1年生 体育祭
第61話 高校とバカと体育祭と①
◆
全速力で走ったお陰か時間までに学校に着く事が出来てホッとしていた慎二に楽しそうな声がかけられた。
「よ〜う前田〜待ってたんだゼェ!お前が来るのをずっとなぁー!なぁお前ら!?」
そんな世紀末かの様な喋り方をする村上が後ろを振り向くと他のクラスメイトに声をかけた。
『やっと殺れるゼェ!』
『このカスがよ〜!』
『女と同棲とかふざけるのも大概にしろよ〜?』
『ヒャッハー!』
と、今日がイベントがある日だからかやけにはっちゃけているクラスメイトが慎二を囲んできた。
「だから!あれは冗談って言ったでしょ!逆に僕が女性と一緒に暮らすとか君達は想像出来るの?」
その言葉を聞いた皆は「前田じゃ無理か」と直ぐにいつもの雰囲気に戻り自分の席に戻って行った。
ウゼェー、けど被害は防げたみたいだね……自分で招いた事だけど……
そんな騒ぎがあり少ししてから剛田先生が教室に入って来た。
「今日もちゃんと皆席についてる様だな、いつもこうしてくれよ?では今日行う事を説明する、今日はもう知ってると思うが体育祭がある。白組・赤組と分かれて点数を競い勝負をする事になっているがお前達「F」クラスで1年生と言う事もあるからあまり競技に出る機会は無いと思うが……しっかりと待ってる間は応援する様に!今日は少しは騒いで良いがしっかりと節度をもってやれよ?」
剛田先生はそう言うと「あと30分後には新校舎の校庭に集まること」と言い、教室から出てってしまった。
組の決め方は白組1年生「A・C・E」2年生「B・D・F」3年生「A・C・E」となり、赤組が1年生「B・D・F」2年生「A・C・E」3年生「B・D・F」と分かれて行う事になっている。
元々桜田高校の体育祭は2年生と3年生がメインで活躍する場な為1年生は活躍する場が少ない。その他にもクラスによって少し贔屓されている感じはあるが別にもう「F」クラスがバカにされているとかはまったくないので慎二達は悠々自適に過ごしている。
体育祭が始まるかなり前に誰がどの種目に出るかを決めた、ただ、各種目は誰もどれがやりたいなど無かった為くじ引きで決める事にした。
「皆は何の種目出るの?」
慎二が気になってクラスの皆に聞いてみたら、大体が一つか二つ種目を出るだけで後はフリーとなっていた。
「慎二君は何を出るんだい?」
服部に聞かれた慎二はあまりやる気がない様に答えた。
「仮装リレーと借り物競走だってさ、なんか気付いたら勝手に決まってたよ」
嫌そうに自分の種目を話している慎二に雄二と由紀が話しかけてきた。
「なんかこの高校の体育祭の種目がユニークじゃねぇか?他にリレーとか綱引きとかメジャーなものはあるが……特に慎二が出る種目は中々特殊だな」
「でも仮装リレー?とか楽しそうじゃない?慎二君がなんの仮装をするか楽しみだよ!」
「僕は全然楽しみじゃないけどね、何をやるか分からないのがまた不安で嫌なんだけど……」
そんな事をいつもの4人で話していると、女性陣が慎二達の所に近づいてきた。
「F」クラスの女子と言ったら吉野と悠木しかいないがこの2人にも少しは変化があった。
前回、慎二の中学からの友人と会った事で慎二への恋心を知ったのだ。
「慎二達早く校庭に集まらないとまた何か先生に言われるわよ?ほら早く行くわよ!」
そう言い美波が慎二の腕を引っ張り立たせた、今まででは名前呼びでは無かったのにいつの間にか名前で呼ばれる様になっていた為、慎二はまた「何かをやってしまったのではないか?」と警戒していた。
「ほら〜慎二君?1人じゃ何も出来ないんだから私が校庭までしっかりと連れて行きますからね〜」
優奈に至っては前みたいな怖さは無いが慎二を赤ちゃんだと思っているのか過保護になっていた。
「自分で出来るから!恥ずかしいから2人共やめてよ!」
慎二は本当に恥ずかしいのか顔を真っ赤にして言っているが、2人は聞く気が無いのか慎二の腕を引っ張って進んで行ってしまう。
そんな光景がこの頃日常になって来てるからか、見ている雄二達はその光景をニヤニヤしながら見ていた。
逆に嫉妬組の村上達はその光景を間近で見せられて何も起きるはずがなく、
『野郎…舐めやがって……』
『ボス、いつ奴に焼を入れますか?』
『まぁ、待て、急がずとも我々が奴、前田に鉄槌を喰らわす機会は訪れる、だから暫し待て』
『『分かりました、ボス!!』』
そんな事を村上が主軸になり話していた。
いつ慎二を血祭りに上げるか計画を立てているのだ。
◆
それはさておき、新校舎の校庭に向かったらもう既に沢山の生徒や先生が集まっていた、慎二達は顔見知りに挨拶を返し自分達の集合場所に到着したので、用意していた椅子に座る事にした。
それから少し経った時また生徒会が司会を行うのか校庭の真ん中に集まっていた。
慎二の姿を見つけた生徒会のメンバーは何故か黒い笑みを顔に浮かべながら手を振ってきたが、慎二も思い当たる節が少しある為出来るだけ目を合わせないようにしていた。
生徒会のメンバーはその慎二の対応に少しイラッとした顔をしたが体育祭の挨拶を始める事にした。
「今回も司会進行を進める生徒会長の綾杉です、今日は晴れて絶好の体育祭日和になり良かったですね!長々と話しても聞いている皆がバテてしまう可能性があるので今から直ぐに第15回目体育祭を始めたいと思います!」
綾杉生徒会長の言葉で慎二達の初めての体育祭が始まった。
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