第63話 高校とバカと体育祭と③
叫んだ慎二だが誰も助けに来てくれず、無情にも司会の愛田の放送が流れ次の種目に移る事になった。
『はい、少しアクシデントはありましたが、通常通り進みますね!次は混合で仮装リレーになります!色々な格好をして走って頂きます!、走る方は仮装するスペースまで先に言ってください!』
アクシデント今もまだ起きてるから助けてよ!それに仮装リレーとか僕が出る奴じゃん!
「ほら慎二、遊んでないで次の種目お前出るんだろ?早く行ってこい」
「………‥」
「慎二君がどんな格好で走るか楽しみだよ!」
「………行ってきます」
何も助けてくれなかったのによくそんな事言えるね!2人共やけに嬉しそうにしていたし……何かあるのか?
慎二は考えながらも仮装する場所まで向かう事にした。
男女で場所は分かれているらしく男子の仮装する部屋を開けたら沢山の生徒がいて皆色々な仮装をしていた、ただ、その中でも一際目立つのが「前田慎二様」と書かれた椅子が部屋の奥にぽつんとある事だ。
「………‥」
ほら、やっぱり変な事が起きると的中したよ!
入り口前で立ち止まってても終わらないので仕方なく「前田慎二様」と書かれた椅子に座る事にした。
慎二以外仮装姿に着替えたのか誰もいなくなってしまってから少し時間が経った時、見知らぬ女生徒が慎二に近づき話しかけてきた。
「こんにちは、あなたが前田さんでよろしいですか?」
「あ、はい、僕が前田です」
この人は誰なのかな?可愛い子だけど、会ったことは無いかな?
「そうでしたか、私は今回前田さんの仮装試着を担当させて頂く、1年「B」クラスの戸田綾香と言います」
「こちらこそよろしくお願いします、それで、戸田さん?試着とはどんな格好になるので?」
「ある人達からご要望がありまして、こちらに着替えて頂きます」
そう言った戸田が持って来ていた紙袋から出した服は……メイド服だった。
「………おかしいな、見間違いかな?その服、メイド服の様な気がするんですけど……僕男ですよ?」
「間違いありませんよ?」
間違いであってよ!……でも何か引っかかるな、ある人達から要望があったって言ってたし……まさか!
「その、要望して来た人物の名前って教えてもらえる事は出来るかな?」
「それは出来ません、相手側にも秘密にして欲しいと言われているので」
(やっぱり無理か、その人物に心当たりがあるんだけどなぁ〜)
内心で悔しがっていると、戸田が「ただ」と言い、話を続けた。
「ただ、その方々のお名前は言えませんが言っていた内容ならお答え出来ますがどうしますか?」
えっ?それ言っちゃっていいの?教えてもらえるならありがたいけど……
「戸田さんに迷惑がかからないなら教えてくれるとありがたいな」
「わかりました、問題は無いのでお答えしますね、では………『俺達にも「女装」をさせたんだ、なら次はお前だろ慎二?』と『恥ずかしい思いは分かち合わないとね慎二君?』……と、言っていました」
「ありがとう……」
絶対その2人雄二と由紀じゃん!?前の「女装」の件かなり恨み持ってるよ!意外と戸田さんの声真似も似ていたし。
「前田さん、何も無ければ着替えさせて頂いてもよろしいですか?お時間も迫っていますので」
「うん、時間取らせてごめんね?……それじゃあお願いするよ」
慎二はそう言うと流石に自分の制服を女子に脱がせるのは気が引けた為、自分で脱ぎトランクス姿になった。
脱いでから気付いたけど目の前に女子がいるのに下着姿になってるとか絵面ヤバそうだな……
早く何でもいいから着替えさせてくれないかなと思っていたが、一向に戸田が動かない為どうしたのか聞いてみようと顔を見てみたら……顔を真っ赤にして慎二の体をガン見していた。
「えっと……戸田さん?どうしたの?」
「あっ、ごめんなさい!前田さんのお体が凄くてつい見入ってしまいました!」
慎二がそう言うとやっと我に返ったのか今までクールと思っていた雰囲気は全く無く物凄く狼狽えていた。
そんなに僕の体凄いかな?一応鍛えてはいるからそれなりには筋肉もあるけど……
「その、前田さん、お着替えする前に腹筋を触ってみても良いですか?」
「いや、今はやめて欲しいかな?また今度機会があれば触って良いからさ」
流石に今この姿で腹筋触らせて誰か入って来て見られたら何かの事案かと思われるよ……
「そう…ですか……今度機会を作って下さいね?」
どんだけ触りたかったのさ!最初のイメージが台無しだよ!
