第57話 閑話 高校とバカと部活動結成②




 そんな3人の言葉に「もう何も言っても意味なさそうだ」と思い、剛田先生に「部活申請書」を出しに行く事にした。


 剛田先生がいる職員室に着いたので挨拶をして「部活申請書」の承諾を貰うと思っていたが、すんなりサインを貰えてしまった。


「あの、剛田先生、そんなに簡単にサインを頂いてしまって良いのですか?」


 こう言うのってかなり時間かかるものだったよね?それも僕は問題児って事になってるし……


「普通はどんな活動をするかしっかりと確認したりするが前田達が作る「部活」だったら大丈夫だ、聞いたぞ?由比ヶ浜先生を救ったのは前田達なんだろ?」

「そう…ですけど……」

「なら問題ないだろ、お前達には実績がある、これからも「人助」を頑張れよ?」


 剛田先生がこんなに話をわかってくれる先生だとは。


「はい、頑張ります!」


 ………あっ、活動場所何処か聞いて無いや、教室に戻ろうとしちゃったよ。


「剛田先生、後一つ聞きたいことがあるのですが、僕達の活動場所の教室は何処になるのでしょうか?」

「ああ、前田達の活動場所は旧校舎にある空き教室だったら何処でも使って良いぞ、決まったら後で教えに来てくれれば良いし、必要な物があれば言ってくれ、後生徒会室に用事もあるからそのまま生徒会長のサインも任せてくれ」

「ありがとうございます!必要な物があったらその時伝えに来ますね」


 剛田先生に「部活申請書」のサインをしてもらったのでこれで慎二達の「ヒポット部」は結成された、活動場所も選ばなくてはいけないので早くこの事を雄二達に伝えたいから「F」クラスに戻る事にした。


「直ぐに終わって良かったな、それに生徒会長のサインは本当に助かったな!ちょっと今は近寄り難いから……でも活動場所の教室を何処でも使って良いのは太っ腹だよね、まあ、旧校舎はあまり人いないもんね」


 そんな事を喋りながら「F」クラスに待っている筈の雄二達の元に向かっていたら教室の中が少し騒がしい様な気がしたので少し様子を見てみる為に教室のドアを少し開いて中の状況を見てみる事にした。


「何よ、あんた達?あのバカの知り合いなの?」

「前田君は友達が沢山いますね、それも女性と沢山知り合いみたいですね、ふふふ」

「私達は、慎二に会いに来ただけ、貴方達こそ慎二の……何?」


 中を見たら吉野と悠木と慎二の中学の友達の神田雪達がいた、いたのは良いのだが何か言い争いらしき事をしていた。

 

 その事が分かった為、誰にもバレない様「F」クラスから離れる事にした。


「………まあ、吉野さんと悠木さんがいるのは自分達の教室だから良いとして、なんで守や雪達がいるの?女性陣は雰囲気悪かったし……教室入りたく無いな」


 どうしようか教室から少し離れた場所で考えていたら何故か村上が近くを通りかかり慎二を見つけて話しかけて来た。


 何故か……大きな声で。


「よお、前田!こんな所に隠れてどうしたんだ?……何かから隠れてる様な気がするが」


 村上ィ貴様ーー!?なんで今話かけてくるのさ!それも声が大きいわ!


(ちょっと村上君、静かにしてくれ!今はここから離れなくちゃいけないんだよ、今度小学生紹介するから!)


 小声で適当な事を言った。


 今は静かにしてもらうしか無い、最悪結衣ちゃんに小学生は紹介してもらおう、そうしよう。


 ただ、村上にはそんな言葉逆効果だった。


「何だと!?前田なんでお前に小学生の知り合いがいる!?それに紹介するだと!?ありがとうございます!」


 と大きな声で慎二に詰め寄って来たと思ったら土下座して来た。


 絶対村上君分かってやってるでしょ!?僕を吉野さん達にバラす為に!


 そんな事を考えていた慎二だったが、直ぐそばまで複数の人数の足音が近づいて来ているのに気づいていたからもう諦める事にした。


 慎二も思ったのだ、「自分は何もしてないのになんで逃げなくちゃいけないのか?」と……だから自然を装い後ろを振り向いて見たけど……


 全員の目が死んでるんだけど!?それってどうやるの!


 無理だった。


「前田、聞こえたわよ?アンタ私達から逃げようとしてたらしいわね?」

「それに小学生の知り合いがいるんだってね?詳しく教えてもらって良いかな?」

「………氏ね」


 うん、僕が悪かったよ、あそこで逃げないで普通に教室に入れば多分少しの痛みですんだと思うな……


「皆聞いてくれ…今僕が言ったのは嘘だ!……だから痛いの辞めて?」


 そんな事を言っても意味が無いのに……吉野と悠木と雪の3人に説教をされるとそのあと折檻もされた。


「アッーーーー!?」


 雪のやつ!僕の股間を思いっきり蹴ってきやがった……それも蹴ってる時とても楽しそうにしてたし……


 助かった?のは愛香と穂花が冷たい目を向けてくるだけで何もやってこない事だった。


 その後は本当に村上に言ったのは嘘と言うことと吉野達と雪達の事をしっかりと説明してようやく解放された。


 女子5人で教室の隅で何を話すのかな?


