしまい慎二だけ怒られせっかく苦労して買った「聖書」を目の前で燃やされてしまった事を、それを可哀想だと思った雄二達は時間を見つけて今日勉強会をするという口実で集まり開封の儀を行おうとしていた。


「慎二君のあんな終わり方は流石に可哀想だと思った僕達はこの時を待ち皆開けないで大事に保管しといたんだ!」


 由紀が慎二の事を思ってか優しくそう言ってきた。


「君達は…なんて……友達想いなんだ!」

「バカ、皆で開けるから良いんだろ?それに俺の家だったら吉野達もわからないだろ?この前は慎二の家だったからしくじったが今回は大丈夫だろ」


 雄二達がそこまで考えてくれたとは!


 ただ慎二は雄二のお母さんがこの後飲み物を持ってくると言っていた事を思い出しその事を皆に伝える事にした。


「雄二達その紙袋は一旦しまった方がいいと思う、さっき雄二のお母さんが後で飲み物を持ってくると言ってたからさ」

「別に大丈夫だろ?もし見られても「青春してるんだなー」ぐらいにしか思われないだろ?」


 雄二の言葉に服部も由紀も頷いていた。


「そんなもんかな?」

「そうそう、そんな気にしても意味ないぞ」


 皆が何も思っていないみたいなので慎二もあまり気にしない事にした、そんな話をしていたら話に上がった雄二のお母さんが雄二の部屋の前に近付いてくる音が聞こえた。


「雄二〜お母さん飲み物持っていて手が塞がっているからドア開けて頂戴〜」

「わっーたよ、今開けるから待っててくれ」


 雄二はそう返事をするとドアを開けてあげた。


「ありがとね〜ほら皆麦茶で良かったかしら?持って来たから飲んで頂戴ね〜」

『ありがとうございます』


 雄二のお母さんに慎二達はお礼を言い麦茶を飲む事にした。


「ちょっと用事ができたから今から私は出掛けるけど皆ゆっくりしていってね〜」


 雄二のお母さんはそう言うと部屋から出て行き、少ししたら家のドアの鍵を閉めた音が聞こえた。


「丁度良かったな、母さんも出掛けたみたいだから心置きなく「聖書」を鑑賞できるな!」

「少し緊張するな〜皆がどんな物買ったか気になるし!」


 雄二と由紀はそんな事を言いテンションを上げていた。


「僕は手元にもう無いから皆が何を買ったか観させて頂くよ、どんな物を買ったか楽しみだね!」


 手元に無いと言うか燃やされたけどね!


 慎二がそう言うと一応誰が先見せるかという話になったが、勿体ぶらないで全員でせーので見せる事になった。


「「「じゃあ、せーの!」」」


 そう3人が言い紙袋から「聖書」を出した、それを見た皆の反応は………


「ははははっ!雄二君が買ったの、SMものじゃ無いか!亀○縛りは無いわ!」

「うるせぇ!そう言うハトケンは熟女物だろうが!お前俺の母さんとか狙ってるんじゃねぇだろうな?」

「狙うわけ無いだろ!こういうのはフィクションだから良いのさ!」


 雄二と服部は自分達が買った「聖書」を見せ合いやいのやいのやっていた。


「へぇー、水着の写真集か〜由紀らしいね、雄二とハトケンみたいにマニアックな物買っていたらどう反応して良いかわからなかったよ」

「流石にこれが限界だったよ……こういうのは今まで買ったことも見たこともあまりなかったからね……この写真集でも勇気が必要だったよ」

「それで良いと思うよ!」


 慎二と由紀がほんわかと話していたらさっきまで服部と言い合っていた雄二が慎二に聞いて来た。


「で?慎二お前はどんなの買ったんだよ?それにあの後どうなったんだ?」

「あぁ、僕が買ったのは普通の学園物の生徒同士の純愛物だよ、それにあの後は中身を1度も見る事なく燃やされたよ……」

「………悪かったな…ま……まあ?ほら今だったら電子書籍でも見れるしな!」


 慎二のその言葉に一瞬お通夜みたいな雰囲気が流れたが、それを無くす為に慎二を雄二は励ました。

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