その後は本当に時間が無い為急いでメイド服に着替えさせてもらった。
今回は雄二達とは違い男性物の下着を履いてるが、下がスカートなのでスースーするのは変わらずなので慎二は顔を顰めていた。
そんな慎二に、スススッと戸田が近付くと慎二の今の外見を褒めてきた。
「自分でメイクをしといてですが、とてもお綺麗ですよ、前田さん!」
「よ、喜んでもらえて良かったよ」
全く嬉しく無いけどせっかくやってくれたから素っ気ない態度はいけないよね。
ようやく慎二も着替え終わったので戸田と一緒に仮装リレーをする人達が待ってる所に急いで行く事にした。
『ようやく最後の仮装リレーの選手が来た様です……なんと!これはかなりの美少女だ!誰が仮装しているんだ!』
「僕だよ!」なんて言えないよね、多分雄二達はわかってると思うけどこのまま他の人には知られない様に頑張らないと。
司会の愛田の放送が流れたあと「あのメイド服姿の女子は誰だ!」と少し騒ぎになったが、時間もあまり無いので早速始めることにした。
『では、今から1年生〜3年生男女混合の仮装リレーを始めます!様々な洋服を着てると思うので走り難いと思いますが、それもまた醍醐味なので頑張って下さい!』
愛田の放送が流れた後慎二達は一斉に走り出した。
『さあ、始まりました!誰が1位になるのか全く分からない状況です!今1番早い生徒はなんと……謎の美少女メイドだ!物凄い速さです!スカートをたくし上げて走り抜けているー!その姿に男子生徒達は何故か前屈みだー!』
こんな物早く終わらせるに限るよ!ただ、何で他の男子生徒は僕の姿を見て前屈みになってるのさ!気持ち悪いから止めろよ!
気持ち悪くなりながらも両足に力を入れて前へ前へ進んでいき、無事ゴールした。
『ゴールーー!速い、速過ぎる!あの生徒は本当に誰なのでしょうか!、次々と他の仮装をした選手もゴールして行っていますが、謎の美少女メイドがとても速かったですね!』
走り抜けた慎二は話しかけて来ようとする生徒の間を掻い潜り戸田さんが待ってると言っていたさっきの仮装スペースまで戻る事に成功した。
そこにはしっかりと戸田が待っててくれた。
「前田さんおつかれでした、とてもお速かったですね!」
「ああ、うん、ありがとう戸田さん、それよりも早くメイク落としてもらって良いかな?どう落とせば良いか分からないからさ」
「わかりました、では動かないでそこの椅子に座っていて下さいね」
その後は直ぐにメイクを落としてくれた、元の制服姿に戻る時は「腹筋を触らせて下さい」と戸田が迫ってきて少し一悶着もあったがそれ以外は特に何も無く制服に着替え終わった。
「今度しっかりと腹筋触らせて下さいね?嘘ついたら謎の美少女メイドが前田さんの事バラしますから」
戸田さんも中々恐ろしい脅しをしてくるね……
「わかったよ、今度必ず腹筋触らせるからバラすのだけは勘弁してくれ!、ほら連絡先も教えるからさ!」
「………なら良いです、約束さえ守ってくれれば」
今度2人で会える様に連絡先を交換してから早く戻らないとクラスメイト達に何を言われるか分からないと戸田に言い、2人は別れた。
「戸田さんに連絡先を渡したのは良いけどやけに嬉しそうだったな、そんなに腹筋触れるのが嬉しい物なのかな?」
考えてもわからない事は後回しでいいやと思いクラスメイト達が待つ場所に戻る事にした。
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