第73話 高校とバカとデートと③


「それで、これから何をするかだったわね……それはね?」

「………それは?」


 麗華が勿体ぶって話を止めてきたのでつい慎二は聞き返してしまった。


「それはね、私達と慎二君で擬似彼女・彼氏になってデートをするのよ!」

「デート?………デート!?」


 今までデートなんてやったことないし自分の事をただの後輩か友達と思っている先輩にデートと言われて慎二は素っ頓狂な悲鳴をあげてしまった。


「まあ、落ち着きなさい慎二君、デートはデートでも擬似よ、擬似」

「あ、ああ!擬似ですよね!あははっ、何か勘違いしそうになってましたよ!もしかしたら皆が僕の事を好きだなんて、すみません、妄想のしすぎですよね!」


 慎二はそう勘違いしてしまい恥ずかしいと思っているが、他の女性陣は心の中で「チッ、勘違いじゃない事ぐらい気付けや!」と舌打ちをしていた。


「……そうね、私達だって恋をしたいお年頃の女の子じゃない?周りには「気になる」男性なんてそんなに居ないし!……今後本当のデートとかをする時の為に予行練習をしようと思っていたのよ、そんな時に何でも聞いてくれそうな男子生徒がいたから今お願いしてるのよ、わかる?」

「え…えぇ……」


(いや、わかると言われても……まあ女性はよく恋愛の話をしてるって聞くし先輩達も興味があるだけなのかな?……「気になる」ってとこと「男性なんて居ない」と言う言葉にやけに力が入っている様な感じはしたけど……)


 慎二が生返事を返して少し考えていたら、慎二の反応が気に食わなかったのか麗華が聞いてきた。


「何よ?何か不満でもあるの?」

「いえ、別に不満はありませんが……別に僕では無くても良いのかなぁ?と思いまして」


 別に本当に僕じゃなくて良いと思うんだよね、面倒臭いから……


 そんな事を慎二が考えていたら麗華の代わりに愛菜が慎二に詰め寄ってきた。


「駄目に決まってるでしょ?忘れたなんて言わないわよね?今日は私達への埋め合わせで慎二君が楽しませなくてはいけないのよ?……それにこの頃他の女子とイチャイチャしてるようじゃない?そんな不純な事して良いと思ってるの?」

「いや覚えてるよ……それにイチャイチャなんてしてな「お黙り!」………はい」


 言い訳をしようとした慎二だったが愛菜に止められてしまった。


「いい?私達は今日ので……デートで今まであった事を帳消しにしてあげようと思っているの、だから貴方は喜ぶべきなのよ?」


 愛菜はデートという言葉に恥ずかしそうにしながらもそう伝えてきた。


 理不尽な内容だとは思うけど、何言っても変わらない気がするからここは僕が折れよう……


「そうだね……こんな僕で良ければ皆の擬似彼氏役を引き受けます」


 慎二が諦めてそう言ったら女性陣は喜びあっていた。


「それで、その全員一緒に擬似デート?をするんですか?」


 慎二がどんな感じにデートをするかわからなかった為そう皆に聞いただけだったが、慎二の言葉を聞いた皆は顔を赤らめてしまった。


 そんな中女性陣の中でも初心な実里と愛菜が慎二に言ってきた。


「ーーっ!……慎二君はハーレム?が好きなの?……出来たら私だけを選んで……」


 実里は恥ずかしそうにボソボソと言ってきて。


「なっ!?貴方は何を考えてるのよ!1人ずつに決まっているでしょ!このハレンチスケベ男!……ああ、これだから男は嫌なのよ!どうせ私達の体だけが目当てなんでしょ、この変態!」


