第74話 高校とバカとデートと④




・由乃実里視点


 今日は慎二君との擬似デート、擬似だけどデートを好きな人と出来るだけで幸せだよ〜メイクもしたししっかりと身嗜みも整えた!いざ慎二君と会ったら服装とか褒められちゃったな〜……ドキドキが止まらなくてしっかりと慎二君の目が見れなかったよ、でも今日はデート!張り切っていかなくちゃ!


 慎二君との出会いは麗華ちゃんが生徒会室に連れてきたと言うのが始まりだった。


 それからは色々と助けてくれたりしてくれた、私が慎二君を意識する様になったのは自分が飼っているトイプードルの「バニラ」を一緒に見つけてくれたという事だった。


 私は他人だしましてやその飼っている犬など最初は真剣に探してくれないと思っていた、なのに慎二君は見つかるまで、遅くまで一緒に「バニラ」を探してくれた。


 私は自分では普通に振る舞っているがお金持ちの家に生まれた、けど私自身は何も偉くなんてない、なのに私の事を知った殆どの人達は媚を売るような人ばかりで本当に嫌だった、でも慎二君は違かった。


 私の話をしても慎二君は「そんなの関係ない」と普段通り接してくれた、それがどれほど嬉しかったか慎二君自身は知らないだろうけど、だから今日は少しでも意識してもらう為に頑張るの!


 実里はそんな事を考えながらも慎二がエスコートをしてくれると言う事で何もデートのプランなど考えていないが慎二の後に着いて行ってみた。


 着いた場所は………


「実里先輩着きました、僕と一緒にここで一休みしませんか?あまり動いていても疲れるだけだし、1時間は短いですからね」

「ここは……猫カフェ?」

「はい、実里先輩は動物が好きだと思いましてね」


 慎二が実里を連れてきた場所は桜田駅前近くにある猫カフェだった。


 驚いていた実里に慎二は言ってきた。


「「バニラ」君は元気ですか?」

「慎二君覚えててくれたの!」

「覚えてますよ、一緒に探しましたもんね!ここで喋っても良いですけど、中に入って猫に癒されながら喋りましょうか」

「………うん!」


 こんなにも話すだけで幸福が訪れるなんて思ってなかったよ〜


 慎二と実里は猫カフェの中に入ってからも愛犬「バニラ」の話に夢中になりながらも猫に癒されると言う最高な時間を過ごしていった。


 実里はふと思い出し慎二を自分の家に誘ってみようかと思った。


「慎二君今度家に遊びに来てよ〜バニラも会いたいだろうし……そのね、お母さん達も慎二君にお礼を言いたいみたいなの!」

「そうですね〜今度行けるか考えときますね」


 む〜慎二君、家に来てって言ったら少し難しい顔になったの丸わかりだよ!


「うん、しっかりと考えてね〜……ああ、もうこんな時間だ〜1時間は短いよねぇ〜」


 実里は付けていた腕時計を見たら約束の1時間が後残りわずかになっている事に気付いた。


「まあ、楽しい時間は早く過ぎてしまうと言いますし、またいつでも話せるんだから今日はここまでにしときますか」

「慎二君は今日楽しかった?」

「楽しかったですよ?じゃなければさっき楽しい時間は早く過ぎるなんて言いませんよ?」


 ………本当慎二君はズルい、平気な顔でそんな事を言うんだもん………


 実里が慎二の言葉にヤキモキしていると慎二が今日のデートについて聞いて来た。


「今回の僕のエスコートはどうでした?正直女性と仮でも擬似でもデートをしたのは初めてなので良く出来ていたか分からなくて……」

「えっ?慎二君はデート初めてなの?麗華ちゃんに何回もデートをしてるプロって聞いたけど……」


 実里がその話を出したら、慎二は苦虫を噛んだような渋い顔になってしまった。


 あれ?変なこと言っちゃったかな?


「それはクラスメイトが悪ふざけで言っただけで僕はデート自体が初めてなんですよ……だから今回のデートしっかりと出来ていたか気になってしまって」

「へっ?」


 嘘!?じゃあ…じゃあ……私が慎二君と初めてデートをしたの?……嬉しい、嬉し過ぎるよ〜!


 慎二の話を聞いた実里は舞い上がっていた。


「実里先輩?何か嬉しい事でもあったんですか?」

「ああ、いやこれは違うの!…いや違くはないけど…ううーー……もう慎二君が悪いんだよ!?」

「なんで!?」


 ごめんね慎二君、私がおかしいだけなのに今は嬉し過ぎて上手く言葉が纏まらないの………


 慎二は驚きながらも実里の事を心配そうに見てきていた、またそれが実里の心を揺さ振ったが、そんな時間ももう無いので自分自身を落ち着かせて自分が今思っている事を伝える事にした。


「あのね、慎二君」

「はい」

「今日の擬似……デートとっても楽しかった!実は私も初めてなんだ誰かとデートをしたの……でもそんな事関係無いぐらい今が楽しいの!今日はありがとうね!」


 実里がそう言うと、安心したようなホットしたような顔に慎二はなり、笑顔を向けてこう言ってきた。


「それなら良かったです!」


 その笑顔も素敵だなぁ〜


 実里は慎二の顔を見てうっとりとしていた、今ならキスでも何でも出来るのでは無いかと慎二に顔を近付けたら……


「はいストップでーす!時間切れなので離れましょうねぇ〜」


 既に近くに来ていた麗華達に止められて慎二と離れ離れになってしまった、夢の様な時間が過ぎるのはあっという間なのだ。


 実里は皆に抑えられながらも慎二に近づこうとしていた、そんな姿を慎二は見て苦笑いをしていた。

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