第69話 高校とバカと体育祭と終わり②




 それから30分後だろうか、空も暗くなって来た時慎二は桜田高校の何処かの暗い教室で椅子に手足を縛られながら座らされていた。


 まだ慎二は気絶しているのかピクリとも動かなかったが、その場にいた何者かにムチの様な物で思いっきり頰を叩かれた事により意識を取り戻した。


「う…うぅ……ここは?………僕は何をやっていたんだっけ?」


 慎二は自分が今まで何をやっていたのか思い出そうとしていたが、その場にいた人物に話しかけられた為一度考えるのをやめることにした。


「お目覚めかしら?前田慎二君?」


 その声が聞こえた方に体を向けようとしたら自分が縛られている事に今気づいた為唯一動かせる首を向けた、そこにいたのはボンテージ姿の東雲がいた。


「えっと?……東雲先輩ですよね?何でそんな格好をしているので?」


 うん、理解しようとしたけど無理だったわ……


 そんな事を言った慎二に……


「お黙り!貴方は今の状況が分かっていない様ね!」

「まあ、はい……わかりません」


 逆に分かる人いるの?目を覚ましたら椅子に縛られていて目の前にボンテージ姿の先輩がいると……分かるか!


「愚図な貴方に分かりやすく教えてあげるわ!貴方はこの頃「ヒポット部」なんていう訳のわからない部活を始めたようね?でもね、その部活の件で苦情が来てるから部長の貴方に取り調べをさせる為、ここに連れて来たのよ!」

「なっ!?苦情なんて聞いた覚えがありませんよ?何かの勘違いでは……」


 そうだよ、生徒会長達も言ってじゃないか、感謝はされてるみたいだけど苦情なんて…いや……でも知らない所でもしかしたら………


 もしかしたらと思い考えていたら東雲からある言葉が発せられた。


「私は聞いたわよ?ねぇ……村上君?」

「はい東雲様、私は知っていますよ!」

「………ん?」


 何か知ってる名前が出た様な気がした慎二は暗い教室の中東雲が座っている所をよく目を凝らし見たら……村上が東雲の椅子になっている事に今気付いた。


 村上君!?何やってるのさ!東雲先輩は椅子か何かに座ってると思ったら村上君に座ってるし……何プレイの最中なのさ……


「村上君だよね?悪ふざけはやめてこのロープ?解いてよ」

「………‥」


 慎二が村上にそう聞いても四つん這いのまま下を向いて何も反応を示さなかった。


「無駄よ前田君?村上君はもう私の僕だから私の許可が無い限り喋らないわよ?」

「そんな!」


 くそっ!こうなったら自力でロープを解くしかないか……この教室は暗いからあちら側にも気付かれないと思うから……


 慎二はバレない様に自力でロープを解き始めていたら先程まで東雲の許可が無かった為喋らなかった村上がいきなり喋り出した。


「どうだ前田?この状況羨ましいだろ?何せアヒィッ!」


 村上が何かを言おうとしたら、勝手に喋った罰なのか東雲が持っていたムチで村上のお尻目掛けて叩いた。


「誰が喋って良いと言ったの!この豚!」

「す、すみません、ヘヘッ」

「えぇーー………」


 全然羨ましく無いんだけど、村上君は村上君でムチで叩かれて喜んでるし……


「まあ、村上君の事なんてどうでも良いのよ、それよりさっき言っていた「ヒポット部」の苦情の件なんだけどね、ある人物から話を聞いてるのよ、その映像を今流すわ」


 東雲はそう言うと近くにあったプロジョェクターを操作してある動画を流した。


 そこには………



---------------------------------------------------------------

    

       過去の回想



 旧校舎の廊下だろうか、男子生徒と女子生徒の2人しかしかいない場所で何かを話し合っている場面が映された。


『ちょっと聞きたい事があるの、今いいかしら?』

『えっ?俺ですか?全然聞きます!何ですか何ですか!』


(画面に写っているのは恐らく女性が東雲先輩だよね?男子生徒は……これ村上君じゃ無いの?何かよく犯人が声変されてるみたいにダビ声になってるけど……村上君だって分かるよ、だって目元近くに黒い線はあるけど、完全にその線ズレて顔バレしてるもん……ちゃんと編集してあげてよ……)


 今は慎二は何も言わずに動画を見ることにした。


『ええ貴方よ、ちょっとね「ヒポット部」それも部長の前田君について聞きたいのよ』

『………前田、ですか?あいつが何かやったんですか?』

『それがね……少し悪い噂や他の生徒からの苦情が上がってるからクラスメイトの村上君に聞きたいと思って来たのよ』


(隠す隠さないとかじゃなくてもう村上って名前言ってるし………)


 だが、無言を貫く慎二。


『いや……あまり聞いた事が無いですが……』


 村上?は流石にクラスメイトを売りたく無いのか断ろうとしていたが、東雲の次の言葉で考えが変わってしまった様だ。


『もし良い情報を教えてくれたら何かお礼をするわよ?そう、村上君がして欲しい事を、ね?』

『はい、あります!あいつはかなりヤバイ事をやってますよ!』


(売るなよ!さっきまで何も聞いた事が無い様な雰囲気を出していただろうが!そのまま貫けよ!)