 解放されたのは良いが何か5人で話があるのか隅で小さな声で話し出してしまったので、近づかない事にしといた。


「前田、いつ俺に小学生を紹介してくれるんだ?」

「嘘に決まってるでしょ!帰れ!」


 よくこの状況で言えたね!


 村上は慎二にそう言われたら「なんだ嘘か」と言い、とぼとぼ帰っていった。


「よお慎二!災難だったな」


 慎二が女子の行動を不思議に思いながら、村上に嘘だと伝えたら雪達と一緒に来ていた守が話しかけてきた。


「………災難だと思うなら助けてよ……そっちはどう?自己紹介出来た?」

「それは悪かった、だが自己紹介は慎二が女子に絡まれてる間に済ませちまったよ、雄二達いい奴だな!」


 慎二が女子に絡まれてる間、守は自分から雄二達に話しかけて交友関係を結んだみたいだ。


「守こそいい奴だろ?」

「うんうん!守君は慎二君の友達って凄いわかるよ!」

「イケメンで話しやすい……「リア充が!」と言いたいところだけど、いい子だね」


 良かった、皆友達になれたみたいだね、若干1名は嫉妬してるけど……


「そうだ、守はもう「部活」に入っちゃったりしてる?」


 慎二は出来るなら守も一緒に「人助」の活動をしたいと思って聞いてみた。


「その事だがすまない、もうバスケ部に入っちゃってさ、この学校は部活の掛け持ちが出来ないらしくてな、さっき雄二達にも入らないかと言われたがすまん!」


 まあ、中学の時もバスケ部だったもんね。


「いや、別に良いんだ、もし何も入ってないならと思って聞いてみただけだからそんなに気にしないでよ」

「そう言ってもらえると助かるよ、でも手伝いぐらいは出来るからな?それに見てたぞ?慎二達結構バスケも出来るんだろ?その時は手伝ってくれよ!」

「まあ、その時は僕達も手伝うよ、良いよね皆?」


 慎二のその言葉に3人とも軽く返事を返してくれた。


「ありがとな!でも凄いよな慎二達が由比ヶ浜先生を助けたんだろ?あっちの新校舎でも噂になってるぞ?」

「マジか、誰だよ話した奴は」

「情報と言ったらまさか……」


 そう思い慎二と由紀は服部を見たが……


「………僕じゃないからね?流石に友人の情報は売らないよ、「情報屋」としてもそれは徹底してるからね」

「冗談…冗談……ハトケン君と言ったら情報だと思ってね」

「僕も冗談だよ、本当にハトケンだとは思ってないさ、でもこの頃僕の情報が何処かから流れてるみたいなんだよねぇ〜」


 この前の幼稚園の件もそうだしね、まず幼稚園なんて行ってないし……


「そうなのかい?今度調べとくよ」

「ありがとうハトケン!」


 服部と由紀と噂について話し合っていたら雄二が「部活」の件はどうなったのか聞いてきた。


「そういや「部活」の件はどうなったんだ慎二?帰ってくるの早かったが何かあったのか?」

「ああ、その件なんだけどね、剛田先生にも由比ヶ浜先生を助けた事が伝わってたらしくてさ「人助の部活」なら構わないと軽くサインしてくれたよ」

「何?あのゴリが人の心を持ってたとはな」


 どんだけ、雄二は剛田先生が嫌いなのさ、、


「それでね、活動場所だけど旧校舎内の空き教室だったら何処でも使って良いって言われたから今から探しに行こうと思ってたけど、どうかな?」

「そこも随分太っ腹だな?あれか、旧校舎なんて人がいないからか」

「多分そうだと思うよ、でも何処でも使って良いのは魅力的だよね!」


 話し合った結果空き教室を見に行くのはここにいた5人で探しに行く事にした。


「慎二、神田とかそっちの女子は教室に置いてきても良かったのか?」

「大丈夫でしょ?何か凄い仲良くなってたし、僕達が話しかけて変な雰囲気にするのもどうかと思ってね」 


 まあ、本当は今は話しかけたくないだけだけどね!