 何を勘違いしたのか体を自分の両手で隠し顔を真っ赤にしたと思ったら、普段から吊り上がっている目を一段と吊り上げて慎二に言ってきた。


「いや、違う!誤解だよ!」


 誤解を解こうと思っても話を聞いてくれず………


「5回!?何を5回する気よ!?」

「違う!話を聞いてよ!?」


 慎二自身もパニック状態になっていた。


 麗華と鈴音と小町は流石に止めなくちゃと思い暴走している愛菜を止める事にした。


「愛菜ちゃん少し落ち着きなさい、恐らく愛菜ちゃんが考えている事は勘違いよ、少し冷静になって考えてみて」

「……勘違い……?」

「そうそう、愛菜は恐らく違う事を考えてそれが思い浮かんで変な行き違いをしていたんだよ!」

「私は……なっ!」


 麗華と小町に言われようやく自分が恥ずかしい勘違いをしていた事に気付き慎二の顔を見れなくなってしまった愛菜は下を向いてしまった。


「ほら愛菜ちゃん、誰だって間違いはあるわよ、こっちきて少し落ち着きなさい」

「………はい」


 鈴音はそう言うと愛菜を自分の側まで連れてきて落ち着くように抱きしめてあげた、慎二は何も出来ずオロオロしていたが。

 

 そんな中遠くから見ていたマスターの馬場は……


「若くていいねぇ……青春をしてるね!」


 と、楽しそうに見ていた。


 少し時間は経ち皆落ち着いたのでこれから行う擬似デートについて話し合う事になったがその前に慎二と愛菜はさっきの事で話し合った。


「慎二君ごめんなさい!私は暴走してしまったみたいなの……」

「別に気にして無いよ、僕が変な事を言ってしまったのが悪いんだし、もうこの件は終わりにしようか」

「………そうね」


 慎二と愛菜は話し合い元の関係に戻れた為早速と言わんばかりに麗華が皆に聞こえるように話した。


「無事解決出来たようね、じゃあ時間もそんな無いから擬似デート始めるわよ?慎二君は知らないと思うけど私達だけでもうデートを回る順番は決めてるから今から言う順番で回るからね!」


 麗華が言った順番はこうだった。


・1番目 実里

・2番目 愛菜

・3番目 小町

・4番目 鈴音

・5番目 麗華    


 となった。


「じゃあ1人1時間で擬似デートは終わりだからね?時間になったら次の人に変わるように!……慎二君はしっかりと私達をエスコートしてね?」

「エスコート?まあ、頑張りますが……」

「………歯切れが悪いわね、貴方のクラスメイトに聞いてるわよ?」


 クラスメイト?……まさかね?


「もしかしてそのクラスメイトの名字って「む」で始まって「み」で終わりませんか?」

「ん?そうよ、村上君に慎二君はデートのプロと教えてもらったのよ、だからエスコートなんてお手の物でしょ?」

「………‥」


 村上ー!?いつもいつも僕の邪魔をして!今日は本当に許さん!


 慎二の頭の中では「ざまぁ」とでも思っているように笑いながらこちらを見ている村上の姿が思い浮かんだ。


「………皆さん少し待っててもらっていいですか?ちょっとだけ電話かけてきます、直ぐ終わるので行ってきますね!………「スイッチオン」!」


 慎二はそう皆に伝えると「真実の目」を使う時の合言葉を言い「村上の秘密」と考えるとカフェから一旦出て近くの公衆電話の中に入った。


 自分の鼻を摘むとある男のスマホに電話をかけた。


 「プルルル」「プルルル」とその人物は2コール目で出てくれた。


『………はい、村上ですけど……どちら様ですか?』

「………‥」

『あのー?聞こえてますかー?』

「………こ」

『こ?こってなんですか?間違い電話なら切りますが……』

「………ろ」

『ころ?……どうせ間違い電話でしょ、用が無いなら切りますからね!』

「………す……貴様を○す!村上!?」

『えっ!?何、誰!おい誰なんだよ!』

「黙れ!「斎藤アイリ 1X歳 エロ写真集」の購入をしたロリコンが!」

『な!?なんでお前が俺の買った物を知ってる!?誰も知らない筈なのに!』

「知らん!カス!」


 そう言って電話を切った。


「絶対皆に広めてやる!」


 慎二はそう言うと桜田高校の裏掲示板に匿名で村上の変顔の写真とさっき言っていた写真集付きでコイツは「ロリコン」だからご注意をと言う投稿をした。


 慎二はやるべき事をやった為麗華達の元に戻る事にした。


「皆さんお待たせ致しました!」

「用事は済んだの?」

「はい!バッチリです!」


 と言う事で、慎二達は擬似デートを始める事にした。


 マスターには「飲み物ありがとうございましたまた来ます」といい外に出た。


 デートなんてした事ないけど……切り替えよう、今から僕は彼女待ちのイケメンだと………想像するのは守!

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