第75話 高校とバカとデートに⑤
◆
実里との擬似デートが終わった後、愛菜との擬似デートの為にわざわざ1度別れて桜田駅前に待ち合わせをしていた。
「まだ4人も残ってるよ……実里先輩は一応デート?らしき事を守の真似をしてなんとか凌げたけど、この後もあると思うと……頑張ろう」
慎二は1人でそんな事を呟き愛菜が来るのを待っていた。
◆
・佐城愛菜視点
今日は慎二君との擬似デートの日、埋め合わせなんて言ってるけど私達が慎二君とデートをしたいだけなんだけど、もうこんなチャンスなんて訪れないかもしれない。
いつもはしない化粧も着た事がない様な洋服も今日の為だけに揃えたの、私は天の邪鬼な性格だけど今日だけで良い、どうか素直な自分で慎二君と話させて下さい。
そんな事を心の中で呟いていた。
私は初め慎二君とは仲良くなれないと思っていた。
別に彼の事が初めから嫌いだったわけじゃない、男性自体が苦手だった、これは私の問題だから何もしていない彼に当たってしまう自分がどうしても嫌だった。
私がこんな性格になってしまったのは家族が関係していると思う、早く母を亡くしてしまった私は父が育ててくれた、それは良かった、でも私の上に3人の兄がいてどうしても女の私は家にいづらい時が多かった。
周りからも上の兄と比べられたり女性は男性に従うのが当たり前と兄の友人からも言われたりして気付いたら男性の事を苦手になっていた。
でも慎二君は違かった、男性も女性も誰も関係なく誠実に接して贔屓などせず優しく接してくれる彼に他の生徒会の皆は心を掴まれていた、勿論その中には私もいた。
でも私は今までの男性の苦手意識がまだ残っているからなのか慎二君に天の邪鬼な態度を取ったり、毒を吐いてしまう事も多々あった、そんな私にも離れず他の皆と一緒の様に対応してくれる慎二君に惹かれた、そんな彼と今日はデートが出来る。
あわよくば本物のカップルみたいにデートをしたいとは思っているけど、私はそれ以上を望まない、ただ彼といられるだけで幸せなのだから。
愛菜はそんな事を考えながらも慎二の元に向かった。
駅前に近付くと慎二が気付いてくれた様で愛菜の元に来てくれた。
「佐城こんにちは!」
「ふん!……私より早く来ていたのは褒めてあげるわ、それで今日はどこに行くのよ?」
ああ、またやっちゃったよ……慎二君に嫌な女なんて思われたくないのに……
愛菜が無愛想に言っても慎二は全く気にしてない様に話しかけてきた。
「ははっ、その反応佐城らしいね今日はこれからカラオケでも行こうと思っているんだよ」
「何が佐城らしいよ!……それにカラオケ?今日はデートのはずよ?流石にそのチョイスは無いんじゃない?」
デートでカラオケか……あまり聞いた事ないよね?
「んー、まあそう言われるよね、でもカラオケにした理由があってね」
「なら、その理由を言ってみなさいよ」
「わかったけど……怒らないで聞いてね?」
前置きをして慎二が言った理由とはこういった物だった。
「この頃さ佐城を見ていると思う事があるんだ、思い詰めた様な感じとは言わないけど、伝えたいけど言えないみたいな事を考えていたりしない?」
「別に……そんな事は無いけど……」
慎二君はもしかして何か気付いてるのかな?
「僕も正直上手く言葉に出来ないんだよ、ならいっその事何かが溜まっているならそれを一気に放出しちゃえば良いと思ってね、そこで出て来たのがカラオケってわけ、どう?佐城はカラオケ嫌い?」
「嫌いでは無いわよ……良いわ、慎二君が何を考えているかわからないけど時間も無いしその案に乗ってあげるわ」
「わかった、じゃあ行こうか」
話が纏まり2人は近くのカラオケ店に入る事にした、店に入ってからは慎二が全ての事をやってくれた。
「すみません学生2人なんですけど、部屋は空いてますか?」
「はい、空いてますよ」
「じゃあ学生2人でこの30分コースお願いします、あとドリンクを単品でアイスコーヒーとアイスティーを一つずつお願いします……佐城は飲み物はアイスティーで良かったよね?」
「何でも良いわよ」
私の好きな飲み物も覚えてくれていたんだね!
「わかった……じゃあ店員さん今言った感じでお願いします」
「かしこまりました、ではお部屋は12と書かれた部屋なのでその部屋でお願いします、飲み物は後でこちらで持っていきますね、時間が近くなったらお電話しますので延長する様でしたらその時言ってください」
「わかりました」
慎二は店員とそう話すと愛菜と共に指定された番号の部屋に入る事にした。
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