「慎二がそれで良いなら良いがな」


 守は納得してくれたみたいなので、5人で手分けして何処の空き教室が良いか決める事にした。


 10分ほど探索したら「F」クラスからそれほど遠く無く、丁度良い広さの空き教室が見つかった為、そこを活動場所に決める事にした。


 その後は剛田先生に連絡をしに行くついでに必要な物を5人で取りに行って内装を少し変えたら「ヒポット部」の活動場所が出来上がったので借りてきた椅子やソファーに座り慎二達は駄弁っていた。


「早く活動場所出来て良かったな!」

「暇になったけど別に今日から活動するとかでは無いから今日はもう帰る?」


 明日から活動は本格的に始めようかと思ってたからね。


「帰るんだったらコンビニ寄りたいな、新作のアイスが出てるらしいから」

「由紀君、そのアイスの味はピスタチオかな?」

「そう!気になっちゃってさ、どんな味なのか」


 ピスタチオ?僕も食べた事ないな。


 そんな話をしていたら、守から意外な話題が振られた。


「お前ら直ぐに解散はつまんないだろ、高校生男子が集まってやる事と言ったら決まってるだろ?」

「守君、何かやるのかい?」

「別に動く事はやらないぜ?するのは……恋バナだろ!女子だけだと思ってるかもだけど男子も結構やってる奴いるんだぜ?」


 はぁー恋バナね……僕は何も無いんだけど、由比ヶ浜先生はあれは違うと思うし……


 守が恋バナと言った途端、皆はあまりやる気が無くなってしまったようだ。


「何だ、何だ?お前ら好きな奴はいないのか?慎二とかいるんじゃ無いか?」

「別にいないかな?特に告白とかはされた事ないし、逆に守は愛香や穂花とはどうなの?」

「ん?何の話だ?アイツらが好きなのは……」


 そう守が何かを言おうとしたが、何かに気付いたのか慎二以外が席を離れて小声で話し合った。


(守、慎二はああ言ってるがどうなんだ?、愛香と穂花って佐藤と今井の事だろ?)

(ああそうだ、ただなあの2人が好きなのは俺じゃ無くて慎二の事だ)

(かっー、慎二はそこまで鈍感だったか、こっちは吉野と悠木が案の定慎二の事が好きだろうな、まだ本人達は気付いて無いみたいだがな)

(由比ヶ浜先生も慎二君の事は好きだと思うよ?守君は知らないかもだけどね、由比ヶ浜先生を助けた時に慎二君に愛の告白をしたんだよ!)


 他のクラスの生徒は知らないかもしれないが、「F」クラスでは誰もが知ってる事実だ。


(何だと!?その情報は無かったな)

(慎二君も罪な男だよね、他にも好きな子が今後も増えそうだよね)


 その話を服部がすると全員で同意と言うように頷いていた。


 1人になってしまった慎二は自分だけ仲間外れだからか拗ねていた。


「何で雄二達もそんな隅でコソコソしているのさ……良いもん僕も色々やる事はあるからさ!」


 1人で呟くとスマホを取り出して今ハマってるアイドル育成のゲームをやり出した。


(なんか、慎二が拗ねてゲームやり出したけど、放置していても良いのか?)

(大丈夫だろ?それよりも今後の慎二の恋愛がどうなるかだな、俺達が誰々が慎二の事を好きらしいって教えるのは簡単だが、多分アイツは信じないぞ?それに何か教えるのもおかしいからな、自分達でなんとかして欲しいわ)


 雄二の言葉に服部も同意した。


(それはわかるね、僕達が適当に介入してすれ違いなんて起きたら面倒臭いからね、本人同士で解決して欲しいよ)

(ただ、流血沙汰にだけはなって欲しくないよね…なんてね…あはは…はは………)

(………‥)

(………‥)

(………‥)


 由紀の言葉に何も皆返せなかった、だって本当に起きそうだから。


(ま、まあそんな事が起きないように皆で出来るだけ監視しようよ!)


 しばらく無言の時間が続いたが、変な事を言ってしまった由紀がパンパンと手を叩いて場を切り替えた。


(そうだな、何だかんだ言って慎二達の状況を楽しんで見てるからな)

(慎二自身が相談してきたなら助けになれば良いだろ?)


 雄二と守の言葉に2人も同意した。


((それもそうか))


 ただ皆思う事があった、どうか巻き込む事だけはしないでくれと。


 話も纏まったので完全にゲームに夢中になっていた慎二を連れて「F」クラスに戻る事にしたが、吉野達はもう帰った後だったようで教室には誰もいなかった。


 慎二達も今日はもう寄り道をせずに帰る事にした、気付いたら午後7時を過ぎていた為明日も学校なのでそれぞれ帰路についた。





「今日も色々あったなぁ……「部活」を作るってだけなのに意外と疲れたよ、それより皆僕を除け者にして何話してたんだろう?まあ、重要な内容だったらその内話してくれるよね」


 そんな事を1人喋りながら皆が待つ我が家に帰っていた。


「夜なのにもう大分暑くなってきたね〜……これからまた沢山の「人助」してかなくちゃね!」


 今は6月間近、もう時期本格的に夏が始まる、夏と言ったら沢山催し物があるが出会いも別れもある、その中で大切な夏の思い出が出来る事になるが今の慎二達はそんな事は何も知らない。

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