 そんなツッコミを入れたかったが、途中で動画を止められても嫌だったのでそのまま見ていた。


『どんなものがあるの?』

『はい、奴は「人助」なんて事をやっています、それは良いのですがその後が最悪だったんですよ……助けた女子生徒に手を出すのは当たり前で夜な夜な乱交をしているとかしていないとか……それにこの頃は桜田高校駅前近くの幼稚園に視察に行って幼女ウォッチングなるものをやってるとか………』

『そんな事を……これは本人に聞くしか無いわね……』


(やってないからね?多分目の前のそいつが全部やりたいと思ってる妄想なんで!)


『そうですね…奴に復讐……そんな奴は野放しに出来ませんよね!』


(絶対今復讐って言ったよ!自分の願望しかないじゃん!)


『そこで村上君、君に相談があるのよ、恐らく今前田君は家に帰ろうとしてると思うわ、もし1人でいたら私の所に連れて来て欲しいのよ、手段は問わないわ……やってくれたら村上君がして欲しい事を……ね?』


(やるなよ村上君……頼むからさ………)


『はい、お任せあれ!憎っくき怨敵前田をこの村上が連れて来ましょう!その暁には貴方様の奴隷に!」


(躊躇いも無かったよ……)


『ええ、貴方に任せるわ』



 東雲がそう言うと画面は切り替わり慎二が家の帰り道を歩いてる場面が映された、慎二は何か考えているのか何も気付かないで歩いているがその背後には木刀を持った村上が忍び寄る影が見えて……


『前田お前には前から羨ましいと思っていた、だから悪いとは思わないが、俺のこれからのパラダイスの為の糧になれ!』


 そう言うと慎二の頭に向けて戸惑いなく木刀を振り下ろした、その木刀が当たった事により慎二は前のめりに倒れて気絶してしまった。


(犯人!?僕を気絶させたの村上君だったの!薄々は気付いてたけど……)


 村上は気絶した慎二に近寄ると右手の脈を確認して……


『チッ、まだ生きてたか……』


 と、1人呟いた。


(何物騒な事を言ってるんだよ!?連れてこいと言われていただろ!)


 そう言うと慎二を背負って村上は高校までの道を歩いて行った。


『や、やったぞ!これで俺の夢が叶う……これで俺は………………



---------------------------------------------------------------



 という所で映像は終わってしまった。



「気になる終わり方すんなよ!色々言いたい事あるし、僕をここまで運んだ時に誰にも見られなかったのかとか気になるけど……最後まで言葉を言わせてやってよ!」


 映像が終わった後そんな慎二の心からのツッコミが教室内を木霊した。


「村上君の言葉なんてどうでも良いわよ、それで、今見て貰った通り前田君、貴方は今まで酷い事をやって来たようね?これが学校中に広まったらどうなると思う?」

「くっ……でも僕は本当にそんな事をやっていない、皆は信じてくれる筈ですよ……それよりこんな事をして東雲先輩は何をしたいんですか?」


 慎二は最初から疑問に思っていた事を聞いてみる事にした。


 正直こんなの皆も冗談だと言ってくれると思う、僕が気になるのは東雲先輩が何でこんな事をしたのかだよ……何か違う思惑があると思うのだけど……


「やっぱり気になるわよね?……こんな事を村上君にやって貰ったのも全部前田君に会う為の建前ですもの……本当の理由は他にあるけど、前田君、私を見て何か気付く事はないかしら?」

「気付くこと、ですか?」

「そう、気付くこと」


 違う思惑があったのは当たってたけど、、東雲先輩で気付く事?……何か引っかかってるんだよね、最初体育祭の表彰の時に会った時も違和感があったし………


 待てよ?あの時賀茂さんを助けた時、こんな女性に会わなかったか?足を痛めて……あっー!足を蹴ってきた女性だよ!


「分かりました、僕は貴方と一度会った事があります」

「それで?」

「足を蹴られました………」


 その言葉を慎二が発したら、東雲の顔が被虐的な表情に変わってしまった。


「そう、そうよ!私はあの時貴方を蹴っ飛ばしたわ!あの時の脳に直接雷を落とされた様な快感は今でも忘れないわ!」


 東雲はそう言うと自分の体を両の手で抱きしめて興奮した様に慎二に伝えてきた。


 その姿は妙に妖艶な雰囲気を醸し出していたがそんな事はどうでも良いと言う様に慎二が疑問に思った事を伝えた。


「でも、何であの時僕の事を知ってたんですか?」

「そんなもの調べたからよ、私は春休み中に桜田高校付近を風紀委員としてパトロールしていたのよ、その時にこの頃になって「人助」をやっている人物がいると噂になっていたから私はその事が気になって調べたら……前田君、貴方が出て来たのよ」

「成る程……それは分かりました、では僕をここに呼んだ理由は何なのですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る